劇場公開日 2025年1月10日

「おいしい食事は人を癒す「魔法」。」劇映画 孤独のグルメ ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0おいしい食事は人を癒す「魔法」。

2025年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

注文の絵画を届けに行ったパリで、相手から五島列島で子供の頃に食べた汁をもう一度飲みたいから探してくれと頼まれる五郎。とんでもない無茶ぶりから始まるドラマは、目の離せない展開を見せる。無理なら断ってもいいのに、「食」にこだわりがある五郎は流れに任せて引き受けてしまう。パリまで出かける必要があるのかという話だが、飛行機内での食事機会ロスとパリのグルメ堪能のエピソードで、五郎の食に対する並々ならぬ執着を見せつけられて、物語のオープンとしては上出来だ。
五郎の食事風景が好ましいのは、食べることを全身全霊(少しオーバーか)で楽しんでいるのが伝わるからだろう。そこには、食材や作った人への感謝や敬意が込められている。韓国の孤島で働く女性たちが、自ら生産した食材で五郎をもてなした時の彼女らの喜びようにそれが分かりやすく表現されていた。五郎が一つ一つの料理を楽しみ、満足したことが伝わり、それが彼女たちに対する最上の誉め言葉になっている。
「食」に関わる事では、五郎は人並外れた行動力を発揮する。パリの謎の汁問題を解決するとともに、志穂の夫のラーメンを復活させ、夫婦の仲を修復してしまう。ラーメン復活劇については、伊丹十三監督の「タンポポ」へのオマージュだそうだが、オダギリジョーが実にいい味を出している。
パリ~五島~韓国~東京と舞台が移っていく物語は、楽しくて味わい深いものであった。松重豊の苦労に拍手を送りたい。

ガバチョ