「自分の長所と弱点を知ることで、印象というものはいくらでも変えていける」ベルナデット 最強のファーストレディ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の長所と弱点を知ることで、印象というものはいくらでも変えていける
2024.11.13 字幕 MOVIX京都
2023年のフランス映画(93分、G)
実在の政治家ベルナデット・シラクの政治活動の一部を描いた伝記コメディ映画
監督はレア・ドムナック
脚本はクレマンス・ジャルダン&レア・ドムナック
物語の舞台は、1995年のフランス・パリ
大統領選を控えていたジャック・シラク(ミシェル・ヴィエモルズ)とその妻ベルナデット(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、堅実な選挙活動が実を結び、晴れて大統領に就任することになった
エリゼ宮殿に移り住むことになった夫妻は、執事ジャッキー=ピエール(スカリ・デルペイラット)たちの世話になりながら、選挙参謀のドミニク・・ド・ヴィルパン(フランソワ・ヴィンセンテリ)、ダビド・ドゥイエ(ヴィクトル・アルトゥス・ソラーロ)たちとともに今後の戦局の話をするミーティングルームになっていた
ジャックとベルナデットには二人の娘がいて、姉のロレンス(モード・ワイラー)は病気のために表には出ず、妹のクロード(サラ・ジロドー)は父の個人顧問として、イメージ戦略を担っていた
また、ベルナデットはコレーゼ県の県議を務めていて、この地区に高速鉄道を伸ばしたいと考えていた
夫も党を上げてバックアップをするものの、その政策はあまり動きを見せなかった
物語は、ジャックのイメージアップのために、大統領夫人のイメチェンを図ろうとするところから動き出す
クロードはベルナール・ニケ(ドゥニ・ポタリネス)を担当に配し、彼は「現在、どう見られているか」という調査を始める
ベルナデットは「気難しい」「古めかしい」「頭が固い」などのネガティヴな言葉が並んでいることにショックを受ける
そこでベルナデットは、慈善活動に著名人を配するとか、若者ウケを狙うなどの方策を打ち出し、さらにファッションデザイナーのラガーフェルド(オリヴィエ・ブライトマン)までも参戦してくる
今風のファッションに身を包み、行く先々で注目を集めていくスタイルを取ることで、世間の印象は変わり、とうとう国民の支持率が71%まで上がってしまう
だが、夫はそれを認めることもなく、政治から阻害しまくるのだが、何度も状況を見て予測を的中させ、無視できない存在となってくる
そして、2001年の大統領選で決定的な事態が起こった
1回目の選挙で極右が伸びると断言したベルナデットは当初は笑いものになったが、極右の躍進によってルペンとの一騎打ちになってしまう
ジャックはベルナデットの意見を組み入れて、右派を取りまとめることになり、それによって得票率81%の圧勝を果たした
だが、その作戦はかつてジャックを裏切った右派のニコラ・サルコジ(ローラン・ストッカー)を底上げしてしまう
彼の人気を無視することができなくなってきたのだが、そんな折、ジャックは脳卒中で倒れてしまうのである
映画は、政治的なものは史実ベースで、プライベートな部分にフィクションがあるように思えた
運転手の告発とかは本当(名前は変えてある)で、ジャックの亭主関白的な部分は誇張されているように思える
これらは、女性が表舞台に立てなかった時代を強調し、その変化がここで現れたと印象づけるものであって、そのメッセージありきの演出になっていると思う
どこからがフィクションかはわからないが、こう言っておけば夫のメンツも潰れないと考えたのかもしれない
いずれにせよ、ある程度のフランスの政治情勢に関して知らないと楽しめない作品で、大統領選に関わることとか、議会がどうなっているのかなどはサラッとでも調べておいた方が良いと思う
映画内では、参謀に入っている人がどんな人で、この後にどのような政治家になるのかなどを知っておくことで、政局の面白さというものが味わえるかもしれない
個人的にはベルナデットの皮肉めいた余計な一言が面白くて、会話劇として楽しめた
ジャックやクロードが「そう言う言い方はするな」と言う一方で、ベルナールは「そう言うことは記者の前で言ってください」と言うのが象徴的で、うまく時流に乗るには、何が武器で弱点なのかを見極めておくことが重要なのだろう
極右の躍進を地方議会の動きから読むベルナデットは相当な政治家であり、最終的にその意見を取り入れたことが勝利に繋がっている
中央にいるだけではわからない動きというものこそ、国政にとって必要なものであり、そういった政治的なメッセージも込められていたのかな、と感じた