最後の乗客

劇場公開日:

最後の乗客

解説・あらすじ

深夜のタクシーで偶然重なりあう乗客たちの人生と、目的地で彼らを待ち受ける予想外の出来事を描いたヒューマンミステリー。

とある港町。タクシードライバーたちの間では、深夜に人気のない歩道に現れるという女の噂がささやかれていた。ある夜、いつも通りタクシーのハンドルを握って閑散とした住宅街を流していた遠藤は、噂となっている歩道で1人の女性を乗せる。車を発進させた直後、路上に小さな女の子と母親の2人が飛び出してきて、その母娘も仕方なく同乗させることに。行き先はなぜか両者とも同じ「浜町」だった。奇妙な客と秘密を乗せたタクシーは、目的地へ向かって走りだすが……。

出演は「有り、触れた、未来」の岩田華怜、「侍タイムスリッパー」の冨家ノリマサ。ニューヨーク在住の堀江貴監督が、震災から10年が経つ故郷・仙台への思いを1本の映画に収めるべくクラウドファンディングを実施して製作した。

2023年製作/55分/G/日本
配給:ギャガ
劇場公開日:2024年10月11日

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(C)Marmalade Pictures, Inc.

映画レビュー

4.0つらければ忘れてもいい、という選択肢がある優しい世界

2024年10月8日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

蒼暗い空、せり上がり砕ける波、寄せる白波と砂浜に「あれから10年後」の文字、クロスフェードで重なる港湾の遠景、震災と津波のあとで放棄された海辺の廃墟。オープニングの1分あまりの映像と波の音にぐっと引き込まれる。撮影監督は佐々木靖之(「真利子哲也監督「ディストラクション・ベイビーズ」、瀬々敬久監督「最低。」、濱口竜介監督「寝ても覚めても」、菊地健雄監督「ディアーディアー」など)。

監督・脚本・編集の堀江貴は宮城県仙台市出身だが、2011年3月はニューヨークにいて東日本大震災を経験していない。そんな自分が被災者にかかわる映画を作ってよいのかと悩んでいた時期、福島県出身でつらい思いをした若い女性と追悼式で出会い、彼女が3月11日を迎えるたび震災の話を聞かずにすむよう敢えて海外に出ていたと話すのを聞いたことが、本作のきっかけになったという。

作品のタイプとしては、ミステリアスな要素をはらむヒューマンドラマと言えるだろうか。主人公と他者にまつわる“自意識”と“視点”がミステリーの仕掛けとして機能していて、この仕掛けを用いた映画としてはホラージャンルで外国の有名作品2本がすぐに思い浮かぶが、タイトルを挙げるだけでネタバレになるので伏せておく。本編55分という短さも、適度な驚きと静かな感動に貢献していると感じた。

堀江監督は自省を込めて、「震災を忘れない!」と声高に叫ぶことが逆に人を傷つけていた可能性もあると気づいたと述べており、そんな気づきがこの「最後の乗客」には込められている。被災者に限った話ではなく、つらい経験をしてそれを思い出すたびに苦しむのであれば、忘れるという選択肢もあるということ。「忘れない!」という言葉が呪縛になってしまうより、忘れる自由もあるほうが優しい世界に違いない。

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高森 郁哉

3.0消えないものだって確かにあると思った

2025年3月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

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ねこたま

4.0あの日のこと

2025年3月20日
スマートフォンから投稿

題名の意味を考えながら観ていた。
そこにある意味を見ながら考えた。

途中、薄っすらと分かり始め
「もしかしたら」と続き
次に襲いかかって来た。

優しい父がいて
優しい家族がいた
間違いなく居た。

素直になればと…
強い思いは残った。

これは小さな話し。
沢山の中のひとつ。

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星組

5.014年目の3月11日に観賞

2025年3月12日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

2万2228人。

死んでも死に切れなかった2万2228人の人たちと
生きても生きても、いまだに生ききれない 生き残った人たちが
かの地にはこんなにたくさんいたのだと、この映画は見せてくれました。
6人の登場人物がそれを教えてくれました。

・・・・・・・・・・・・・

僕もあの地震の時には、
苦労して3日目に仙台に入った。
叔父叔母と従兄弟の一家がそこにはいる。

寒風吹きすさぶ歩道で、ジャンパーを着た従兄弟を見つけてひたすら固く僕たちは抱擁した。

「僕の軽自動車に誰を乗せて、そして誰を乗せないか」
「子供たちとその母親を乗せるのか」
「子供たちとその母親は乗せないで老人たちを乗せるのか」
僕は決断をしなくてはならなかったのです。

救急車にも消防車にも燃料が枯渇し、医者の車も動けない。
ガソリンがすべて売り切れで、どこも閉店している中、こっそりと隠して出発地で調達したガソリン。荷台の毛布の下には赤い灯油缶2つに40リットルのガソリンを「帰途用」に隠し持っている事を黙って
ガソリンを分けてもらえませんか!という必死の形相の人たちを僕は振り切って
仙台を脱出した。

福一の煙が仙台まで来ていたから、とにかく西を目指した。

まさかの自分が「トリアージ」をする事になるとは。
僕は生まれて初めて布団の中でのたうち回って 呻き声で苦しみ、しばらくの間 PTSDに苦しんだ。
年寄りたちを乗せて新潟へ逃げた。

・・・・・・・・・・・・・

瓦礫の下や海岸から回収された膨大な数の「写真」を、綺麗に洗浄して展示して持ち主や遺族に返すボランティア活動の記録。
これ、大著の記録集を熟読したことがあります。
本作の巻末エンドロールでは、それらの写真を映していましたね。確かにかの地で生きていた人々の証拠が、胸を打ちます。

誰かを助けるためにUターンして亡くなった方。
「てんでんこ」で振り切って逃げたのにダメだった方。
手を離してしまって水に飲まれる妻の目を見てしまった方。

僕ごときのちっぽけなトラウマなど 、どうだっていい事だ。

・・・・・・・・・・・・・

会いたかった人の幽霊に会うって、とても大切な事なのだそうです。

赤いポストは直筆の手紙で、
風の電話ボックスは話しかける生の声で、
そしてバス停は、あの人に会える浜に東北の人たちを連れていってくれます。
生きている人と死んだ人が大勢住む町、東北。

慰めと希望が与えられますように。
みんなが長生きできますように。

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きりん