「幾つになっても、ピュアで愛らしい松たか子の魅力存分に…」ファーストキス 1ST KISS bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
幾つになっても、ピュアで愛らしい松たか子の魅力存分に…
タイム・リープをモチーフにして、一見、SF的な要素と夫の列車事故死というシリアスな内容であるにもかかわらず、クスッと笑えて、心温まり、切なく涙するラブ・ストーリーに仕上がっている。結婚生活を続けていると、どこの夫婦も訪れる倦怠期。そんな夫婦に、今一度、相手への思いや言動、生活を見直す機会となるだろう作品。
そして本作は、幾つになってもピュアで、愛らしい松たか子の魅力をたっぷり2時間堪能させてくれる作品だ。というより、松たか子以外は、本作の主人公カンナ役は、考えられないと思う。15年の年月を遡った過去の世界において、未来の夫となる硯駆役の松村北斗との恋人役は、歳の差を感じさせないで、スクリーンに映し出されていた。
細かいところを言えば、突然のタイム・リープやそれを繰り返すことのできる必然性、過去の世界での辻褄の合わない行動等、やや雑な作りとなっていた。しかし、松たか子の飾らない会話、松村北斗の朴訥とした表情等、2人の自然体の演技に包みこまれ、その分、雑な演出はあまり気にならないで、2人の未来に寄り添うような気持ちにさせてくれた。そこの作り方は、長年、テレビドラマのヒット・メーカーである塚原監督の巧さなのだろう。
甘い、恋人時代を経て結婚したカンナと駆。しかし、時の経過と共に、互いに思いやる気持ちも置き去りにされ、すれ違いの生活の中で離婚することに。離婚届を提出するその日、駆は駅のプラットホームで線路に落ちた赤ちゃんを助けようと、自らが犠牲となって亡くなってしまう。離婚を決めていたとはいえ、カンナも落ち込み、荒んだ生活が続く。そんなある日、トンネルの崩落事故に遭遇したカンナは、そのはずみで15年前へとタイム・リープしてしまう。そこで、若き日の駆と出会い、何とか駆が死なないように、カンナは時を遡り、繰り返し、繰り返し手を加えるのだが…。
本当に、松たか子と松村北斗の2人の姿が素敵に見えたし、そう思わせた2人の演技も素晴らしかったと思う。若かりし頃のカンナは、CGで修正が入っているのだろうが、決して今の姿や表情と遜色なく感じ、松たか子という女優の魅力を感じた作品となった。
自分の命が尽きる時を知ってまで、愛する人の為に一緒に歩む道を選んだ駆の本当の愛に、感涙した。