レイブンズのレビュー・感想・評価
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ある写真家の一生。
全くノーマークでしたが、雑誌で写真家の映画である事を知りラストだったので急いで鑑賞しました。
深瀬昌久って写真家は初めて知りました。昭和の伝説の写真家のようです。
写真館の家に生まれて家業を継ぐよう厳格な父に育てられ、耐えきれず家を飛び出して東京で酒、女、ドラッグに溺れていきます。破天荒で狂ったような一生が故に大胆でグロテスクな写真を撮れたのは十分に理解できました。酒、ドラッグのおかげで自分では意識はしていないが、常識には囚われないぶっ飛んだ写真が撮れたこともあったでしょう。
私も写真を趣味としていますが、せこせこデスクワークをしている身ではとても撮れない写真です。なので彼の一生だけでなく、もう少し写真の事を掘り下げるシーンが欲しかったところです。
自宅の団地の窓から、はにかむ奥さんを定点観測的に撮っていくシーンが印象的で彼女に出逢わなければ、彼はもっと早死にしていたと思います。
やはりそれなりの芸術家は狂人か変人である要素が必要ですね。
凡人である私は静かにネイチャー写真を撮る事にします。(泣)
父の記憶が…
深瀬昌久の名は、写真集「父の記憶」を人に見せてもらって知った。その当時で写真集は絶版だったし、写真家がゴールデン街の階段で転落し、再起不能となり、新作が出るのは絶望的なことも知った。そういう前情報が、写真を見るのにフィルターをかけたかもしれないが、事情を知らずとも「父の記憶」は切なくて泣ける写真集だった。深瀬家の家族の歴史と、父への思いが胸を打つ…それが…あんな独善的で暴力的なお父さん!? あまりのギャップに呆然。まあ、この映画は伝記じゃないからね、これが事実というわけではないよね。
まあ、私にとっては深瀬昌久は「父の記憶」のイメージだけど、英国人監督にはもっと前の写真集「洋子」や「鴉」のイメージなのだろう。「レイブンズ」のタイトルもカラスだし、カラスが主人公の語り相手だし。このしゃべるカラスってのが、好みの別れるところかもしれないが、私はけっこう好きかな。カラスくんのおかげで、実在の人物を描いていても、どこか架空の出来事めいて見える。これは、日本人が深瀬を描くより、外国人の監督の方が、いい距離感なのかもしれない。洋子さんも、イギリス人だから映画化を許可したのでは、と推測する。そして、写真使用の許諾も取ったのはグッジョブだ。長らく深瀬の写真集は入手できなかったが、最近再販されたので、映画きっかけで売れるといいね。「父の記憶」も、私の記憶がおぼろげなので、また見たい。
洋子の登場シーン、フレームに現れてピントがバチっと合った瞬間にシビれたー。あの登場の仕方、うますぎる。瀧内公美の目が強くて、とてもいい。蠱惑的で、享楽的で、自己主張のはっきりしている洋子。でも、自由を欲しつつ、枠がないと少し不安、という感じがした。若い洋子は芸術家のミューズを楽しんでいたが、芸術家の不安定さを支えるには、自身も不安定だったのかな。でも、歳相応に成長変化したので、深瀬を最後まで見守れたのかも。
浅野忠信は写真家の役をやるの3度目じゃない? 縁があるのね。とはいえ、「地雷を踏んだらサヨウナラ」も観てないんだけど。ひとつ気になったのは、左目が閉じ気味なことかな。右利きなら右目がファインダー、左目は開けたまま被写体の状況を確認しながら、シャッターを押すというワザができると、とてもプロっぽい。次にオファーが来たら、ぜひ使ってくださいませ。浅野忠信のこの映画の一押しシーン…久しぶりに再会した洋子に再婚したと言われ、喜びからがっかり、持ち直すが視線泳ぐ、ここの表情の変化が最高にチャーミングだった。
