ファーストキス 1ST KISSのレビュー・感想・評価
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終わり方がなぁ…
松たか子と松村北斗の魅力満載の映画。
ファンの方にとっては最高の作品だし、むしろ新しいファンが増えるくらいでは。
松たか子演じるカンナが過去にタイムスリップして若い頃の夫と出会うというものなので、年の差があるキャスティングなわけだけど、そんな年齢の差も、何度も年上の女性であるカンナに恋に落ちる駈も気にならないくらいふたりの相性がよく、自然で心地よい空気が映画全編に溢れていた。
「どうしたら夫が死ぬ運命を避けられるのか?」
そこがストーリーの肝であることは理解しつつも、過去を行き来することでゆっくりゆっくりと、夫を失ったことへの喪失感や生前見逃してきた愛情に向き直っていくカンナの姿がより印象的だった。
タイムスリップというファンタジー要素に包まれているけれど、すべてカンナの妄想でした、と言われても納得してしまいそうになるくらい、彼女の自己セラピー的な側面も強く感じた。
ふたりで過ごしてきた長い時間の中で忘れてしまったこと、諦めたこと、傷つき傷つけたこと、後悔したこと、失ったもの、逆に自ら手放したもの、そんなやりきれない全てを見つめなおしていく心の作業。
辛く孤独なその作業を軽やかに、どこか可笑しく、そして必死にやり切ろうとするカンナがとても愛らしくて、時々笑ってしまうのに泣きそうになる、そんな不思議な気持ちになった。
だからこそ最後の終わり方を残念に思ってしまった。
夫が死なない未来を必死に探し出そうとするカンナが、最後のタイムスリップで若い頃の駈に自分の正体や過去に戻ってきた理由、ふたりの未来について話す。
「たとえ死ぬことになっても…」とカンナと一緒に歩む未来を選んだ駈と最後の時を過ごして、未来に戻ったカンナ。
そこから映画は駈の目線に移り変わり、離婚や自身の死の未来を知った駈が今度はカンナと幸せな結婚生活を送っていくシーンが続く。
結果として彼は自分の信念を曲げずに小さな命を助け、やはりカンナの元から去ってしまう訳だが…。
もちろん、駈が最後に残した手紙にはグッときたし、彼の死を避けることはできないんだろうなぁと何となく予想できていたし、何よりふたりが今度こそは幸せな結婚生活を送れたことはすごく良かったのだけど…だけど、それじゃあ元の時間軸のカンナはどうなったんだろう?と思わずにはいられないのだ。
観客はずーっと、愛を無くして夫を失った時間軸のカンナを見守って応援してきた。
だからこそ、最後のタイムスリップを終えた彼女のその後が見たかったし、見せるべきだったと思う。
夫が死ぬという未来を明確に変えることよりも、彼との愛を見失わない未来を選択し、そして一縷の望みを彼に託したカンナが戻った未来。
その未来はどう変わっていたのか?その変わった未来を彼女はどう受け止めたのか?
そして受け止めた先のカンナの心は?
駈は変わらず亡くなっていただろう。でも、一人帰ってきた部屋にベッドはきっかり一台で、トースターのプレゼントが届いていたり、カレンダーに旅行の予定が書き込まれていたり、ふたりで遊んでいたであろうゲームが残されていたり、お揃いの靴下があったり、沢山の笑顔の夫婦の写真が壁に飾られていたかもしれない。
そして、本来のラストと同じように駈からの最後の手紙を見つけるかもしれない。
それらを見た時、実際の思い出はなくとも、カンナの心は大きな愛に満たされたんじゃないだろうか。
そしてそこでやっと彼女の心の旅は終わりを告げるんじゃないだろうか。
という理由で個人的には元の時間軸のカンナを最後まで見たかった。
その後に、若い頃のカンナと二度目のはじめましてをして、恋に落ち、結婚し、一緒に生きていく駈の姿で締めくくったら………とか、お前クリエイター気取りかよ?みたいなうざいことをエンドロールを見ながら考えてしまったりとかした。
でもそれくらいどうしても元の時間軸のカンナの最後を見たかったんだ~~。
ただ、とにかく主演のおふたりが素晴らしかった!!
