ファーストキス 1ST KISSのレビュー・感想・評価
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観て良かったと思えた。
片思い世界と二本立てで観たが、どちらも良かった。あえて言うなら、こちらの方は導入の所のシーンがそういう世界観だとすぐにわかる一方、どこで戻ったのかそのあたりがいまいちわかりにくく、どう理解すればいいのか時間がかかった。こちらはより大人向け度が強いと思った。
松さんはラブジェネレーションの頃かと思うほど、可愛く若返っていて驚いたが、松村さんは顔だけでなく体つきも何か中に入れていたのか中年になっていた。そして声の変化も素晴らしく、加点要素だった。
どちらの坂元作品も素晴らしいキャストスタッフが集まっている事がよくわかる。
普通に楽しめた為★4
少し甘めの加点で★4.5
2人のやりとり
写真を撮ってた2人は
上映終了までに見ときたかったしタイミングも合ったから本日見てみました。
恋はデジャヴやイルマーレ、君が落とした青空にアバウトタイムとタイムループものはよくありどれも中の上くらいの評価を浮けており割りと見やすいのかもしれません。ループを打ち明けず救う、理解されないと言うのが定番ですが自分が運命を変えようとしている未来んちゅだと言うことを相手に伝えまた相手が理解すると言う作品はバックトゥザフューチャーの1955年のドクやT2以外知りません(たいがい理解されないので)。ただのループもので終わらなかったのはお互いを思いやる気持ちが深く描かれていたからか昨晩見た映画が余りにも悲惨だったからよく見えたのでしょう(658km、陽子の旅です)。
あれはあれで泣く方もいるかと、本作が人気なのはターゲットを倦怠期の主婦にしているからではと思えました。
劇中の過去、現在、未来は同時進行してると言う台詞に新たなタイムパラドックスを見た気がします。
初めからインパクト有りましたし助けたのが赤ちゃんだけにまるで2人の子を助けたように思った方も居るでしょう、だから綺麗な作品に思えた。
ライヤーライヤーで映画デビューした松村くんや松たか子の役者としての成長がうかがえた。
色々と考えた結果、やっぱり好きになれない
本作がよくできた映画作品であることは否定しません。
コメディ&恋愛もの&ファンタジーとして一定以上のクオリティはあると思っています。なので、他の方々の高評価も理解はできます。
ただ、鑑賞中からずっと喉に小骨が刺さるような感覚があり、その正体がなんなのかがようやくわかってきました。
まず気になるのはラストシーン。
そこに映っているのは、我々が2時間追いかけたカンナではありません。未来からやってきたカンナに惹かれ、自分の余命を悟った駈がその後に結婚した「何も知らないカンナ」です。
何度となくタイムスリップして駈の命を救おうとした45歳のカンナと何も知らない29歳のカンナは、少なくとも駈にとって別人のはず。
カンナと出会い「1ST KISS」をした後、駈はどのような顔をして「別人」であるカンナにアプローチをしたのでしょう。その後15年も一緒に暮らしたのでしょう。15年一緒に暮らしても、最初に出会った45歳のカンナとは完全に別人のはずです。
29歳のカンナは物語上の小道具として、駈の自己満足のためだけの存在にすぎないのです。脚本家の玩具と言い換えてもいいでしょう。
我々が2時間追いかけたカンナはどこへ行ったのでしょうか? SF作品ではありませんから、タイムスリップにまつわる細かな設定を説明しろとは言いませんが、本作の描かれ方では別に世界線で生きているのか、未来が変わった影響で存在が消滅してしまったのかあいまいです。おそらく前者なのでしょうが、そうなのであればそこは描写してほしかった。
あえて描かなかった可能性もありますが、「何も知らないカンナ」と彼女との関係を維持するために様々なことを我慢した駈の生活を描くことに何の意味があるのでしょう?
