今年382本目(合計1,474本目/今月(2024年10月度)33本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
今週末(厳密には木曜日まで)のシネマートさんで新作といえる本作ですが、極端にマニアックというか、もう閉館が決まってから「趣旨のよくわからない作品」が増えたのかな…という気がします(閉館が決まっている前提で、あれこれチョイスする意味がないため)。
この映画もここの採点が物語っている気がします。
内容としては「名前貸し」という、一見ありそうでなさそうな、でもありそうなそんな内容です。ここから発展するトラブルを描いた映画です。この点はまぁ盲点というか、「そういう着眼点もあったか」という「気づけそうで気が付けない」ところに着眼点を置いた点はまぁ良いかなと思います。
問題点は2つで、1つは多くの方が書かれている通り、話が飛び飛びに過ぎる上に、野球協会がどうだの中国の私営刑務所(って設置できるの?)がどうこうというヘンテコな話に飛びまくる点で、話の飛び具合がすごいのでついてくのが大変です(ちなみに韓国にも「野球」はあり球団もリーグもあります)。
2つめは、法律系資格持ちの感想というところになりますね。
この映画、裁判所が2回出てくるのですが(詳細については採点欄ほか)、その部分の説明がまったくない上にこの理解はかなり難しいです。前者はある程度韓国映画を見ていれば「日本との違い」で触れられることもあるので知っている方も多いと思いますが、後者は何がどうなってるんだろう??レベルで、ここで詰まる方が続出するんじゃないか…といったところです。
さらに、いわゆる「名義貸し(名前貸し)」を扱ういわゆる「空会社」を扱うために、日本でいうところの商法会社法/商業登記法のような展開になりそれを想定できる字幕も「ある程度」でるのですが、なぜか法務局(日本相当)は出てこず相手はずっと市役所か何か…。このあたり、日韓で制度が違うんでしょうか…(登記を行う専門職は司法書士という専門家の方です。行政書士の資格持ちはある程度理解できるにとどまる)。
ちょっと、うーん。どうでしょうか…。
シネマートの最終週を飾る「新作」の扱いとしては、作品がヘンテコすぎる(チョイス基準も謎…)というのが本当に残念です(映画もわかりにくし、チョイスしたシネマートもよくわからない…)。
採点は以下まで考慮しています。
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(減点0.5/2回出てくる「裁判所」の意味が分かりづらい)
この点については、行政書士の資格持ちは見抜いてくるし理解はできたので後述はしますが、かなりの方は特に「後者」(2回出てくるうちの2つめ)のほうで理解が詰まると思います。
(減点0.3/ストーリーが雑で理解が困難)
このことは他の方(PROレビューアの方含め)も書かれているので、程度の差はあっても理解しきるのはかなり困難かなぁ…といったところです。ただ、上記の「裁判ネタがわかりづらい」点とは分離されている(裁判所ネタは最初と最後にしか出ない為)ので、「わかりにくい」点が「裁判所ネタではない」点がまたネックで(そこが理由なら、その説明不足ですよに吸収できるが、できない)、VOD等で何度か見るのがもはや前提のような気がします。
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(減点なし/参考/韓国の裁判制度・その1・離婚熟慮期間)
韓国では協議離婚においては家庭裁判所が必ず入るようになっており、そこで2人の言い分を聞いた後、1か月~2か月(子どもの有無、財産等で異なる)ののち、再度当事者の話をきいて「考えは変わっていないか?」という点を確認して最終的に許可する制度になっています。本来は婚姻離婚は身分行為で裁判所がかかわるべきかという問題もありましょうが、どの国でも(日本も含め)一時の感情のもつれからいきなり離婚する類型はどの国でも存在しますから、このような制度があること「それ自体」は一つの国の政策として理解はできます。
ただこの点は字幕も何もないので(せめて「熟慮期間」や「家庭裁判所」という字幕は欲しかった。韓国語が読み取れるか聞き取れるなら何とかなるが…)といったところです(一方で、この「熟慮期間」を扱った韓国映画はいくつかありますので(2024年でもほか何作かありました)、知っている方は知っているのではと思います)。
(減点なし/参考/韓国の裁判制度・その2・行政法院)
ラストに出てくる、主人公が「ある裁判」を受けるシーンです。
日本は日本国憲法の定めるところで最高裁を頂点とした一つの体系しか持ちませんが、日本が帝国憲法を定めるときに参考にしたドイツ・フランスのうち、特にフランスでは「民法裁判所」「商法裁判所」「行政裁判所」…と特に細かいです。特に「憲法裁判所」といって自国の憲法の合憲違憲のみを争う裁判所だけを別に用意している国も多いです。
韓国は日本とフランスの「ややフランスより」で、「一般の裁判所」「行政法院(行政裁判所)」「憲法裁判所」の3類型があります。ただ、この映画の展開としてなぜ主人公が行政法院(行政裁判所)に赴かなければならないのかは理解が難しいです。
この点、韓国は「裁判制度」いう観点ではフランス式を取り入れましたが、学問形態としての「行政法」は日本の研究の傾向をかなり受けたので(そして同じように、日本と同じように韓国にも「行政書士」という資格はあります)、この映画内で登場する「行政法院」は、日本でいう「行政事件訴訟法」専門の裁判所と言え、実際の運用もそのようになっています(隣国でもあり、法体系も似るので、隣国とはいえ制度紹介や判例紹介等も各都道府県の行政書士会のサイトなどで見ることができる)。
その理解でいくと、映画内の字幕は完全にぬけぬけなのですが、おそらく「取消訴訟に義務付け訴訟を併合提起したのか」と思われるところ(詳細ネタバレ回避)、この部分の説明が本当にないんですよね…(ただ資格持ちは解釈上、色々な消去法でそうとらえるしかない。併合提起である点も映画の展開からもわかる。なお、明らかに原告適格や訴えの利益の問題はクリアされている(=論点ではない))。韓国にも行政書士の資格があることは前述しましたが、韓国の中高では行政事件訴訟法(日本相当)の初歩等を学習するんでしょうか…(韓国国内でも理解しがたいのでは?)。
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