最後のタイムスリップで「君と結婚できないのは嫌だ」の言葉に思わず顔を覆って泣くカンナとかものすごい心に来たし、「こりゃ恋に落ちるよ」な駈の誠実なキャラクター性も最高だった。
ジリジリとした真夏の質感や、最初の方のケーブルカーの時のふたりの撮り方も切なさに満ちていてとてもとても好きだった。
坂元裕二特有の台詞回しがちょっと個人的に合わないなと思ってしまうところもあったのだけど、総じて切なくて愛らしい観てよかったと思える映画だった。
※教授の娘がわざわざ訪ねてきて「幸せだったのか?」とか言い始めた時は「カンナがやらないなら私がやる!」とぶん殴ってやりたくなったけど。あれはどんな夫婦関係であれ伴侶を失った人間にかける言葉ではなく、ものすごく残酷な行いをする女だなと思った。
夫婦再生の物語
兎に角、松たか子の硯カンナが、いじらしく可愛い。松村北斗の硯駈を死なせない為にタイムスリップを繰り返す姿が、何とも可笑しく愛らしい。最高のコメディエンヌだ。
SFファンには申し訳ないが、タイムスリップは手段であって、この物語の本質ではない。
人生に疲れた中年男性を松村北斗は見事に演じていた。
今いる人間なんて百年先には誰もいない、地球の46億年に比べれば、人の人生なんて"ちゅん"と言う間に終わる。
"ちゅん"
冒頭の遺影の駈は仏頂面だ。
夫婦仲は冷え切り、生活に疲れた中年男性。
けれど、心優しく熱い情熱も消えては居なかった。
誰も助けなかった、赤ちゃんを線路に飛び込んで助けたのだから。
恐竜展のチケットも買って居たね。
カンナが偶然タイムスリップした先に、15年前の、二人が出会う前の駈が居た。カンナは若かりし頃の駈に再び恋をする。駈の人生を変えるべく、何度もタイムスリップを繰り返すカンナ。若い駈も45才のカンナに恋心を抱く。人生を達観している駈には、45才のカンナとの会話が心地良い。
同じ年の様ですね。なんて言ってるし。
最後のタイムスリップの時の二人の会話は、坂元脚本の真骨頂!
駈は、今のカンナに会えるのなら、二人の出会いも間違えて居ないし、死ぬ事も間違いじゃない。やり直すなら夫婦生活をやり直したい。
2度目のプロポーズ。
15年後、駈はカンナに手紙を書く、とても幸せな15年だったと。
この手紙の独白は泣かせる。
あぁ、これは、駈がどう生きるかの物語なんだとしみじみ思えた。
駈、最後の遺影は笑っていたね。
ありがとう
カンナの笑顔で映画は終る。
幸せな映画だなぁ〜
寂しさの前に、好きが有る。
あなたの横に居る人と向き合いましょう。きっと幸せになるよ!
観終わった後ちょっとボーッとしていたいくらい心が動かされた
餃子が届いた理由が、
初めは、自分が忘れていたのかも、だったけど、
最後には、自分のためにカケルが頼んでくれたのかも、と変わったところ、いいなと思った。
ちゃんと相手のことを考え合えるように変わったんだよね。
あんなに不仲だったのに、
カケルのために意地になって未来を変えようとしたカンナには想いが残っていたんだと感じた。
そして最後にどうなるか聞いた後、
カケルは、2024年の結末を知って、ずっと仲良くしたいと思い続けて行動したんだと思うけど、
結果、2024年にも無にならず、仲良いままいれたのは、
結末を知らないカンナも同じように行動したんだと思うし、
そうなるようにカケルがカンナに仕向けていたこともあったのかもしれない。
死ぬという悲しい結果は変わらないのに、
人生の中身は変わった。
そうありたい。
この映画を好きな人と一緒に見れて良かったです。
松たか子さんが、素敵
どこをしっかり描くか?どこを端折るか?
