「観たらきっと誰かと話したくなる。」リアル・ペイン 心の旅 おひさまマジックさんの映画レビュー(感想・評価)
観たらきっと誰かと話したくなる。
すべてのシーンに意味があり、その伏線は自然体を持ってやわらかく回収されてゆく。ジェシー・アイゼンバーグ。この人の前監督作は見れなかったのだが、一気に共感。上手だなぁ。音楽の世界でいうとシンガーソングライター的な表現者か。
思えば、赤と青で始まる衣装からして分かりやすく対照的だった二人のスタンス。
そしてタイトルの「痛み」は「孤独」と読み替えられるだろうか。
主人公のベンジーは、空港ロビーに行き交う変人を眺めるのが好きという、現在過去あらゆる人間、社会そのものが家族と言えそうな男。
もう一人の主人公、ザ・コミュ障のデヴィッドは、社会はあくまで「外の他人」。内なるファミリーこそがかけがえの無い家族だ。
その両極端を俯瞰する面白さ。
超コミュ力のベンジーに実は自◯未遂経験があることが知れた物語中盤から、それまでストレートだったロードムービーに「ゆらぎ」を掛けていく。
お墓に石ころを積むアレも、意味合いの持たせ方として最高だった。追って2回それを回収するが、いずれも、寡黙なデヴィッドの気持ちを饒舌に語らせることに成功していた。
元おばあちゃん家で石を置こうと言い出したのはデヴィッド。ベンジーにスタンスを寄せた努力を垣間見せた。
また、ラストシーンではその時の石を自宅玄関の外に置くのだ。これは石≒ベンジー。ここから中はデヴィッドの世界ということだね。これを理解していたベンジーは、旅の別れに感極まっても食事への誘いを断ったのだ。
孤独だから、ニンゲンみな家族。そう考えよう、いや考えるべきという自己脅迫的な思考によって、ベンジーは生きる意味を見つけたか。だから「もう大丈夫」なのか。
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キーランの演出、パフォーマンスがキラキラと光る。最後のハッパ一本。「吸わないならくれよ」と大事がっていたはずなのに、デヴィッドから過去を責められ、吸うことも忘れてしまっている…これは絶品だった。
物語のラスト、空港で暫しの別れ。
「じゃあな」「またな」からのデヴィッド強烈ビンタ、パチーン!
いやコレ僕、笑っちゃって周りの席の方ホントスミマセン😂ベンジー『…なんで?』ってこれ中川家のなんで?シリーズかよ。※ご存知ない方はYouTubeで中川家なんで?でご検索
ふざけたレビューで申し訳ないが、このビンタ一発は本当に最高のシーン。作品のユーモア向上もそうだが、何と言っても真逆な2人の精神の志向性・他者に求めたいものが、互いに満たされた瞬間と思った。互い存在の大切さを認め合うに至るのだ。
二人の小さな旅はここにシュリンクした。
お見事。まったくもってお見事なストーリーである。
キツーく抱擁を交わす二人。
私はその二人を抱きしめたいような気持ちになった。
日本は便利で楽でいつも帰りたいのですが、みんなに迷惑をかけないように息を潜めるのが、すっかり無理になりましたwww
みんな、面白い映画は思いっきり笑いましょうよ!
共感ありがとうございます。
デイブの中には、あんなにコミュ力が有って自分とは違うベンジーが何故死のうとするのか!という怒りが在ったのだと思います。この旅はお互いの古傷を見せあった、ジョーズのオルカ号船内の様子ともちょっとリンクしました。そう言えばリチャードドレイファス演じるフーバーもユダヤ系?