江里はみんなと生きていくのレビュー・感想・評価
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世界の誕生
生まれながらにしていわゆる人並みの事が成長しても出来ない状態にある子をもつ親がどのような人生を選択するのか。どのように生きていくのか…。江里さんの存在が人をうごかし意思決定させる。周りの世界が動き出す。適切なケアがなければ死に至ってしまう状態の江里さんを支える母とケアスタッフ皆が成長していく。江里さんも好きな絵を描き、リサイクルショップで働くことにも挑戦し新しい世界が出来ていく。小学校時代の担任の先生は障害をもつ江里さんを中心に教室を動かすという考えを実践し恐らく健常者だけでは思いもよらない助け合い共に生きる幸せの感情が幼少期のそのクラスの生徒たちには生まれただろう。このこと一つとっても江里さんの存在から新しい世界が生まれたのである。
「指談」という指を使った意思伝達方法があることをこの作品ではじめて知った。
重い障害者は誤解されることも多いと思うが、言葉を発せられなかったり、表情で気持ちをうまく表現できなかったりしても頭脳は明晰であることもあるわけだ。映画後半であるように江里さんも「指談」で意思疎通できるのである。このあたり江里さんの障害や彼女の内的な部分をもっと知りたい。画家になりたいほど好きな絵に対する気持ちのことももう少し知りたかった。
上映後、寺田監督と対談したコミュニケーションを専門とする先生は観るほどにコミュニケーションの映画だとそんな話をしていたがその分野の先生からみるとそう見えるのかなと思う。ただ死亡率の高いという重い障害の子を支えて生きていくことが描かれたこの作品は何かもっと深い人間のありようのようなものを内含している気がしてならない。
「生きることの意味を問うのをやめ、わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知るべきなのだ」E・フランクル(池田香代子訳)の言葉を思い出す。
この作品を観て江里さんと母、ケアスタッフの皆とももう他人ではない気がした。
寺田監督も30年前より一段と「輝き!」を放っていた。
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