というところでは、タイムリープものとしては、どうやってタイムスリップして、戻るか?が大切かなと思うので、そこら辺が結構雑だったのが残念でした。そこなんとかできなかったのかなぁと、、。
松たか子の映画として、素敵なら映画であることは間違いないです。
設定は雑だが会話が面白い
マンネリ化、倦怠期、離婚危機の夫婦は見てください笑
結婚して15年になる夫を事故で亡くした硯カンナ。
夫の駈とはずっと前から倦怠期が続いており、不仲なままだった。
第二の人生を歩もうとしていた矢先、タイムトラベルする手段を得たカンナは
過去に戻り、自分と出会う直前の駈と再会。
やはり駈のことが好きだったと気づき、もう一度恋に落ちたカンナは、
15年後に起こる事故から彼を救うことを決意する。
といったあらすじ。
タイムトラベルものです。
最初は東リベやALL YOU NEED IS KILLと重ね合わせながら観ていた。
何度も何度も過去に戻り、出会う前の駈に接しながら、
未来(というか現代)を変えようとする。
そして、徐々にカンナが昔の恋をしていたころに戻っていく。
恋は盲目、結婚したら解像度が上がって4Kとか、
好きなところを発見し合うのが恋愛、
嫌いなところを見つけ合うのが結婚、とか。
グサグサ刺さるし、うける笑
しかしまあ、ときめいたのか、ホントに何度もしつこいぐらい戻る。
リセット、リセット、リセット、って感じ。
そのたびに流れるシャッター音。
ただ、このままいくと、この二人の出会い、その後はどうなるの?
と疑問が頭をよぎる。
しかし、そこはちゃんと回収、さらには変えられない運命に逆らわず、
それでいながら、夫婦生活を改善していく展開は、素敵でした。
15年前の夫に恋をし、15年後の妻に恋をする。
タイトルのファーストキス、そういうことだったのか。
バッドエンドなんだけど、ハッピーエンドなのかな笑
主演のカンナ役は松たか子さん、チャーミングでした、コミカルでした。
夫の駈役は松村北斗さん、こういうまじめそうな役、ささやくような話し方、
ぴったりだよね。
実をいうと、私は2024年末から、あることがきっかけで
嫁と別の部屋で寝ているのだが、映画を見終わった後、
なぜか罪悪感をおぼえた笑
別に仲が悪いわけではないですよ笑
せつないラブストーリー
結婚15年目の倦怠期の中
突然、夫が事故死する。
妻は、ひょんなこと(首都高での事故)から
過去にタイムトラベルできるようになり
若き日の夫(彼)に会いにゆく
どうしても彼を救いたい気持ちで
現在と過去を 行き来する妻、
硯カンナを松たか子さんが
自然体で演じられ
その夫、
駆役に松村北斗さんが好演します。
カンナは、二人が出会わなければと思い
フローチャートを作り付箋を貼る
コロッケを買ったのを
買わなかった事にしてみたり等
何度も 試みるが
未来は変わらずであった。
過去の世界で
カンナと駆が
幾度となく
人気のかき氷屋の行列に並ぶが
入店前に終了となったりするシーンも
最初はぎこちない会話であったが
カンナにとっては、
何度も繰り返しているので
最後は、走って並び
ようやくかき氷屋に入れて
注文をしようとした時
カンナの靴下に貼りついていた
付箋(駆の死亡日)が剥がれて
それを駆が 見つけてしまい
問いただす。
カンナは自分はタイムスリップして
運命が変わるようにと
繰り返していた事を伝えるが・・・
死亡の原因を聞いた駆が
選んだ選択は・・。
なんて、せつない物語でしょうか
涙でスクリーンが滲みました。
特に、過去に戻った時の二人の会話や
ラストのカンナに宛てた手紙に
せつない思いでいっぱいになりました。
駆にとって初めてのプロポーズだが
カンナにとっては2度目のファーストキス
このシーンでも泣けます。
駆が注文して3年後に配達された
餃子を受け取り笑顔のカンナの表情も
印象的でした。
久々に ステキな
ラブストーリーを観ることができ感動です。
主演のお二人の他
キャストの皆様の
ご活躍も素晴らしかったです。
拙いレビューで すみません。
もう大看板で見るのはやめよう
熟練の松たか子、気鋭の松村北斗、ラストマイルのヒットが記憶に新しい塚原あゆ子を監督に据え、更に名手坂元裕二を脚本に迎えた磐石の布陣。ほらどうだ!おもしろいだろ!、と
セリフの妙と間のとり方は本当にうまく、SFコメディプラスラブストーリーというなかなか珍妙な組み合わせでも、ハッとさせられるところも多くとてもおもしろくはありました。
結婚して年数日々を重ねた夫婦が、お互いの時間を振り返るのには最適なのかな、と。
ただ、まあSF的なことの細かい点は放り出しているので、つっこむ方がヤボ。ということは重々承知ではありますが、その幸せはパラレルだし、結末を知っていて、かつ悲しむひとがいるというのにその問題を回避しないの?バカなの?と、かなりモヤモヤが残りました
「大丈夫、未来は変えられる」― だれも"運命の人/赤い糸"だなんて言わなくなった、夢も見れない今日に坂元裕二さんが描くこと。おかげで僕らはまた恐竜を発見できる!
