劇場公開日 2025年1月31日

「様々な「痛み」を描いているのに、爽やかな観賞感が残る一作」リアル・ペイン 心の旅 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5様々な「痛み」を描いているのに、爽やかな観賞感が残る一作

2025年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

軽快だけど何が起きてるんだろう?と思わせる予告編。本編もその流れを引き継いで、スピーディーに展開していきます。なにしろ観客は、慌てて空港に到着したデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)とベンジー(キーラン・カルキン)がどういう関係なのかすらわからないまま、彼らとともにポーランドへの空路に着くわけですから。

ポーランド到着後、彼らが参加するツアーの過程で、予告編の突拍子もない展開は、どうもベンジーの奔放な言動に起因することが段々分かってきます。最初はその振る舞いに戸惑っていたツアーガイドや他のツアー客も、破天荒だけど人間的魅力に溢れた彼を受け入れていきます。

彼らはこのツアーを通じてどんな体験を共有していくのか、なぜベンジーはそのように「振舞わざるを得ない」のか、デヴィッドが常にベンジーに寄り添うのはなぜか。それらの背後は様々な次元の「痛み」が伴っていることが分かってくるのですが、それを直接的な描写でも説明的な台詞でもなく、ツアー中のごく日常的なやりとりで理解させてしまう作劇は実に巧みです。

ある場面におけるデヴィッドの長い独白も、単なる長々とした説明などではなく、心の奥からの叫びであることが実感できるのも、それまでの丁寧な描写の積み重ねがあるためでしょう。

結末の、デヴィッドとベンジーのやり取りが、これしかない!という気の利いたもので、最後まで「痛み(ペイン)」の物語であるにもかかわらず、爽やかな観賞感を残してくれました!

yui