花嫁はどこへ?のレビュー・感想・評価
全153件中、101~120件目を表示
インドの闇を照らす小さな光のような映画
インドの社会問題をエンターテインメント映画にして大ヒットを連発するインドの至宝、アーミル・カーン製作、元奥さんキラン・ラオ監督の本作。今回はインドの田舎村の若い女性を取り巻く問題を取り上げます。
幼妻、プール
新婚の彼女は新郎ディーパクさんに連れられ、はるか離れた新郎の村を目指し、列車の旅に出ます。車内にはたまたま複数の新婚カップルが。新婚の花嫁はみな赤いベールを深々と被り、顔を覆っています。女性の尊厳を守るためのベールは女性の自由を奪うものでもあります。プールはひょんなはずみでディーパクとはぐれ、一人見知らぬ駅に取り残されてしまいます。今更実家に戻るわけにもいかず、夫の村の名前も分からない。ああ、インドならありうるかも…。インドで迷子になったら死ぬかも…。若い女性が一人でいたら殺されちゃうかも…。スマホもないし連絡手段もありません。インドは治安のいい日本とは違います。もう生きるか死ぬかのピンチです。外では男たちがうろついており、彼女は駅のトイレに隠れて夜を明かします。そんな彼女は駅に住み着いた物乞いの二人組と売店のおばちゃんらに助けられ、命拾いします。まさに助け合い精神。捨てる神あれば拾う神あり。貧しいもの同士が助け合って生きる姿を見ていると、古き良き日本の姿や人情という言葉を思い出します。
売店で働く肝っ玉おばちゃん。彼女は暴力夫と別れ、貧しいながらも自立した生活を営んでいます。プールは彼女らとのふれあいの中で視野を広げていきます。母から仕込まれたお菓子作りの腕を発揮し、生まれて初めて自分の力でお金を稼ぎます。
もしディーパクと再会できたとして、駅に寝泊まりしたような自分を、新郎と家族は受け入れてくれるのか。プールさんの不安の種は尽きません。
新妻、ジャヤ
親の決めた裕福な相手との結婚が決まりましたが、本心では結婚なんかせずに大学で農業の勉強をしたいと願う彼女。彼女もまた新郎に連れられ列車の旅に。ひょんなことで新郎の元を逃げ出し、ディーパクの村へ潜り込み、偽名を使って村に居座ります。彼女の作戦はなんとか新郎から離れ大学へ行くこと。でも警察に身元を暴かれ、金目当ての結婚詐欺犯として留置所に入れられてしまいます。そして本物の新郎が彼女を迎えにやってきて、ジャヤに人生最初にして最大のピンチが訪れます。
プールは夫を支え、伝統に従って生きようとする、良妻賢母型の女性です。ジャヤは古い因習から逃れ大学で高等教育を受けることを望む、新しい生き方を模索する女性です。本作の脚本の素晴らしいところは、全く異なる2つの生き方を、どちらも肯定的に描いていることだと思います。二人の女性の間には対立や分断はなく、相互理解があります。日本のフェミニズム活動家の中には、自分の生き方を肯定したいために相手の生き方を否定するような言動をされる方がいますが、本作にはそんな人は出てきません。今後インドでも日本のように先鋭的なフェミニズム活動家が出てくるのか、興味深いところです。
二人の新郎
プールの新郎ディーパクは田舎の純朴な青年です。彼は良い夫代表です。ジャヤの新郎は金持ちの嫌な奴。ジャヤを殴りつけ持参金を奪い取ります。前妻は子供ができなかったために焼死しており、自殺なのか他殺なのかも分かりません。彼は悪い夫代表です。新郎たちのキャラクターはもう完全なステレオタイプで描かれています。インドの女性の運命は良い夫と巡り合うか悪い夫と巡り合うかで、大きく変わってしまうのでしょう。
警察官マノハール
賄賂は受け取るわ、暴力は振るうわ、まさに権力を笠に来た横暴警官です。ですが、ジャヤの真実、彼女は貧困から立ち上がる力と知性を兼ね備えた女性であることを知ったとき、彼はその権力を利用して悪い夫を退治します。この警官は善悪を兼ね備えた存在であり、ステレオタイプの夫たちに比べると複雑なキャラです。本作では非常に大事な役割を果たしています。当初アーミル・カーンが演じる予定だったそうですが、ラヴィ・キシャンのはまり役のようです。