恋は盲目、結婚は4K。恋はいいところ探しで、結婚は悪いところ(粗)探し。出会ったときは一億点で、そこからの減点法?そんなふうに離婚が昔より普通の日常になって、誰も夢を見(られ)なくなっている今に、だからこそ坂元裕二さん✕タイムトラベル=脚本家・坂元裕二さんの原点に立ち返るような、地に足の着いたロマンチックなドラマ。何より先ず、坂元裕二さんと松たか子さんという黄金タッグが嬉しい!運命の赤い糸という神聖時間軸を、他の色の糸で上書こうと何度も同じ1日を奮闘する主人公を、松たか子さんがいつもの(割とズバズバとはっきり言う口悪く気難しい?)好演で、観客の笑いと共感を呼ぶ。そこに松村北斗の魅力も加わって、シンプリシティの極致のように飾らずも届くものになっていた。
"運命の赤い糸"や"運命の人"という概念自体が、今ではほとんど耳にすることのなくなった、一昔前の古びた絶滅危惧種なアイデアだと思う。今日、レールのようにあらかじめ決められた"運命"といった概念が作中に出てくるときは、主人公にとってその多くは目の前に広がる打破すべき障壁として描かれる。本作でも入りとしてはそうだ。それらは例えば王子様を待つお姫様プリンセスといったイメージを想起させ、だから女性の自立や地位向上・男女平等などが叫ばれるようになって、主流派から外れ消えていったのだと思う。だが、坂元裕二さんは自身の得意な方法とさすがの手腕で、恐竜のように滅びかけた概念を掘り起こし、こうも素敵に復活させてしまった!そういう意味で、本作はまさしく日本ロマンス映画のジュラシックパークだ!!
「これ以上、僕をドキドキさせないでください」― 主演・松松コンビの科学反応に抗えない!かき氷からトウモロコシ、餃子へ(南府中駅は無さそう)。もう一度あの頃のぼくらの気持ちに戻れたら。残りの人生を誰とどう過ごしたいか選択とお互いの努力や歩み寄り=愛することの連続で、これもまた人生賛歌。比較的わかりやすい王道の図式。つまり夢と恋や、お金持ち(今回の場合は教授)か真実の愛か、みたいな。吉岡里帆の役どころが流石にズケズケ言いすぎて笑っちゃいそうになるくらいビックリした。時間も上下・前後ろ曖昧あべこべでもいいけど、やっぱりぼくらには坂元裕二さんが必要だ!…という当たり前すぎる普遍の真理を改めて発見しました。
P.S. 上映後、周囲のいたるところで号泣している女性を連れの男性がよしよしと慰める微笑ましい様子が見られて、一人で観に行った自分としては坂元裕二作品の中の松たか子くらいヘソ曲げそうになった。ちくしょう、わかっちゃいたけどやっぱりツーマンセル推奨(=お一人様非推奨)カップル映画かよ!
共感と切なさ
『いつもといっしょ』
駈が出勤する際に交わす何気ない夫婦の会話です
この言葉の尊さを是非劇場で感じて来て欲しい
何気ない日常がどれほど尊い日々なのか、改めて気付かされ後半は涙が溢れ出てくる状態でした。
脚本、演出はもちろんですが、音楽や光の眩さ、自然の美しさ等、本当に素晴らしかったし何より松たか子さん、松村北斗さんのお芝居に魅せらせました。
松さんは言わずもがな、松村北斗さん!
20代から40代への瑞々しさ、純朴さ、慈愛に満ちた穏やかな表情に声、とても胸に来ました。
思い出すだけでも涙腺が崩壊してしまいそう。
今この時に、こんなにも愛おしさの詰まった優しく心温まる作品に出逢えて本当に良かったです。
また観に行きたいと思います。
パートナーの嫌な所を知り合うのが結婚?
