「悪くないファンタジー・ロマンスなのだがちょっと尺が長すぎる。」ファーストキス 1ST KISS あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くないファンタジー・ロマンスなのだがちょっと尺が長すぎる。
まず監督の塚原あゆ子さんから。彼女はTBSスパークルの社員であっていわばサラリーマン監督。映画は5作目くらいになるのかな。TVドラマと映画を交互に撮っているという割と日本では珍しいキャリアの人です。「ラストマイル」はどうしてもTVドラマっぽい出来だったし、逆にドラマの「海に眠るダイヤモンド」は妙に映画的表現を意識しているような作品だった。(「グランメゾン✩パリ」は観てません)
でも本作はテレビだ、映画だという枠組みを超えてじっくり、しっとり楽しめる大人向けの長編作品になっていると思う。
タイムループものという前説は聞いていたが、この作品での時間移動は現在から15年前のある日ある時ある場所の一箇所にしか行けない。そこから未来の一つの事実を変えようと思ったらトライアンドエラーでいろいろやってみるしかない。そこで松たか子さん演じるカンナがワチャワチャするところが面白いわけだが、ちょっとそのエピソードが多すぎましたね。例えばロープウェイの誘導路にカンナが飛び降りるところ、そして駈が非常停止ボタンを押すところ、ここは未来の変わり方が他とは少し性格が異なるのだが、なくてもよかったと思う。首都高速を走るところ、車を降りるカンナがチェキで撮られるところ、ホテルの前庭で犬に絡まれるカンナ、かき氷の店に並ぶカンナと駈、こういったベースになるエピソードを少ない回数でもっとしっかり反復性をもって撮り編集していけば、筋も伝わりやすかったし未来が変わらないことへの不安でもって観客を次の見どころに連れて行く事ができたのにね。これは演出の力不足と、坂元裕二脚本を縮めることができなかった力関係?の問題だと思います。坂元さんの脚本は良いのですが常に2時間を楽に超える尺を要するようです。やはり「怪物」の是枝裕和くらいの貫禄が説得に必要になるんでしょうか?
最後に松たか子さん。45歳の彼女は十分魅力的です。ただ20歳代のカンナまで演じさせるのはちょっと気の毒だったのでは?そのシーンになるとメークや照明はもちろん、シーンの長さまで制約を受けているようだった(長いと保たない)韓国映画の「建築学概論」のハン・ガインとペ・スジのように、女優を二人起用することも考えたほうがよかったのでは?