本作ではインドの女性たちを取り巻く様々な問題が描かれています。親の決めた相手との結婚と持参金の負担。町へ出稼ぎに出た夫に会えずに笑顔を忘れた新妻。夫の写真もないため、彼女は自分で描いた夫の絵を大切に持っています。夫の好みの料理を作り続け、自分の好みを忘れてしまった女たち。ネットで「インド 妻 殺す」で検索すると、悲惨な記事が山のようにヒットします。『持参金が少なかったからと、夫の家族らが新婦を殺害する持参金殺人も相次いでいる。最悪期の2011年には年間8618人の女性が犠牲になった』という記事などを読むと暗澹たる気持ちにさせられます。本作はハートウォーミングのハッピーエンドで幕を閉じましたが、現実社会はどうなのか。現実社会の闇と貧困が深いほど、作り物である映画は輝くのかも知れません。戦後日本がそうであったように。その意味ではこれからもインドでは面白い映画が作られ続けることでしょう。貧困から立ち上がろうとする力こそ、面白い映画の原動力なのかも。そして本当の闇は娯楽映画で描くことなどできません。
本作では幼妻プールを演じたニターンシー・ゴーエルさん、ジャヤを演じたプラティバー・ランターさん、日本語字幕を担当した福永詩乃さん、3人の若い女性の才能が輝いています。中でもニターンシー・ゴーエルさんは本作でブレイクを果たしたそうです。youtubeチャンネルも登録者数59万人と大人気です。本作で演じた貧しく健気な幼妻役と華やかな現実生活との落差が楽しめます。夢を掴み大都市で西洋化した暮らしを謳歌するスターや富裕層たち。一方中世のような暮らしのまま置いていかれる田舎村の住民たち。インドって、大きくて複雑で面白い国です。日本のように簡単には西洋に飲み込まれることはないでしょう。
インド映画のなかでも控えめだが
映画で異国の文化、風習に触れる
映画の良さ、驚きの一つは、異国の文化、風習に触れられること。
韓国なら「年功序列」が根強いとか、主人公が死ぬ話が好まれる、とか、
中国なら、お墓に顔写真が貼ってある、とか面白いな、と思う。
で、本作。
ベールを被って取り違えられた花嫁が巻き起こす騒動を描いたコメディなのだが、
(ドコまで本当か分からんが)
ベール、異様に混み合う列車、ヒトも荷物も屋根に載せるバス、妻が夫の名前を呼ばない、持参金、警察へのワイロ、などなど、いろいろ出てくる。
でもそのうち、男尊女卑というか、結婚は親の言いなり、夫から妻への暴力が許容されている、女子教育の軽視といった、インドの抱える社会問題も出てくる。
それでもやはりコメディ。
最後に意外な人物による大逆転で観客を喜ばせてくれる。
見たヒトみんなハッピーな気持ちにさせてくれる素敵な映画である。
いいなぁ、この映画
いやあ、泣けた、泣けた。インド映画では「バジュランギおじさんと、小さな迷子」以来の大泣きだ。
2001年のインドで、嫁いでいく花嫁は皆、真紅のベールを深くかけて夫の家についていく、という風習がために、混雑した深夜の電車の中で起きてしまう二人の花嫁のまさかの取り違えとその後の二人の1週間の物語。
インド映画なのに、3時間ありません、(たったの?)124分です。インド映画なのに、踊りません。
ひたすら夫と夫の家に尽くすために行われる結婚。それを当然のこと、善なることとなされる家庭教育。その中で、自分がやりたいこと、できることに気づいていく女性たち。素敵な映画でした。
-----ここから、ネタバレ含んじゃうので、未見の人は、観てからまた来てください-----
「見つけてもらってありがとう」「(自分を)見つけさせてくれてありがとう」というセリフに象徴される主人公二人の対比は見事。さらにその両方に明るい未来がイメージできるエンディングは秀逸!!
そしてもう一人の主人公である夫の妹、重要なバイプレーヤーたちである夫、警察署長、駅の皆。全ての人が適度に混じり合って、見事な「お話」を語り終えてくれます!!
おまけ1
見つけられる花嫁プールに、「ちゃんとした女性は夫と一緒に帰省するものなのに( 一人で)実家に帰って大丈夫かしら」といったその時代の文化風習を語らせ、一方で自分を見つける花嫁ジャヤには「有機農法にこれから変わっていくインド」を語らせ、さらに既に妻となっている妹が、絵を描く才能を開花させることを小さな例で語っている、この組み合わせが実にいい! すごくわかりやすい!