エンドロールのthe cureは、まるでこの映画のために作られたかのようにぴったり。これだけでおしゃれ度が爆上がり。そして、不遇な最期と見られがちの深瀬を、こんなキラキラしたサウンドで彩ると、人がどう思おうと、本人は精一杯楽しんで生きたんだと、全肯定しているようで、とてもポジティブな締め方だった。
カメラマニアから見た視点 小道具の時代考証ミスだけが・・・惜しい・・・
映画も好きですが、それ以上に写真カメラが好きで、敬愛する深瀬昌久が題材の作品という事で期待して鑑賞しました。
構成、映像、演技いずれもしっかりとした文句のない作品で、カメラマンの生涯として重要な小道具の写真機も実際に深瀬がそれぞれの時代に持ってものだったのでよく調べているなと思いました。ただ1点だけの時代考証のミスを除いては・・・
冒頭に近い場面に主人公正久が結婚前のモデル洋子のポートレートを撮っていたシーン。時代は1960年後半~1970年代初めのはずです。撮影しているカメラは彼が当時使っていたミノルタSR-1で、よく調べてるなと思ったのですが、カメラストラップのミノルタのロゴマークが当時に存在していなかった1980年以降のものでした。時代的にありえない組み合わせで、少しカメラに詳しい人ならば誰でもわかるミスでした。
この一瞬だけならばよかったのですが、そのカメラが写るシーンが何度も何度も出てきましたし、おまけに映画ポスターにもわずかですが、そのロゴが写ってしまっています。なので冒頭のこのシーンがどうしても自分の中で引っかかってしまって、かなり映画のストーリーに没入できない自分がいました。
ご存じない方には全然問題ないシーンで、普通の映画なら私自身もご愛敬でOKなのですが、仮にも日本が誇る写真家の深瀬昌久を描いた作品です。これはしっかりしてほしかった。言い換えれば小道具はじめスタッフの中にはこのことを指摘する人がいなかったんだなあ、写真をやっている人がいなかったんだなあ・・と感じました。
その他には小西六パール、PENTAX SP オリンパスXAなどの名機が次々と出てきて見ごたえがありましたし、深瀬の有名な作品も沢山見れました。特にクレジットに出てきた作品は映画を圧倒するクオリティでしたし、鴉が舞うラストシーンと音楽は過去に見た作品の中でもかなり印象に残りました。他には文句をつけるところがない映画だったので、返す返すもあの設定は残念でした・・・
破滅型アーティスト
深瀬昌久も洋子も知らずに鑑賞。
邦画と思いきや、イギリスのマーク・ギル監督による作品だった。
確かに物語の紡ぎ方や絵づくりは邦画っぽくないし、
何より深瀬の自問自答の相手として、鴉人間が出てきて英語で話すこと自体、
ぶっ飛んでいると言っていい。
鴉人間と深瀬との会話は、劇中で「ひとり言」とされているが、
自分会議というか自問自答なんだろうと思った。
とにかく俳優が素晴らしい。
主演の浅野忠信は破滅型の写真家を迫真の演技で表現していたし、
洋子を演じた瀧内公美も表情特に目の演技が凄すぎて怖いくらいだし、
池松壮亮が深瀬にビンタする手首のスナップも強烈だったし、
芋生悠が出演していたのも私としてはサプライズでうれしかった。
私がグッときたのは、不仲だった父親(古舘寛治)の死後の遺品で、
息子の昌久への愛情を感じるものを深瀬自身が目の当たりにしたときの表情。
ベタかもしれないが、この作品でかようなシーンが出てくるとは思っておらず、
私は意表を良い意味でつかれた。
ラストに至るまでが実に壮絶で、こういう生き方しかできなかった人なのだろう。
深瀬の伝記映画というよりは、深瀬というアーティストをアーティスティック
に、且つファンタジックに見せる映画であったと思う。
こういう邦画が出てきて欲しいとも感じた作品だった。
