顔(イェン)さんの仕事のレビュー・感想・評価
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“顔”見世興行
今関監督のデビュー作に十代で出演していた三留まゆみも、もう還暦超えか。キネマ旬報ベストテンの選評とかは読んでいたけれど、意表を突く起用だ。監督とはまだ接点があったのかと何だかしみじみした。彼女もイラストを描いているので抜擢されたのかもしれない。
確かに手描きの映画看板というのは久しく見かけなくなった(岐阜のロイヤル劇場が少しその面影をとどめているが)。昔看板屋のアルバイトをしていた時に、先輩方が下書きもせずにいともたやすく文字を書いていくのに感心した覚えがある。「プレバト!!」のスプレーアートなどを見ていてもわかるが、巨大なキャンバスを相手にするのは通常の絵画とはまた違った技術が要求される。
この映画に出てくる顔さんも左手で資料を持ったまま、右手で色をこねてためらいなく筆を進めていく。前の絵を消さないまま塗り重ねていくのにも驚かされた。カメラが至近距離に寄っても、すぐ脇で三留らがわちゃわちゃ話していても我関せずという感じ。
監督は2019年に台湾が舞台の「恋恋豆花」を撮った時に着想を得たのだろうか。市井に埋もれてしまいがちな職人に光を当てた、ささやかな一編。
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