おまけ2
「女にとって男は必要ないんだよ。それに気づいちまったら、男にとったらまずいだろ」
ホントに。(笑)
おまけ3
オープニングでわざわざ表示された「この映画は、誰のことも悪く言うつもりはない」は、誰のためなんだろと思いながら観ていたが、きっと警察のことなんだね。でも、ちゃんと最後に仕事したし…
文科省推薦映画にすべし。(゙ `-´)/
インドの女性を応援したくなる映画
四半世紀前の設定のフィクションだが、インド、特に農村地域の女性の不自由さはいまだに映画で描かれていた以上なのかなとか思っている。
しかしながらこの類いの映画の上映が国内で許されているということからも、少なからず状況は変わってきており、インドの全ての女性の自立が当たり前になる日が近いうちに来るのかも、そんなことをつい思わせる作品だった。
2人の10代の花嫁は偶然をきっかけに、1人は初めて家族以外の人間に触れ自ら働き収入を得る喜びを知り、1人は教育を受けるためのチャンスを得る。
彼女らを対極にいる存在にせず、それぞれが違った形で一人の自立した人間として生きて行こうとする見せ方が最高に良く、それを色んな思惑がありながらもサポートしてくれる温かい「赤の他人たち」のことも大好きになってしまう。
おじさんにとって、観終わった後に爽やかに泣けるデトックス効果抜群の作品だった。
これをあり得ない設定の現代の寓話で終わってほしくないと心から思う。
彼女達にエールとチャンスを!
花嫁は夜汽車にのって♫(はしだのりひことクライマックス)
取り違えられた二人の花嫁の話だが、間違えて連れられた女性、置き去りにされた女性、それぞれがどうなるの?と並行して物語を牽引していく展開がうまい。もともとヴェールで顔を覆う習慣に起因することから考えれば、ニカブやブルカを着用するイスラム圏の女性の方がもっと頻繁に起こりそうだ。ジャヤの挙動不審な行動も巧妙なミスディレクションになっている。
ダウリー(持参金)の問題も影を落とし、金額への不満から夫の家族に花嫁が焼き殺されるという悲劇もちらっと出てくる。持参金殺人は多い年で年間8000人に及ぶともいう(最近見た別のインド映画でも女性差別の片鱗が窺えた)。全体からすればコメディーのように見えるが、根底には女性の自立という骨太のテーマがある。
ボリウッド映画のルーティンの体裁ではないものの、相変わらず甘ったるい歌が唐突に入ってくるのには閉口する。昔の日本の歌謡映画みたいだ。
女優は二人とも知らない人だし、あまりキャリアもないようだが、インド映画を見ていると彼の国には超絶美人がごろごろしているらしい。
インドの農村は、まだこんな状態だったの?
向日葵の約束
インドの文化や価値観が分からないこともあり、飲み込みづらい部分はあったが、なかなか楽しめた。
取り違えに関しては、(あんなにみんな同じベール被るのかは不明ながら)自然な流れ。
靴は見えなかったが、夫側の顔やスーツも似通ってたし。
話はディーパク、ジャヤ、プール、警部補(署長じゃないのね)の視点で描かれる。
分かり易いクズであるジャヤ側の夫は一旦フェードアウトし、悪者ポジションと察する。
流れ自体はよいのですが、中盤がちょっと退屈。
挿入歌で心情を語りつつダイジェストを見せる演出は特にインド映画では定番ですが、サスガに多い。
一方は村の中、もう一方は駅の中がほとんどなので画的な変化にも乏しい。
コメディ部分もクスッとする場面は多いがやや弱かった。
ディーパクのちょっとした一言からプールが警察を嫌がったりなど、細部の構成は上手い。
ジャヤの秘密から夫婦の再会の流れは爽快。
警部補が急にいい人になりすぎだけど、賄賂はがっぽり懐に入れてるからギリ許容範囲かな。笑
煩くない程度に社会的なテーマが入ってるのも良い。
ジャヤの将来の旦那候補の匂わせも丁度いい。(通訳からの「お前も行け」は笑った)
視点が分散したぶん、関係性の掘り下げが浅めなのは残念。
特にディーパクとジャヤはもっと絡んでほしかったし、議員関連と足が無いフリをしてた男は不要では。
ただ、勧善懲悪かつその他のキャラが全方位ハッピーエンドな結末は後味よく素敵です。
歌って踊っては無いけど面白いっ❣️
歌って踊って大騒ぎの中に笑いあり涙あり感動ありってのがインド映画だと思ってたので、歌って踊ってが無いのは少し拍子抜け😅
でもストーリーは充分面白く、ちゃんとハッピーエンド…うん…こうゆうインド映画も良いかも🇮🇳✌️
