「全体として難が多すぎてどうにもおすすめできない(キノシネマ心斎橋は先行上映につきネタバレ扱い)」ありきたりな言葉じゃなくて yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
全体として難が多すぎてどうにもおすすめできない(キノシネマ心斎橋は先行上映につきネタバレ扱い)
今年441本目(合計1,532本目/今月(2024年12月度)20本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
シネマートからキノシネマ心斎橋さんになった同映画館ですが、韓国映画も扱う一方、本作品のように、大阪市でいえばテアトル梅田さんが扱いそうな映画も扱うので、テアトル梅田と旧シネマートを足して2で割ったような映画館ですね(この作品は実はキノフィルム扱いではないのも謎)。
ワイドショーの脚本家希望の主人公が、女性と性行為をもった?という疑いから、それを聞きつけた男性がいきなり示談書を強要し、会社に迷惑がかかるかと思えば、男性が実は確定的な証拠を持っているのではなく、女性にも秘密があった…という趣旨のストーリーです。
個々述べたいことは理解はするものの、一応にも法律系資格持ちが見ると内容が無茶苦茶なので何を言いたいか理解できず、誰も「最適解」を取っていないために極論10分で終わるストーリーが120分に「引き延ばされていて」(ただ、この手の映画で弁護士なり行政書士なりを出して正しい法解釈を示しておしまい、にすると本当に10分で終わるので、それはもう仕方がないと思います。実際、弁護士なり行政書士なりが「ちゃんと」出てくる映画(いわゆる法廷ものだったり、外国人取扱いだったり)もあるので、そこを「極端に」いうのもまあフェアではないかなと思います(「上映時間:10分」なんていう映画はさすがに扱いにくいので)。
ただまぁ、もうストーリーの展開が驚くほど変なので、「何をしたいの?」すら不明で、この部分はどうかなぁといったところです。
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(減点1.8/個々のストーリーの展開が無茶苦茶で理解が混乱する)
この点は、むしろ資格持ちがきちんとした解釈の元で見るとおかしくなるというだけの話で、民法も刑法も考えない世界で見るならまぁ混乱はしないんでしょうが…。かといって、この映画に何らか「テーマ性」があるとも思えず(仮にあるとしてもストーリーが変すぎておえなくなってしまう。一応は、テレビ局などの「報道の自由」や「表現の自由」ほかの憲法論という解釈もできるが。憲法論で取るならそこか)、こりゃ厳しいところです。
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(減点なし(まとめて1.8の扱い)/参考/各登場人物について)
・ 「被害を受けた」という女性について
まず、理由が何であれ酔っぱらっている人をホテルまで連れて行った時点で事務管理(697)が成立するため、事務管理の管理者は本人の意思がわかるか推知できる場合、それに従う必要があります(通常の事務管理)。
かつ、映画内で女性が行っている行為は明確に「詐欺」です。
・ 脅迫してくる男性について
女性との間で「そんなトラブルがあったんだ」という点については、通謀虚偽表示(94)までは感じられないものの錯誤(95)は存在します。そして、そもそも論として、事件性のある事件につき、示談書を第三者が割り行って書くように言えるのは弁護士だけです(いわゆる非弁行為の論点)
※ 逆に言えば、低額の万引き等で双方が納得している状況ではそうした示談書を行政書士や司法書士が作ることもあり、それが非弁行為にあたるかは緒論あるものの(この点「完全に双方が納得している」点が前提)、そうである限り基本的にこの点を問われることはありません(換言すれば、明らかにどちらか納得していないか、過失割合を争っているような状況で弁護士以外が立ち入るとアウト)。
・ 主人公の男性について
強迫(民法ではこの「強迫」の字)による意思表示は、第三者の間でも常に取消可能であり(96)、そうしていれば映画のストーリーは10分で終わっていたお話です。また、理由がどうであれ非弁行為はアウトなので、弁護士会等に相談すれば相手方は勝手に消えます(警察でもよいですが、非弁行為というややマニアックな論点を警察が扱えるかは微妙か)。
・ エンディングの迎え方について
単なる不当利得と不法行為になるためこのエンディングになりますが(お金関係)、不当利得の返還請求権と不法行為の責任追及論は別の話なので、双方を追及することも可能です(特に男性はともかく(錯誤を主張してくる可能性はありそう)女性は確実にアウトか)。
・ 「詐欺罪と脅迫罪(←刑法ではこちらの「脅迫」の漢字。民法と違うので注意)で訴えればいいのにねぇ」
脅迫罪は明確に言えるパターンですが(男性について)、詐欺罪は女性については問題はないものの、男性のほうは一種の錯誤に陥っていたパターンで、男性について詐欺罪に問うのも(民法上も詐欺を主張するのも)難しい気がします。
※ 民法・刑法上の詐欺は、「現状と真実が違うことを知っていて」「相手をだます意図をもって」「不実の事項を述べること」で成立しますが、その最初の「現状と真実が違うことを知っていて」は、男性についてはやや成立するかが民法上も刑法上もグレーなところ(民事訴訟では訴える側に立証責任があるため、この男性に関しては女性との関係で錯誤に陥っていたと思われる状況で民法上の詐欺を主張するのは難しい。強迫(96)は明確なのでそちらのほうが早い。いくつか訴える方法があるなら争いやすいものを選ぶのが普通)。