始まってすぐ、松たか子演じるカンナの旦那が死んじゃう。あれ?女にホームから線路に突き落とされたのかな?と思ったら、すぐに別の話に。シーン違ってたよね。カンナが家に居ると、宅配便が餃子を届けてくる。あら、3年前に注文したの。そりゃ覚えてないわな。ちょっと納得いかなかったのはカンナの料理。雑すぎだよね。
それから始まるタイムトラベル。あれ?トンネル内でこんな事故が起きるってことは、カンナも死んじゃったのかなって想像。15年前に戻って出会う前の若い旦那に会ったけど、最初はこのタイムトラベルは想像シーンじゃないのかなって思ってた。違ってたけどね。元々、松たか子と北村北斗のラブストーリーなんて、歳が離れすぎじゃないかなって思ってたが、15歳以上の差が必要だったのね。それにしても、死んでほしくない気持ちは分かるが、離婚しようとしてたのに、また惚れ直すなんてモヤッ!ずっと繰り返す2人の会話劇。過去と現在を行ったり来たり。旦那が死なない様にやり取りをしてたのに、現在に戻ってくると旦那は死んだままだった。モヤッとするが、結構楽しい展開。何度もやり直すなんて笑えるわ。楽しいと思っていたが最後は悲しかった、ウルッ!
期待以上でした
坂元裕二脚本で、松たか子さんと松村北斗さん主演でタイムトラベルものとか、もう期待するなと言うのが無理な映画なので、期待ハズレだったらどうしようと逆に不安になっていたのですが、完全に杞憂でした。期待を大きく越えてきてとても良い作品になっていました。
前半は夫を亡くして悲しいはずなのに、松たか子さんの悪戦苦闘ぶりにくすくす笑わされてしまいました。コメディなのかなと思っていたら、後半は今度は松村北斗さんの番。松村北斗さんが泣かせにかかるので大変でした。手紙のシーンは松村北斗さんのあの声と読み方で涙腺が崩壊してしまいました。あまりに良い映画だったので、2日後にもう一度観てきました。もう一回くらい観たいですね
なお、タイムトラベルものとして観るといろいろおかしな点も多いのですが、そういうのは気にせず、松たか子さんと松村北斗さんの夫婦の物語を劇場でお楽しみください。
コミュニケーションの大切さが分かる夫婦愛再生物語
本作は、倦怠期の夫婦、硯駈(松村北斗)とカンナ(松たか子)の再生物語である。ただの再生物語ではない。最近のトレンドの一つであるタイムトラベルをして頻繁に過去と現在を往復するストーリーである。それを許容できるか否かで本作の賛否は分かれるだろう。私は賛とした。
結婚して15年。駈とカンナは倦怠期が続き、離婚届けを出す日に駈は事故死する。失意のカンナはふとした切っ掛けで過去へのタイムトラベル方法を知り、15年前の自分と知り合う前の駈と再会する。自分の想いを再確認した彼女は、タイムトラベルを使って15年後の駈の運命を変えようとする・・・。
前半は、タイムトラベルを乱発し過ぎの感はあるが、それ程にカンナの駈への想いが強く溢れ出ていると推察できる。
全編、松村北斗と松たか子の遣り取りが多く二人芝居と言っても過言ではない。何と言っても松たか子が持ち前の演技力を全開させて、駈を救おうとするカンナを熱演している。同じシーンの繰り返しが多いが、台詞と共に心情表現を微妙に変えているのは流石。
松村北斗も、学者肌で一途な駈を好演している。松たか子の我武者羅な動の演技を落ち着いた静の演技で見事に受けきっている。
後半、カンナが万策尽きて自分の正体を明かしてからは、作品が一気に落ち着き、二人の本音の心情が吐露されていく。駈は自分の15年後の運命を変えようとはしない。二人の結婚生活のプロセスを変え夫婦愛再生を決意する。
本作は、タイムトラベルという架空の手段での夫婦愛の再生を描いている。しかし、現実にはこの手は使えない。タイムトラベル中の二人の会話の多さが布石だろう。夫婦関係に限らず、人間関係の基本は相互信頼、相互理解である。そのためにはコミュニケーションが大切である。自戒を込めて、分かって欲しい、分かるだろうでは良好な人間関係は継続できない。
本作は、駈とカンナの夫婦愛再生を通して、人間関係におけるコミュニケ―ションの大切さを教えている。
映画館で観てよかった
「どうしてついてくるんですか…!」
「…妻だから」
このセリフが、射抜かれたように記憶から離れない。
