「そもそも設定が、、、」ファーストキス 1ST KISS るなさんの映画レビュー(感想・評価)
そもそも設定が、、、
タイムトラベル物は数多くあり、目が肥えた観客からすると違和感があるのではないだろうか。
時間移動という設定が物語の核心でありながら、そのメカニズムやルールが曖昧であることで、結果として物語の展開に説得力を欠いてる。特に、主人公のカンナがどのようにして過去に戻る手段を得たのか、その詳細が不明瞭。
また、物語の進行において過去と現在を行き来する構成は興味深いものの、シーンの切り替えが頻繁であり、観客が感情移入する前に次の展開に移ってしまうことが多々あり、これによりキャラクターの感情や関係性の深まりを十分に感じ取ることが難しくなる。
さらに、カンナと駈の関係性の描写において、過去の駈がカンナに対して急速に心を開く展開が不自然に感じられ、二人の関係が深まる過程が省略されているため、彼らの絆の強さや愛情の深さが十分に伝わらない。これにより、クライマックスでの感動が薄れてしまう結果となる。
加えて、脇役のキャラクターたちの描写が浅く、物語全体における彼らの役割や存在意義が不明確。特に、吉岡里帆や森七菜が演じるキャラクターの背景や動機が十分に描かれておらず、物語に深みを与えることができていない。
ただ物語のテーマとして「時間」や「記憶」を扱っており、観客に対して人生や愛について考えさせる深いメッセージ性を持っていて、特に、過去の出来事や思い出が現在の自分にどのような影響を与えるのかを考えさせられる面はある。
脚本は坂元裕二。
ウィットに富み深みのある台詞が数多く、会話劇的色合いの、濃密に張り巡らせた構成は秀逸。
タイムトラベルの不備は敢えて目を瞑り鑑賞すれば良いのかも知れない。
タイムトラベルのトリックが使われていますが、それは主軸ではありません。
なので、なぜ過去に戻れるのか?どうやって?といった問いや説明は不要であり、余計です。
この作品における本質は「過去の行動を変えても未来の結果は変わらない」部分にあります。
カンナのタイムスリップによって駈はコロッケを食べなくなりましたが、ドーナツを食べます。
何をしても、しなくても、駈はカンナに出会い、好きになります。
そのためにタイムトラベルは使われます。
餃子が届く結末も変わりませんが、最初と最後では全然違いますよね。
また、サブの人物の掘り下げに関してですが、その必要も感じません。
森七菜さん演じるスタッフは恋愛相談での芯を食っているようで何も考えていないような会話で、リリーフランキーさん演じる教授は飲めない若者に何度も酒を勧めたり、ホテルでのジャム瓶のところで、吉岡里帆さん演じる教授の娘は昼なのにもう充電が切れる携帯、父に甘え、夫を亡くした人に私の方が幸せにできたと言いに来る場面でそれぞれ嫌というほどにキャラクターを感じることが出来ると思います。
出演シーンが多くないにも関わらずその人となりが想像出来るのは演者の力と過不足ない台詞にあると思います。