「『FIRST KISS』じゃなくて『1ST KISS』なのが観る前からちょっと気になってた」ファーストキス 1ST KISS おけんさんの映画レビュー(感想・評価)
『FIRST KISS』じゃなくて『1ST KISS』なのが観る前からちょっと気になってた
主人公・カンナは事故で夫・駈(かける)を亡くしたけど、とある方法でタイムトラベルできることを知り、15年後に起こるはずの事故から駈を救おうとするSF×ラブストーリー。
登場人物が少なくてサブキャラの掘り下げもほぼなし。その分、ストーリーラインがシンプルになってるけど、時系列が行ったり来たりすることで単調にならず、めっちゃ見やすかった。
松たか子さんと松村北斗さん、15年前と現在の演じ分けがしっかりしててすごかった。メインの組み合わせが「現在のカンナ(松たか子)×15年前の駈(松村北斗)」だから、歳の差キャスティングが最初はちょっと不自然に感じたけど、観てみるとめちゃくちゃしっくりきた。
映画のタイトルが『FIRST KISS』じゃなくて『1ST KISS』なのが観る前からちょっと気になってたんだけど、実際に観て「なるほどな」と思った。『FIRST』だと「人生で最初の」という意味が強くなるけど、時系列をぐるぐる回るカンナにとっては、何度も「ファーストキス」を繰り返してしまうことになる。だから『1ST』にすることで、「このタイムリープの中での1回目」という意味を持たせつつ、「1番良かった」とか「特別な1回」という順位づけ的なニュアンスも含ませているのかもしれない。めちゃくちゃ粋。
劇中で何度も「過去も現在も未来も同じ場所にある」って言葉が出てくるんだけど、これが科学的な話というより、人生観としてすごく刺さった。「過去を変えたい」「人生をやり直したい」って思うことは誰にでもあるけど、この映画を観て、それが本当に必要なのか?って考えさせられた。
過去って、ただそこにあるものじゃなくて、現在の自分が積み重ねてきたもの。でも、自分で作ってきたはずの過去を、まるで他人事みたいに扱ってしまうことがある。納得いかない現状に対して、つい被害者意識を持ってしまうこともある。でも、本当に大事なのは「人生をやり直すこと」じゃなくて、「現在をどう生きるか」なんじゃないか。
過去も未来も、ミルフィーユみたいに現在が何層にも重なってできている。だから「未来を変えたい」と思うなら、結局、今この瞬間を大事にするしかない。現在という時間そのものだったり、生きている自分自身、そして目の前にいる人。結局のところ、「現在をどう生きるか」が一番大事なんだと痛感させられた。
極論、人間って何のために生きてるわけでもないから、結果じゃなくて過程を大事にするしかない。未来でも過去でもなく、現在を大切にする。
素敵な現在を積み重ねたものが素敵な過去になって、素敵な現在を積み重ねようと思いながら生きることが、素敵な未来を作る。人生ってそういうもんかもしれないなって思った。