劇場公開日 2025年1月31日

「ウディ・アレンのモノマネか」リアル・ペイン 心の旅 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ウディ・アレンのモノマネか

2025年2月3日
iPhoneアプリから投稿

ジェシー・アイゼンバーグ演じるデヴィッドの、
ウディ・アレンのモノマネのような、
早口でイライラしたセリフ回しから始まる。

冒頭の空港でのシークエンスは、
ふたりの性格を端的に表すと同時に、
映画全体のトーンを暗示する。

映画が空港で始まり、
エンドロール後も空港の音が聞こえてくる。

この構成は、
観客に「これで終わりではない」という感覚を抱かせる。

空港は出発と到着の場所であり、
最初と最後にタイトルが出て、
特にベンジー(ジェシー自身)にとって、
あるいは観客にとって、
この旅(〈めんどくさい〉旅)は、
まだ終わっていないことを示唆しているのかもしれない。

この空港の残響は、
ジェシー・アイゼンバーグ自身からのメッセージとも解釈できる。

それは、ふたりのキャラクターを通して、
観客に向けて、
ドラマティックな展開や明確な答えを求めるのではなく、
日常の延長線上にある感情や葛藤に、
目を向けることの重要性を語っているようにも思える。

ワルシャワやゲットー跡地、
マイダネク強制収容所(アウシュビッツよりも規模、施設、遺品の数は少ない収容所を選択したのかもしれない)といった場所を訪れるが、
それらを過度にドラマティックに描くことはない、

ホロコーストやナチスも、
必要以上に便利使いしないスタンスがいい。

あくまでも、祖母の生家を訪ねる旅という視点から、
歴史や記憶と向き合っている。

この映画は、観客に何かを示唆したり、
感動させたりすることを目的としているのではなさそうだ。

むしろ、ふたりの視点を通して、
自分自身の人生や感情と向き合うきっかけを与えてくれる。

若者、ばか者、ヨソ者を受け入れてくれるツアーの人たち。
それは、ジェシーからのメッセージ、
そのままでいい、
〈Let it be〉という事なのかもしれない。

空港の残響は、その問いかけを増幅させ、
悪くないエコーチェンバーとして、
観客に深く考えさせる余韻を残す。

蛇足軒妖瀬布
蛇足軒妖瀬布さんのコメント
2025年2月3日

コメントありがとうございます。仰る通りです。

蛇足軒妖瀬布
トミーさんのコメント
2025年2月3日

負の遺跡の描写については、慎重に処理してる感じでしたね。やはり視点はパーソナルな痛みについて、なんでしょうね。

トミー