せめて駈が考古学者として成功し、カンナが目指していたデザイナーにもなっているような描写があれば、大人のおとぎ話として許せたかもしれません。
しかし、「何も知らないカンナ」が駈が書いた手紙を読んで、何を理解できるというのでしょう。
であれば、15年前から戻った45歳のカンナの部屋に駈との幸せだった結婚生活の痕跡を見つけ、最終的に後の手紙を発見するといった終わり方のほうが私は納得できたでしょう。
さきほど、脚本家の玩具と書きましたが、それは29歳のカンナに限りません。
いいタイミングで宅配される冷凍餃子や都合のいいところに現れてカンナの写真を撮る子供たち。多数の大型犬をリード無しで庭に放置するホテルなんて存在するんでしょうか?
セリフはうまいと思ったけども、、、あと松たか子は素晴らしい
タイムループ使い過ぎ
未来から来たと、カミングアウトはありなのか?思った。
最初の主演男優の性格の悪さは何だったのか。
そこが直ったのが盛り上げポイント?
離婚したくなかったから、離婚届出す日に自殺したとかでも話が展開しそうと思った。
寝るほど退屈はしなかった。
演技力良く、感情移入して泣けた。
鑑賞後の気分は悪くない。
映画館で6回鑑賞後の無料チケットで、鑑賞しました。
残念!無念!
脚本・坂元裕二、主演・松たか子、観た人の評判も上々ということで、期待したし好感度大で映画館に足を運んだのですが・・・ダメでした。
肝心かなめのタイムリープの設定が納得できない。
夫を事故死から救おうとすれば、事故の直前に戻るのが当たり前。なのに15年前に戻って事故を無くそうとする。最初はね、15年前にしか戻れない設定なのだと思ってました(そうならばストーリー展開も納得するし、評価も4点だった)。なのに事故直前の世界にも戻ってるじゃん! 失敗してすぐにあきらめて、また15年前の世界に何十回も戻って、15年後の事故を無くそうと悪戦苦闘するというややこしい展開に。
結局、「事故直前で夫を救っても、離婚寸前の険悪な夫婦仲はそのまま」なので「15年前からやり直して仲良し夫婦になりました。夫は事故で死んだけど」というストーリーにしたいがためのご都合主義な脚本で興ざめでした。松たか子のコミカルで素晴らしい演技でも追いつけないほど白けちゃった。
あと映画館の大画面では、ストーリーより役者の演技よりも映像美こそが醍醐味なのだと再確認。
全編2時間ドラマのような映像で、これならテレビで観てもいいんじゃね?と思いました。
天才×天才
こんな言葉をかけられる自分に、こんなことを思える自分になりたいと思わせてくれる台詞の数々。
坂元さんの作品に触れた後の自分って、ちょっと可愛くなったような感じがするんです。
分かってくださるかたいらっしゃるかな…。
坂元さんらしくて、聞いていて心地がよかったです。
また、塚原さんの演出がとんでもなくチャーミングで…!!
制作陣の天才と役者さんの天才に安心して作品を観ることができました。
今まで坂元さんの描くラブストーリー作品と、その時の自分の年齢や状況が毎度ぴったり合っていて、
もし10歳増の時に出会っていたらどう感じたかなと思うことがありました。
でも、今作品はいつ出会っても深く刺さっていただろうな。
この刺さった矢のようなものを忘れないように、いつまでも何度でも見返したいと思いました。
今、忘れたくないなと思っても、きっと薄れていってしまうから。
ある種戒めのように何度でも会いに行こうと思います。
愛する人を死なせたくない
日本の若い男優はおおむね苦手だ。あまり日本映画の新作を観なくなった要因の一つはそれ。
でも昨年の『夜明けのすべて』に出ていた松村北斗くんはよかった(そのとき初めて観たわけだが)。その松村くんが主演の評判の映画をやっと観た。
