劇場公開日 2025年2月7日

「会えない時間こそが想いを募らせる」大きな玉ねぎの下で Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5会えない時間こそが想いを募らせる

2025年2月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

HYの『366日』に続いてこちらもヒット曲からインスピレーションを得て作られた作品。今回は爆風スランプの「文通相手の女の子と武道館のコンサートで会うはずだったのに、結局、会えなかった男」の歌だ。

なにせ歌い出しのひと言目が「ペンフレンド」。サンプラザ中野くんより2学年下というほぼ同世代の私には懐かしいが、そんな(氏名と住所を雑誌に掲載するという個人情報タレ流しな出会い系サイトのハシリみたいな)コンセプトが現代の若者に通じるのか?と鑑賞前に案じていたのだが、そこは不自然にならずに上手く設定が構成されていた。

スマホがこれだけ一般化し、すれ違うことが難しくなった時代。しかし、すぐに連絡が取れないからこそ生まれる感情の愛おしさは現代だからといって薄れる訳ではない。むしろ、会えない時間こそが想いを募らせる。そして深い愛情は時間という魔法によってのみ紡ぎ出されるのではないだろうか。

昔に比べて現代は格段に手軽に連絡が取れるようになっている一方で、逆にスマホの連絡先を指先一つで消去しただけで全てを失うことも容易になっている。実は個人情報の概念が薄かった過去の方が、住所や電話番号など複数の連絡先を持っていて、後々まで意外と繋がりやすかったのかも知れない。

若者たちの恋愛と大人たちの親交。どちらの世代にも刺さる物語りに仕上がっている。

Tofu