気分スッキリ。
女性の自立と友情・連帯に感動してしまった
インドって国はカースト制度(現在表向きには禁止されているようだが)もあって、様々な差別が根強く残る国というイメージがある。当然女性も虐げられてきたイメージ。だから、ベールを被った花嫁を間違えて連れて帰ってくるという本作の予告編を見て、女性の自立が絡んだ物語であることは想像できた。
実際に本編中のセリフで色々と驚かされる。夫に支払われる持参財なる制度、妻は夫の名前を呼ばないという礼儀、子どもが産めないからと焼かれてしまった女性(あくまで疑惑だが)。女性を所有物、家事担当者として扱う男たちの姿が描かれる。そこに貧困が絡んでくるのもインドっぽいところ。
やはりメインは2人の花嫁。彼女たちが何を考え、どんな行動を取り、どう変化・成長していくのかがポイントだ。そして、そんな彼女たちに周りの人たちがどんなサポートをし、どんな影響を与えたのかも大きな見どころ。想像してはいたが、現実に対峙しそれぞれのやり方で自分を変えようとする姿に感動してしまった。女性の自立を描いた物語であることはわかっていたが、女性同士の友情や連帯がほんのりにじみ出ていて物語の深みを感じる。最後には彼女たちを応援している自分がいた。まんまと製作者の狙いにはまってしまったってことか。でも、本当にいい映画だった。
すべての女性の選択を
めちゃくちゃ良い映画!!
初めてのインド映画でした。
予告を何となく見てヒロインの花嫁二人が伝統衣装も相まってとっても可愛くて、華やかで…花嫁を取り違えてしまうという導入も面白そうだったので観に行きました!
かねてよりインド映画は歌って踊ると聞き及んでいたのですが、今作はそこまでの演出はありませんでしたのでインド映画の中ではかなりマイルドな作品だと思います。
でも所々で入る音楽やジョーク?のノリで十分インド映画の空気を感じることが出来たので初インド映画としては私はこれくらいでちょうど良かったなと思います。
とにかく花嫁のプールちゃんが可愛いー!!声の清涼感が女神。前人未踏の深い森に佇む澄み切った泉の声してる笑
まさに名前の通り花のような可憐な少女。
もう一人のジャヤさんの声もハスキーでこう…芯のあるしっかりした女性なのが表れてる凛とした良い声!!私のお姉ちゃんになってくれ。
ジャヤさんと仲良くなる似顔絵上手い女の子の声も可愛かった!
声フェチなので彼女たちが喋るだけで耳が幸せでした笑
ジャヤさんは最初から何か訳ありで行動しているのが分かるし目的があって行動出来るしっかりした女性に見て取れるので種明かしを楽しみに見てられるのですがプールちゃんの頼りなさときたら…!もう〜〜〜お母さんみたいな気持ちになってしまう!笑
良い人たちに巡り会えて良かった…。
いや本当にプールちゃんが頑張ってる姿見て泣いちゃったよおばちゃん泣
きゅんきゅんする場面もあって、プールちゃんサイドについてはひたすら頑張れ…!頑張れ…!って応援しまくってました笑
ストーリー展開も起承転結が分かりやすく見やすかったし観終わった後は清々しい気分になれました。
この映画はフィクションですけど、未だインドに残る男尊女卑や男女格差の現実が少なからず(大いに)描かれていて、それらの問題について観客に考える機会を与えるだけでなく、ちゃんと一本の映画作品として満足感ある仕上がりに昇華させていることが素晴らしいと思います。
文化というのはその土地に根付いているものなのでそれを変えようと思うと相当時間もかかれば何かしら、それなりの犠牲を伴うものだとは思います。
でもいつかそれぞれが、それぞれの望む道を自由に選択し歩んで行ける世の中になると良いなと…無責任かもしれませんがそう願わずにはいられない映画でした。
それにしても屋台のおばちゃん一味良い人たちすぎる…私もお手伝いさせて下さい…!
ダンスの無い、ハートフルなインド映画
素朴で優しい人々が、不安で一杯の花嫁、花婿を助けてくれる。コメディパートを担う警察署がいい味を出し、心温まるテイストに仕上がっている。時代設定は古いが、古臭い感じがしないのは、カースト制度の国で、貧富の差や、女性の役割生き方が極端に決められてしまっていた時代に、それでも人々が幸せを求めて自分なりに生きている姿が、自然に描かれていたからか。素直に面白かったと言いたい作品。
花嫁取り違えた!
全153件中、101~120件目を表示