「映画として完璧」ザ・ルーム・ネクスト・ドア くーさんの映画レビュー(感想・評価)
映画として完璧
どの台詞も聞き漏らしたくない、服やインテリア、背景まで含めたポストカードに切り取りたくなる画や、全ての色彩が美しい映画でした。
マーサとイングリッドの、善意だけで成り立つのではない、でも素直に正直に相対することができる関係が成り立つのはすごいと思った。
死が迫った友が明らかにまだ話し足りないのに「もう遅いから帰らなきゃ」といえる関係、できないこと、決心がつかないことになんで言えばいいかわからないと言い、YESと即答しないこと、
できる人には簡単なことなんだろうけど、空気読んで相手の望むことに沿おうとしてしまう自分にはとても羨ましく。
5年ぶりに会ったと言ってた気がしたが、あんなに距離を感じさせずに付き合えるのは、元々仲が良かった?昔同じ男と付き合った仲だから?
でも自分のあとにイングリッドと彼が付き合ったのはショックだったと言ってたし、何のわだかまりもなく仲良しこよしの関係、ではなかった気がした。
それなのに、最期に隣にいてほしい第一候補だったのに警察に話してしまう〈裏切り者〉よりも、この経験とマーサの残した言葉すら自らの内にとどめずに生業である“書くこと”に活かす気のイングリッドの方が、マーサの人生の一大事に寄り添っていて、不思議というか、観終えてから考えると、腑に落ちないような気もしないでもない。
でもそんな自分のなかに残った違和感は映画としての完成度というか、素晴らしさの前では軽いこと。
イングリッドの赤いバッグ、マーサの薄紫のニット、など、2人のファッションにも惹かれた。
中でも緑と赤の対比が美しく、2人の服だけでなく、2人で横たわったチェアなど、とても印象的で美しかった。
ダークレッドの口紅をたっぷり塗って、最期に纏うのはパキッとしたイエロー。
それまでのマーサにイエローの記憶はなく、それでも彼女の最期に相応しかった。
ひとりは嫌。
尊厳のある、静かな死。
なんでも話せる友がいなく、どこに行くにも一人の私は、死ぬとき一人にしないでほしいと頼める友がいること、それを叶えてくれる友がいることを、とても羨ましく思う。
THE DEADは実際にある映画なのだろうか。観たい。
雪の舞う、清冽な静けさの中で逝けたら。
コメントありがとうございます。
相手に合わせてあとからモヤモヤすることも多いですが、良い面もあると捉える視点が私にはなかったので、救われるような気がします。
引きずらずに楽しくやれるの素敵ですよね。
関東Bluesさんの物事の捉え方、前向きで勉強になります。
日本人はとかく、相手の心を読んで期待されているであろう答えを言いますよね。それはよく言えば相手を傷つけない為であり、悪く言えば悪くなりそうな雰囲気を避けてるような… でもそれは日本人の配慮でありいい所だと思います
おっしゃる通り、あの2人の正直な会話はいい。ちょっとあった後でも、ソファで寄り添って映画を観れるんですもんね。私も羨ましかったです。