劇場公開日 2025年2月21日

「ユダヤ人建築家ラースロー・トートの半生を通してアメリカの闇が見え隠れする秀作」ブルータリスト ノブさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ユダヤ人建築家ラースロー・トートの半生を通してアメリカの闇が見え隠れする秀作

2025年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

初のIMAX鑑賞です。なぜ今まで見てこなかったかというと料金が高いからです。そしてなぜこの作品をIMAXで見たかというと都合の良い時間はIMAXしか上映がなかったからです(笑)
エイドリアン・ブロディのアカデミー主演男優賞受賞に納得の作品でした。215分の長尺に尻込みしてましたが、途中休憩が15分あり、内容的にも映画に没入でき上映時間は全然気にならなかったです。リアル・ペインもそうでしたがこの作品もホロコーストを内包した映画でした。なんだか最近多いように感じます。

1951年ホロコーストを生き延びたユダヤ人建築家ラースロー・トートはブダペストからアメリカに渡るが、そこは決して安住の地という訳ではなく苦難の連続で…というお話で、昔から建築に興味のあった私には興味深いお話でした。
入場時に「建築家ラ―スロー・トートの創造」というリーフレットをもらったので、てっきり実在する建築家かと思ってましたが上映後調べてみると創作だったことに驚かされました。ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展とか実際にある祭典まで登場するので、リアリティを追求する徹底ぶりがすごい。それに加え、エイドリアン・ブロディの迫真の演技。
映像美も随所に感じられました。画面構成など美術センスも良い映画だなあと感じました。
大理石の白い採石場のシーンも印象に残りました。

ラースローは結局実業家ハリソンに振り回され続ける訳ですが、この富と権力を振りかざす嫌な人物がまるでアメリカを象徴するかのような人物として描かれているのですが、昨今のアメリカとシンクロするようでそれはそれで恐ろしいと思いました。
ホロコーストの影響で骨粗しょう症になり歩けず痛みの発作に苦しめられる妻エルジェーベト。
話すことができなくなってしまった姪のジョーフィア。
そしてラースローはドラッグ中毒から抜け出せない。
しかし、ハリソンにとっては所詮他人事なんです。
彼にとっては富と権力と名声が大切なのであって、それ以外には関心がない。
逆に鉄道事故などでそれらが脅かされたときには平気で雇い人をクビにし、とにかく自己保身が最も重要といわんばかりの行動をみせる。
もっとも許せないのはラースローの才能に嫉妬し支配欲に駆られ〇〇〇するところです。
妻エルジェーベトがハリソンの屋敷に単身乗り込み告発する場面は見応えありました。
そして行方不明になったハリソンを捜索中にラースローの設計したコミュニティセンターの教会の天窓から月の光が差し込み十字架が映し出されるという見事なオチ。
大作だけあって中身の濃い映画でした。これはこれで一大叙事詩ですね。
しかし、実業家ハリソンという人物を通して現在のアメリカの闇が見え隠れしてしまうとは、結局のところそれが主題なのかもしれませんね。
今のアメリカは決して自由の女神に象徴されるような自由な国ではないのだと。

ノブ
ゆーきちさんのコメント
2025年3月9日

共感ありがとうございました。

長い作品だから、料金の元は取れましたか?w アノーラにしても、金持ちに振り回されるけど、強く生きてやるぜ!的なメッセージ、流行ってるんですかねwww

ゆーきち
talismanさんのコメント
2025年3月6日

美意識高くスタイリッシュな映画で、同時に反トランプ映画だったと思います。が、ベネチア・ビエンナーレでの姪のスピーチの最後の言葉にはあまりにシオニズム全開でがっかりしました

talisman