私の生涯ベスト3に入る映画です。
実在した強烈で破滅型の写真家をモデルにした映画です。カメラワークや編集方法、狂言回し(心の声?)が登場する点など、2014年作品の「バードマン」に似ていますが、私には愛しくて悲しくて、生涯ベスト3に入る映画です。男と女、親と子、愛と憎しみ、生と死の葛藤と混沌を描いています。主役の2人がラブラブの時、別れが近づいている時、別れた後、それぞれの時の演技が、絶妙な空気感・温度感を醸し出しています。
鴉の肖像
「男40にして子を成さねば、死を以てその汚名を濯ぐべし」
子どころか結婚も出来ず昨年40歳になった人間になんて台詞を浴びせるんだ、この映画は…(しかも2回も)
深瀬昌久も妻の洋子もまったく知らずに観賞。
主軸としては晶久の生涯なのだが、芸術への傾倒も洋子への愛も、あまり伝わってくる構成ではなかった。
そのため、狂気に至る説得力も不足していた印象。
そこら辺は芝居と写真と行間、プラス史実で補完してください、って感じなのかな。
親父との確執の変遷も飛び飛びに感じた。
イギリス人監督なのに画面の質感や色調、小物にファッションにと昭和の解像度が高過ぎる。
車やらロケーションやらも相当拘ったのではないか。
そこに(言語化できないけど)洋画的な演出や台詞が時折混ざるのは面白い。
“鴉”(何故か英語で喋る)のチープ感も、あの古臭い雰囲気にはむしろマッチしている気がする。
浅野忠信はいつも通りの浅野忠信で、30代はサスガにムリがあった。笑
瀧内公美は『敵』、『綺麗な、悪』と立て続けに見てるが、毎回違うしベリーショートも素敵。
芝居に関しては不満ナシ。
洋子との話も家族との話も掘り下げ不足で、脇は味付け程度なので刺さってくるものまではなかった。
最後の病院のくだり(特に洋子が歩くロングショット)は丸々削った方が好み。
無知ですみません⋯
このお二人を全く知らなかったので、こんな2人がいたのだなぁ⋯。
個性の強い2人が惹かれ合って、ぶつかって、大変だぁねぇ⋯とか、思っていました。
あんまり、こういう人たちの近くにはいたくないなぁ⋯とも。
1960年代の深瀬さんは30歳ぐらい?
そこで、浅野忠信さんは、30代には見えないなーとか、
キム兄に似てきたなーとか、
“地雷を踏んだらサヨウナラ”もカメラマンだったなぁ⋯とか、
話し方が、たまに北野武みたいだなぁ⋯とか、
若い時なら、自分的になんかカッコいい作品だなーと思っていそうとか、
そう思っている自分がカッコいいっんちゃうん?と思っちゃっている自分がいそうとか⋯
いろいろ要らないこと考えたりして気が散りまくっていたので、
総括すると、そこまで好みの作品ではなかったのかと。
洋子役の瀧内さんは、とても魅力的でした。
結局、あんまり心に残るものはなかったのですが、
実在したこの二人に対する監督さんのリスペクト魂は強く感じました。
カラスの擬人化した自身の分身のようなものが出てくるのは、とても面白いと思いました。
心の闇。
父の写真館を継がず上京し写真家として活動する深瀬昌久の話。
モデル(被写体)となってくれた洋子と恋に落ち、…モデル洋子が写真の主題となり、深瀬、洋子と2人で一つの作品を生みだすことになるが…。
瀧内公美演じた洋子のロングヘアーで隠す胸、この作風にこの感じ、この描写で嬉しいサプライズあるかも!?何て思ったのものの何もなし!残念!(←ネタ化してる
自殺しようと思えば飼い猫、正田に邪魔され、飲み屋・南海の階段、「この階段でいつか死ぬかも」が、まさかの伏線?!が過りながらも、こういう写真家がいたんだって感じ。
浅野忠信さんと瀧内公美さんの画力で観れた感じですかね。
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