これが、とてもよかった。松村くんがすばらしくいい。共演・松たか子もとてもいい。どういいのかは、自分の目で確かめてほしい。何度か笑って、後半はたびたび涙がわいて出るのを止められなくなった。そしてラストには二人を抱き締めたくなる。
結婚して15年、倦怠期がつづき、もはや修正のきかない不仲となった夫婦。離婚届を出す予定のその日、事故で突然夫が死んでしまう。
残された妻カンナ(松たか子)は、ある夜首都高の事故をきっかけにタイムトラベルする術を手に入れる。 戻った過去には、二人が初めて出会った頃の夫カケル(松村北斗)の姿があったーー。
若き夫と出会う15年後のカンナ。二人は恋に落ち、やがてカンナは「カケルを15年後に死なせたくない」とさまざまな手を打つのだが…… 年上のおばさんとなった松たか子のコメディエンヌぶりが可愛い。もともと嫌いじゃないが、この松たか子は猛烈にいとおしい。彼女は思う。「わたしはやっぱりこの人のことが好きだった」。
脚本もいいのだ。タイムスリップやタイムトラベルを扱う〝タイムリープもの〟の映画は、それなりの覚悟を決めないと作れないと思う。時空を勝手に移動したり、現実には会えないはずの人に会えたりするのは、下手すると安直なご都合主義に終わってしまう。物語への謙虚さと映画への誠意が重要で、本作や『侍タイムスリッパー』はその稀な成功例だと思う。
こんな映画に出会うことはそうそう多くない。大切な人を失くしたことがある人にも、そうでない人にも、だれかを愛している人にも、愛する人なんていないという人にも、おすすめしたい秀作。いやすでに名作と言ってしまいたい。
設定が荒い
内容は良いのだが、展開、設定が荒いのが気になり、泣かしたい、感動させたい映画止まりという印象。
以下違和感を感じる展開、設定:
・何回も過去に戻る割にその影響がごく僅か
・時系列が分かりにくい
・一回り?以上のおばさんにフィーリングが合うからという理由であっという間に恋に落ちる
・15年経って別れた理由が価値観ってのはないなぁ。それも子供無しで。普通はもっと早く別れる。5年ぐらいにしといた方がリアリティはあったと思う。たぶんそうすると松たか子を全編vfx処理しなければいけないから却下にしたのだろうが。
・15年前の自分と合うと倒れ込む理由が不明。
・写真を撮る子供も不明。
・かき氷の列に並ぶ後ろの二人組が、この人あなたのことが好きなのよと言うだろうか?
・最後、死を選ぶだろうか?
台詞は良くも悪くも坂元節炸裂。相変わらず完全なハッピーエンドにしないのはたぶん性癖だと思う。
良い意味で裏切られました
土日に映画を観るモンでは…
タイムリープもの
僕の記憶の中では、タイムリープもので世界的大ヒット
を残したのは、バックトゥーザフューチャーである。
そして近年の国内タイムリープモノでは
東京リベンジャーズが記憶に新しい。
どちらにせよヒットはヒットだけど、結局は
過去書き換えによる未来可変だよね。
と言うのが僕の認識だ。
その認識にちょっと待ってよ。と言わんかの如く
過去現在未来は同時に存在しミルフィーユ。と
劇中セリフに出てきたのにはびっくりした◎
ただのファンタジーSFにはしないぞ!ってかと。
で、その驚きと共に観たら、なんと
過去書き換えでも未来は可変だが、所謂オールハッピー
にはならないではないですかw
これは。とても素晴らしい👍
映画が映画たる意味を体現した作品を観れた気がする。
良き良き(^^)
余白と抑制、おかしみ
日本の映画業界好みの「感動の純愛物語」的宣伝に反し、硯カンナの勢いに魅了され、駈との掛け合いに笑い、典型的なイケメン設定ではないのにこの上なく魅力的に大スクリーンに映し出された松村北斗 as 硯駈を堪能した至福の時間。
