「圧巻」ファーストキス 1ST KISS Alejandro Gillickさんの映画レビュー(感想・評価)
圧巻
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2025年暫定トップの傑作
坂本裕二による脚本の完成度がとんでもない域に達してる
中盤までは、15年前の夫・駈との関係を深めていく過程をコミカルに描きつつ、終盤のソファの会話シーンなど、シリアスな対話での台詞はとてつもなく巧みで、観客の涙腺を容赦なく襲う
特筆すべきは細かい部分の小さな演出
言葉にしづらい二者間の価値観の距離感を繊細に表現した柿ピーや、度々ソファによって表現される2人の心の距離感がうますぎる
四宮秀俊による撮影もまた間違いなく今作を傑作たらしめる要因の一つになっている
例えば、行列に並ぶ2人の間にピントのズレでボヤけたロープウェイを映しつつ、カンナがロープウェイを指差すシーンでは実物をもう一度見せるのではなく、ピントを調節してロープウェイの看板を見せるテクニックであったり、自分と結婚させないことが駈を救う唯一の方法だと悟ったカンナが、駈と過ごした部屋を名残惜しそうに見渡すシーンでは、部屋を映すのではなく(最終的に部屋も映るが)カンナを映したショットを長くことで、よりカタルシスを生んでいる
印象に残っているのは、終盤でカンナが駈をホテルの庭から見上げるカットが、ビッグフィッシュで花畑に佇むエド・ブルームに重なるシーン
構図が重なるのに相反して、置かれている状況が真逆なのが絶妙に上手い
他にも音による表現や、俳優陣の繊細な演技など、褒めるところを挙げればきりがない秀作であることは間違いない
また邦画の新しい名作が生まれた
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