タイムリープが軸となる作品が個人的に好きで、
長年の推しである坂元裕二さんがタイムリープ作品を書くというので公開をずっと楽しみにしていました。
(監督もサントラも主題歌もみんな推しだったので益々期待していた)
何度もスズリカケルの死までのシナリオを変えるべく、15年前と現在を行き来するカンナ。
カケルは自らの死の宣告を受けた日から、カンナを愛せなくなるタイムリミットまでのカウントダウンの日々がはじまったのだ。
それをカンナは知らない。ただ純粋に愛し愛され、円満に夫婦生活を過ごしていた。
彼は15年間の間にいつでもカンナにこの全ての出来事を話すことが出来たはずなのに、それをしなかった。
1日、1日、自分が死ぬ日に近づく中、カンナにそれを諭されずにただ愛していたこと。
当日、彼はどんな思いで家を出たのか。
そんなことを考えていたら、涙腺が弛み、自然と感情が込み上げた。
ふたりは、ずっともっと"愛したかった"
「僕はたとえ死ぬんだとしてもあなたと会えないのは嫌です。」
一度目の死の時、カンナはもう愛せないことを悔やんでいた。
二度目の死の時、カケルはもう愛せないことを悔やんでいた。だが、彼は続きがあることを知っている。
このサイクルの中で、どちらかがどちらかの記憶がない。
だけど愛はある。必ず結ばれる。とんでもないラブストーリーだ。
若くても歳を取っても愛が芽生える。
「好きな人って、いて、見るんじゃなくて、
見たら、いるんだよね」
と過去の坂元裕二さんのドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の劇中でのセリフが、今作でもいきていた。
コロッケも、ボールペンを使った例え話も、トーストも、靴下も。
"坂元裕二の本"である代名詞のようなアイテムが盛りだくさんだった。
夏休みの課題で新聞を作っていた子供たちが撮る"写真"が、時空を越える境目、時空を越えたカウントになっていたアイデアに、くうぅっとなりました。
一体どこからそのアイデアが生まれるのか…
とても興味深い。
今作は二度、三度、と何度でも観たい作品だと思ったし、夫婦で観るべき作品なのかもしれないと感じました。
ここからは主観の余談を少し。
松たか子さんは『カルテット』のまきさんと、『大豆田とわ子と三人の元夫』のとわ子。
吉岡里帆さんは『カルテット』のアリス。
坂元裕二さんは"あてがき"(キャストを決めてからセリフを書く)でお馴染みの脚本家さんなので、きっと今作もそのスタイルだったと思うが、
坂元裕二さんを通したキャスト陣の方のイメージが見えておもしろかった(関心した)。
とにかく吉岡さんは少しいじわるで、そしてまっすぐで、自分のやり方で人生を開拓してゆく人。ブレない人。という人物像がしっかり出来上がっているんだろうな。と、前作のアリスちゃんと似たエッセンスを今作でも感じて確信した。
そして、Xなどで散見された今作を見た方のレビューでとても評価の高い松村北斗さんの演技。
彼が坂元裕二さんの作品に出てくれたことに、キャストの発表の時から、坂元裕二さんファンとしても純粋にとても嬉しかった。
彼のナチュラルな表現力のおかげで、すぐにのめり込めたし、そこにアイドルの彼は存在していなかった。
が、やはりアイドル。「これ以上、僕をどきどきさせないでください」を3回おかわりした坂元先生。
あれは間違いなく彼への愛あるアイドルいじりである。
(しかも3回目の時、カンナは携帯電話で録音してた)
きっと一度目の鑑賞では気付かないような細かい演出がわんさか隠れていると思う。
二度目はそれに気付きたい。見つけたい。そう思うのも坂元裕二さんの作品の面白い魅力だと思います。
そういえば、
松たか子さんはこれまで坂元裕二作品の中で、幾度となく身内やそれに等しい人を亡くしている。
先生の中で、松さんのイメージは大切なものを失いながらも自立しまっすぐに生きている女性なのかもしれない。
(今はまだ余韻の中にいるので、また思い出せたことがあればレビューに書き足したいと思う)
p.s.タイムリープの作品は必ずと言っていいほど、主人公が時をかけることに楽しくなり一時期乱用し始める傾向にある。
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