まずはとにかく松たか子さん演じるカンナのキュートで素敵だったこと!冒頭、お札で涎を拭く様に笑いながら人物像に引き込まれる。ぼろぼろでちょっとがさつにも見えるカンナでも真に上品な方が演じるから画面がもつ。リモコンを探しながら遺影を前に鼻をくすんとさせるのは感傷に浸っているのではなく餃子の焦げの匂いを感知しただけだったりするおかしさや舞台セット上空での勇敢さが痛快で、目的のために幾度もタイムリープするガッツな行動も納得が行く。もう一度タイムトラベルに行かんとハンドルを切る「ごめんなさーい」のやんちゃさが素敵で、きっと自分も三宅坂を通るたびわくわくしてしまうだろう。いちいち小声で「タカバタケ」と訂正しながら走り抜け、「ダサっ」と言いながら一番ダサい T シャツ選び、犬にまみれフリスビーを華麗に投げ分けて犬を蹴散らす様、そのスローモーション、大真面目にエレベーターホールに座って”駈待ち”する姿、「顔面直してきます」や”久しぶりの”キスをスウェイして避ける様、等々、かわいくておかしくて本当に魅力的で、年齢など関係なく駈が惹かれるのも納得。面白みだけでなく「諦めるの早いよ」と駈に言われて大量の写真を投げ出す気っ風、重なる失敗にも「甘党になってるの」とツッコミつつ、まだ未来は変えられると立ち直る強さ。そんなわかりやすいシーンも素敵だが、松さんの凄まじさを感じたのが、焦げ付いた餃子を目にして「死ぬ」と口にした一瞬後の虚無。「楽しかった…」とベッドの上で丸くなる姿の楽しさと寂しさの絶妙な混在。奮闘にもかかわらず結局何も変わらない状況のやるせなさ。書店で「餞別だ」と言われた時の目に宿る複雑な感情。白髪を抜くやさぐれた顔面。手紙を一瞬ぱっと見て目をそらす瞬間の万感の思い。「一生わからなくていいよ」と口にした時の風の音と目の色。どれも幾層にも重なり合い単純化できない人間の感情を一瞬の表情と佇まいで表していて、この人物造形の深みがあってこそ、配偶者の死という悲劇の中で笑いを誘われ、ゆるゆる設定のタイムリープが説得力を持つのではないか。凄まじいと思ったのは「ダメ?って聞くの、やめて」の後の口角を上げるだけ上げた作り笑いのまま振り返りつつ憤怒へと変わる様の阿修羅像の如き変化。対する駈の淡々とした「お帰りー」の何とも嫌な感じ、静かな抑揚の中にこもった毒、「エアコンついてた」の声色の苛立ち。以前から松村北斗の強みだと思っていた嫌味や不快感の表出の巧みさ自然さが存分に発揮されていて、二人の関係性が壊れていく様の如実なこと。松村北斗という人の、建前や紋切り型に語られること、人間のなんとなく嫌な感じに対する諧謔が坂元裕二脚本に相通じるものがあるようで、それが三点リーダーが2つ連なる脚本の余白を過不足なく表現につなげられる所以ではないかとも思うのだ。会話のない互いに無関心な二人の台所シーンのあまりに見事に交わらず妙に円滑な動線は、この動きに至るにどれだけシミュレーションを重ねたのだろうかと思いをはせたり、いや自然な動きの協調だったら驚異的だと思ったり。そんな関係の冷たさが明らかに示される程、カンナの奮闘のおかしみや2回目の15年の幸せがより強調されるのだろう。
だからその現れとしての駈のベルトの上の腹の肉や白髪、頬たるんだ渋面の遺影に違和感があってはならない。その点で、悔いと懺悔の日々を重ねた不精髭の夏彦(『キリエのうた』)、エリートの片鱗を覗かせながらも思うに任せぬ日常を生きる山添君(『夜明けのすべて』)を演じきった松村北斗に、オタクで奥手で気弱で妙なところで筋の通った、嫌味もいうし不快感も露わにする、まさにこれぞ人間、という硯駈役を与えて下さった坂元脚本、キャスティングの慧眼、塚原監督の手腕に感動する。坂元さんは松村北斗の老けメイクがファンの怒りを買うのではないかと危惧していらしたようだが、キャリア初期こそ澤山梢平(『ぴんとこな』)や堂城一馬(『TAKE FIVE』)のような癖のある役を演じていたものの、訳ありでも“イケメン”の役続きであったから、イケメン忖度(こんな姿見せときゃファンは喜ぶだろう的サービスショット的なものの需要はわかるが)のない、必ずしも美しい存在ではない人物を演じる松村北斗を映した作品が広く高評価を得たことが自分には本当に嬉しかった。
