「松村北斗は素晴らしい」ファーストキス 1ST KISS ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
松村北斗は素晴らしい
とてーも楽しかったし泣けもする。坂元裕二のタイムトラベルラブコメみたいな感じなので久しぶりにワクワクしながら映画館へ。
タイムトラベルものはタイムトラベルものの縛りがあり、ひとことでいうと「ルール」がどう示されるのかにある。なるほど、首都高の事故、、そしてここが時空の歪みだと知り、何度でもここに突っ込んでゆく松たか子。ここはかなり省略されてるのだけど、ここら辺をもう少し丁寧にやっても欲しかった。そして、ここがどこで、どうやって戻り、つまりはなんなのかをもう少し考察もして欲しかったりもするが、、
まあかなりゆるめのルールが出てくるのだけど、トラベルした場所が別れもし、死別もした旦那との出会いの場所。冷え切った夫婦仲かつ死別という状況からのタイムトラベルなので、当然ながらその反対に向けてドラマが加速する。つまり、惚れ直し、救いたい、と思うことでエンジンがかかるが、、
いちばん泣けたのはやっぱりその帰結部分で、自分の運命を知った旦那(松村北斗)の悟りみたいな部分。
救えるかどうか、という物語上のクライマックスに、見事に今を生きる、ということの大切さにジーンとなる。ホームに落ちた子を迷わず救うというので、思わず横道世之介的な(なんとかく髪型も、似てる、)旦那のかけがえのなさが愛おしい。
実は冒頭の転落のスローモーションと死人のナレーションという、サンセット大通りの発展系みたいなはじまりがすごくいい。そしてタイムトラベルのこれからの奮闘ぶりを部屋に付箋で立体的に見せるのもがんばってる。細かいマニアックなキャラクターの嗜好性をめぐる会話も楽しい。松たか子の若い日メイク?、松村北斗の年取った腹回りなどもよく、かなり満足するのだけど、『花束みたいな恋をした』もそうなのだけど、この脚本、もっと面白くできるだろう、というのが今回も。
出会いの場所のトンネルからのホテル、もうそこがすべての映画なんだからなんでもっと美術的にうまくいけないのかなとか。タイムトラベルとホテルといえば『ある日どこかで』という超名作があるが、犬に絡まれる松たか子は面白いのだけど、あの斜面含めて空間に趣がない。情緒がない。かき氷も。言ってはなんだけど、あらゆるテレビっぽい安っぽさが勿体ない。