「群像劇が収束していくのが気持ちいい」ゼンブ・オブ・トーキョー ママひろさんの映画レビュー(感想・評価)
群像劇が収束していくのが気持ちいい
日向坂46四期生の11人がそれぞれの思惑を叶えるために、4つのグループに分かれて行動する群像劇から始まる。途中からそれぞれの人物の特徴や行動が別のグループに影響を与えていき、それが最後に桐井智紗(渡辺莉奈)の目的を叶えるために全員集まって協力する、という青春ストーリー。
序盤に「この人はこういう人でこんな目的を持っているんだな」という説明的パートで得られた情報が中盤〜終盤にかけて「この子の行動がここにつながってくるのか!」「この子の特徴がここで生きてくるのか!」とグループ同士のクロスオーバーがパズルがハマっていくようで見ていて非常に気持ちが良かったです。
特に満武夢華(平岡海月)が「プライズクイーン」と呼ばれるほどのクレーンゲームの腕前であることが物語のキーの一つであるように思いました。予告の画像で説田詩央里(石塚瑶季)がクレーンゲームに挑戦している画像があったこと、満武のスタンプラリーポスターが説田と一緒に池袋に掲出されているのがどうにも謎だったのですが、本編を見て謎が解けました。満武がクレーンゲームの腕前を披露するために取った景品も終盤の重要なキーアイテムとなり「ここでそれを活かしてくるか!」と感心しました。
演技においては辻坂美緒(竹内希来里)と羽川恵(藤嶌果歩)のパートが一番自然に感じられました。言い争っている場面のお互いを煽るシーンなどが特に表情もよく、役をモノにしているなと思いました。
笑えたというところでいうと花里深雪(平尾帆夏)、枡谷綾乃(小西夏菜実)、満武夢華(平岡海月)の下北沢のシーンでしょうか。オタクであったことを隠してクールな1軍を演じているのが下北沢にきてどんどんボロが出てしまい、視聴者目線からは「絶対来たことないだろ」というのがバレバレなのですが、花里はピュアすぎるが故に枡谷が自白するまで全く気づかないズレっぷりが下手な展開ながら非常に面白く、このパートはあちこちから笑い声が萌えれいました(トイレのシーンなど特に笑)。
Conton Candyの「急行券とリズム」も映画に素晴らしい花を添えてくれています。全体としてノスタルジーを感じさせる音作りの中で、サビのリズムが青春の疾走感を思い起こさせこの映画にとてもマッチしていると思いました。
ラストでおそらく修学旅行から1年ほど経って卒業式のシーンに移ります。笑いながら楽しく見てきましたが、池園優里香(正源司陽子)のモノローグで自分の学生時代を思い出して思わず泣いてしまいました。ファン向けの映画であるとは思いますが、学園もの・青春ものが好きな人は楽しめると思います。