しかしながらこの作品では「硯駈にもう一度恋をしてしまう」ことに説得力がないといけない。そしてまんまと術中に嵌った自分は観ていて「なぜ硯駈=松村北斗は自分のものでないのか」としばしば歯噛みした(笑)。そんな硯駈の魅力は、素朴さ、健全さ、おかしみ、かわいさ(それは松村北斗そのままご自身の個性でもあるようで)、カンナの勢いに巻き込まれうろたえる関係性の面白さ。硯駈のかわいさ、やばさは、登場早々に既に炸裂している。目の前に転落してきた女性にハンカチを差し出す親切さがありながら「あなたの汚らしい顔」と口にしてしまう理系男子らしい素朴な失礼さ(笑)。逃亡するカンナの背景で盛大に転ぶ鈍くささ…数分でその人物像がほぼ理解できる秀逸な、そして転落すると偶然クッションの山の上で無事という映画的な嘘の面白さも加わった、愛してやまぬ登場シーン。プロポーズに「硯カンナ」と口にしてみている時点でOKなのは明白なのに、改めて返事を聞いて「え?」と一瞬みせる上目遣いとはにかみ笑い(2度目の人生の時は流石に勝ち確感があるが(笑))、カンナの「顔直してきます」に対する小さなガッツポーズ、拒絶され涙をためた顔…この愛おしさよ。そんな朴訥さがカンナの勢いに振り回される駈という極上の関係を創り出すに最適。これまでも例えば藤沢さんの放つ「髪切ろっか」「北極星ではなくて飛行機」に対する山添君の「え~」(『夜明けのすべて』)、希に迫られた夏彦の優柔不断でずるさの滲む「えー...」(『キリエのうた』)、純と柊麿(『恋なんて、本気でやってどうするの?』)、夏代と鉄平(『一億円のさようなら』)…女性に翻弄される様は松村北斗の名人芸だと思っていたが今回のカンナ vs 駈も最高。「おばさんのこと好きなんだよ」と聞いて狼狽する「え」、気合いをいれて駈を誘うカンナへの応答の間あい。「ドライアイなんですか?」の絶妙さ…。中でも犬まみれ後のトイレ前の、気まずさと興味と好意との入り混じった機微に満ちた空気感、氷屋さんに同行するまでのやり取りの絶妙さ。かけひきできない奥手が異性を誘うに迷いに迷う様の秀逸なこと。そして、みんな大好き「ごめん、それもう一回ちょうだい」のカンナが最高にキュートで、対する駈の「これ以上僕をドキドキさせないでください」の素朴さ。そんな駈の実直さと共存する理系らしいやや頓珍漢なところも魅力を倍増させる。さらに人物像に深みをもたせ、物語を単なるメロドラマや荒唐無稽なSFにせずリアルな説得力を持たせたのはのでは彼の科学者らしい客観的理性と俯瞰であったのではないか。その側面も(わかった様なことを言って恐縮だが)優れた感受性、唐突に発する狂気に理詰めで現実的なところが共存する松村北斗という人間性が根底にあればこそではないだろうか。プロポーズにそぐわぬ「生物学的多様性」という言葉や、かき氷店の列での「はい、ご質問でしょうか」という学会の質疑応答のような返事に笑いつつ、「未来が決まっているって素敵ではないですか」という後の運命を受け入れる態度の伏線的台詞が混じる脚本の妙。悲劇的な運命でも客観的な興味を持ってしまうことに説得力が生じるのだ。その冷静さが顕著だったのが付箋を見つけた後に何気ない風でかき氷の話をしている、その間の目の落とし方や疑念こもるまなざし。静かに「2024年に僕は死ぬの?君は誰」と問う抑揚。着席を促す手の動きと「はい」の決然とした響き。いくらでも劇的にできるところに抑制を効かせてくれて、松村北斗が演じてくれていてよかったと思った。この部分、脚本では「死ぬんですか?」になっていたのが「死ぬの?」になっていたのが自分はお気に入りなのだが、ここで攻勢に転じた駈はその後の高原ホテルのシーンではカンナと対等に言葉の応酬をしている。一方で全てが明かされて行く中では人間的な弱さも露わにする。その落ち着きと弱々しさのふり幅の自然さ。見上げる目と掠れ声もか細き「ごめんなさい」「離婚する?」 「離婚したくないよ」。そして再び「確かにちょっと短いね でも何回やっても同じ結末になるんでしょ」 「悪くないね、なかなかかっこいい死に方だ」「あと、十五年か……それは確かにちょっと短いね」の他人事のような冷静さ。松村北斗の持つ、ある感情だけに浸る“べたさ”や人間の胡散臭さに対する感覚の繊細さの賜物だと思う。
物語冒頭の死を、生物史の大きな時間の流れと人間の一生とを自ら対比した「ちゅん」という間の抜けた音で表してしまう脚本の軽みを表現しきることができるのも稀有で素敵な個性。シナリオに45回も「死」という語が出てくるこの作品におかしみを湛えさせ、悲劇と憐憫に浸るだけの話に陥ることから救っているのはそんな松村北斗の持ち味だと思うのだ。贖罪の日を送る『キリエのうた』の夏彦も登場シーンは何ともいえぬおかしみがあったし、悲痛なシーンが過剰にならなかったのは、人間の感情の一面的ではない複雑さに対する想像力あればこそ。『夜明けのすべて』で『山添君の人間性や物語の性質を踏まえ、観る人の感情を誘い出そうとするようなあざとさが出たら気持ち悪く感じてしまうであろうし、原作からも外れてしまう』と語られていたことに演じ手としての誠実さとそれを叶える技量が感じられるし、お陰で観る側としては100%悲劇的な状況などないという微かな希望に救われる。感動を誘うよう意図すればいくらでも出来る状況で抑制の効いた表現に留めることで真実味を出すには、映像に自分の爪痕を残したいという欲や思惑の透けて見えない謙虚さと、ある人物を映像で表現することに対する誠実さが必要で、それが本作で初めて松村北斗を観た方にも魅力が伝わった所以だと思うのだ。
そしてすべてが明かされるホテルのシーンで聞こえるのが二人の会話とヒグラシの声だけなのに状況の切なさを十分に感じとらせてくれる演出も上品。その蝉の声も2度目の駈の死の後はアブラゼミで、淡々と役所に届を済ませ、新しいトースターでいつも通りにパンを焼くカンナの内心のやるせなさ、欠落感が伝わってくる(虫の声を聴き分けるのは日本人だけで外国人には雑音にしか聞こえないと聞く。本作が世界に出た時、蝉の声がもたらす 感情の機微は伝わるのであろうか。これは今や杞憂であろうが「すずめの戸締まり」で、ある年齢以上の日本人が東日本大震災という事象に惹起される感情を海外の人が理解し得るのかという懸念にも通じる)。突然の死を告げる電話、「帰ってきたら(ゲームの)続きね」に返事しない駈の後姿、そこに感傷的な音楽や効果音をつけず観る者の感じ方を信頼してくれる演出のありがたさ。そして本作は光も美しい。真夏なのに紗のかかった輝度の低い台所の光、ロープウェイで手をかざす駈に差す陽光、やり直しの15年では硯家の照度と明度がやや高いこと、光の微かな含意が素晴らしく奏効している。光と音が過剰な劇判や饒舌な台詞に頼らぬ余白ある感情表現を可能にしていて、塚原あゆ子監督の演じ手と観る者に任せられるだけの信念を感じ、それは松村北斗の「素敵な作品の一部としてありたい」願いの表れでもあるのだろうと思うのだ。
最後に「君は今日も面白いです」を最高の愛情表現にしたのは、明治の文豪の「月がきれいですね」に匹敵する坂元脚本の令和の大発明。こんなに愛に溢れたまなざしがあるだろうか。自分はそこで泣き、深く頷いた。「寂しさの正体」の一節にも深く共感した感動の手紙。でも、感動の手紙ではなく「ありがと、へへっ」で締めてくれた脚本にも拍手。
松たか子・松村北斗がいい!ひたすらいい!
今の松たか子さん、タイムリープした先の時代にいる若い頃の松たか子さん、どちらもとてもいいです。
特に若い頃の松たか子さんはドラマ「ラブジェネ(ラブ・ジェネレーション)」を思い出させる明るさ、元気さ、ハリつやでした。
松さんの演技にCGで顔部分を加工したようで、確かに、あれ?不自然な感じ?という角度もありましたが、ドラマで見た松さん!!と思える角度・シーンも多く、当時ドラマを見ていた世代としてなんとも言えない感動がありました。
若い松村北斗は相変わらずかっこよかったです。
最初の44歳シーンは別人のように見えたのですが、最後の仲良し夫婦時代の老けメイクはイケメンでした。
まだ若い彼なので、30年後には渋くかっこいいイケオジで活躍してくれたらいいなと思います。
ストーリーはタイムリープもので、他人を助けて死んでしまった夫(松村北斗)を助けるために妻(松たか子)がタイムリープを繰り返します。
斬新だったのは、タイムリープ先は特定の日時で、夜10時までと限りがあり、そこでしか未来を変えるためのアプローチができないことです。
大体のタイムリープものは戻った先から時間が通常に流れて、それでもうまくいかないからまた同じところに戻って、の繰り返しですが、この作品はある一定の時間だけだったので、何度もトライする様に健気さが感じられました。
さらに、毎回子供に撮られるポラロイドの枚数がトライした数を表現していて、タイムリープ先の若い夫に経緯を伝え「変わらなかった」と伝えた時、若い夫が「そんなに早く諦めるなよ」的なことを言ったあと、ポラロイド枚数から理解したところにぐっときました。
若い夫が「未来の結果(=死んでしまうこと)が変えられなくても、そこまでの過程である夫婦生活は変えたい」と言って、実際に仲良し夫婦として時を過ごし、死んでしまうけれど、残されて1人呆然としている妻に手紙を残し愛情を伝える流れに涙が。
あんなに仲良し夫婦で過ごせたのだから、固定電話が鳴るシーンでは「鳴るな!鳴るな!」と願いましたが鳴ってしまい、「あぁ、やっぱり鳴るのか・・・」と悲しみ始めたら、スクリーンの松さんから目の動きのみで驚きと呆然が伝わってきて、その表現力の高さに感心して妙に冷静に見ていました。
ロードショーから2ヶ月ほど経っての鑑賞となりましたが、映画館は満席で、周りからもすすり泣く声が聞こえてきて、大人数で見ているんだなぁという映画館ならではの一体感がありました。
レビューというよりただの感想になりましたが、ずっと見たかった作品が映画館で見られて、よい映画だったので大満足です!!
愛が冷めた夫婦に巡ってきたセカンドチャンス。
朝イチで「片思い世界」
続けて「ファーストキス」を観ました。
どちらも坂元裕二脚本です。
この映画は事故で夫を亡くした結婚15年で、
離婚届を出そうとしていた日に、夫は人助けをして、
自分は死んでしまいました。
残された妻のカンナ(松たか子)の生活は荒れていた。
仕事帰りにトンネルで車を走らせていると、スピンして
やっとのことでトンネルを抜けると、そこは時間軸が違いました。
タイムワープものです。
そこはなんと結婚前の2009年8月1日。
カンナは硯(すずり)駆{かける)と初対面するのでした。
松たか子は45歳のオバサンです。
夫役の松村北斗はスターオーラを100%消して、
地味な恐竜好きの研究者。
駆はカンナに一も二もなく惹かれます。
引力と磁場の引き付けに抗うことは無理です。
この映画の凄いところは、
★結婚15年の倦怠期で離婚を決意した夫婦の設定。
あんなに好きで夢中で愛したのに、愛は冷めてしまった。
★妻より他人を優先して死んでしまった事への怒り。
そうです、カンナは怒ってるのです。
★45歳の松たか子がメチャ可愛いこと。
好きにならずにはいられないですね。
★会話が面白いこと。
シチュエーションも面白いです。
★★☆
氷水を食べるために並ぶところ。
すぐ後ろのメガネの意地悪そうなオバさん。
めっちゃ目立ちます。
最後には、あの若い男性はあんたが好きなんだよ‼️
と呆れたように言います。
★カンナは夫の運命を変えようと、トンメル抜けを
20回位繰り返すのです。
同じシチュエーションで違う会話が起こり、言葉の化学反応も
コロリと変わります
リリーフランキー、吉岡里帆、森菜奈などの俳優が生きています。
不慮の事故、タイムワープ、
もう一度結婚生活をやり直して、
今度こそ、結婚生活に誠実に向き合う。
絵空事でない愛と結婚の真実を描いているから、
こんなに素敵な映画になり、
多くの人の支持を得ているのですね。
上映が終わる直前に滑り込めて本当に良かったです。
(なんで着いて来る?) ……妻だからじゃない……
松たか子主演、ってだけで内容もよく解らないまま、人気有る作品らしいし、好きな俳優陣詰まってたので、なんとなく良作だろな……と、作品情報知らずに観てたけど……。
タイムリープしちゃっててビックリ!!
え?……そんな話だったのか……、と予想外だった。
ミルフィーユ的な時間の概念も、一般化してきたのかな?
ファンタジーとしての捉え方では無かった様に視えた。
マルチバースやらパラレルワールドの視点からすると、ちょっと矛盾も感じたけど……、まあそこは目を瞑れるだけの夫婦の愛と信念を感じられた。
結婚生活が破綻に向かう様子も、短い尺で端的に描かれてて、息苦しいくらい伝わってきた……。
笑い合えた相手なのに……、でもソレが普通なのかな…。
氣持ち一つで(簡単ではないが…)防ぐ事も出来るんだろうけど、結果を知った上でのチートと捉えた。
ヒグラシを背景にあんな会話は、刺さるに決まってる!
※かき氷の時だったかな?、横からウエイトレスのかけ声が、館内放送かと思った!爆
倦怠期の夫婦は特に見てほしい
YouTubeで一場面を見て興味が湧いたので映画館に行ってみた。正直、松村北斗さんを知らなかったが。
夫が亡くなる前の倦怠期の結婚生活の描写は胸が痛くなった。カンナが後に2人をボールペンに例えていたがまさにそんな感じ。相手の存在を互いに意識しない。ただただそれぞれにそこに存在しているだけ。
ある日、離婚届を持って玄関を出たカケルは2度と帰らなかった。
離婚しようとしたカンナに愛は残っていないように見えたがそうではなかった。何度も何度も未来が変わるようにタイムスリップして15年前のカケルに会いに行く。一体何回かき氷屋に並ぶの?と思ったけどその緑の爽やかさと心を許した人に喋りまくるカンナがとても素敵なシーンなのだ。カケルは出会ったばかりのカンナと楽しそうにしている。恋ってこうなのよねと久しぶりにこちらもときめいてうれしさをもらった。
自分と結婚しなければ死なずに済んだと思いわざと冷たいセリフを浴びせるシーンでは胸が傷んだ。カケル、かわいそう。それもこれも何もかもカケルに生きていて欲しいからなのだ。
最後の2人がホテルのソファに座って話し合う夕日のシーンもとてもよかった。15年共に生活した夫にこれまでの不平不満をぶちまけるカンナ。カケルもそれを聞いて反省する。(まだやってもいないことを)その思いがカンナを大切にする結婚生活に繋がった。
人生が有限ならば、あの時こうしておけば良かったと死んでから思うだろうか。恋した相手なのに共に一生一緒にいたいと結婚した相手なのにいつしか互いにボールペンになってしまう。
忘れていた大切なことを思い出させてくれる映画だった。結婚している人は見たらとても共感できる映画だと思う。
未来が分かっていても最期に同じ選択をしたカケル。15年間のカンナとの生活を大事にしたカケル。
若かりし頃の松たか子さんのAIはすごかった。不気味なほどに。中年になったカケルも少し太って40代に見えた。技術の進化はすごい。そういう視点で見ても面白かった。
また何度も見る映画になると思う。よかった。
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