劇場公開日 2024年8月30日

「ペラペラ」掟 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

ペラペラ

2024年9月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

【掟】

 東京都知事選で、政治の新たな潮流として注目を集めた石丸伸二氏が、安芸高田市市長として何をして何をしなかったのかを描いたドラマ・・だと思っていました。知事選後には同じテーマのドキュメンタリー『#つぶやき市長と議会のオキテ』が公開されたばかりなので、問題をより深く知る事が出来る契機になるかも・・とも思っていました。

 本作が、石丸問題を描いているのは明らかで、ポスターにも「石丸伸二とは何者?」の文字が躍っており、オープニングに石丸氏本人の記者会見の模様が4~5分ほど流され、エンディングでももう一度本人の映像が現われます。

 そして実際のドラマでは、登場人物や舞台となる市は現実の名称とは異なっているのですが、作中で描かれる「居眠り議員をSNSで告発」「議員からの恫喝されたの訴え」「副知事任命の失敗」「大手企業(現実には無印良品)の誘致失敗」などは実際の出来事です。

 それなのに、ドラマ本編開始直前に「本作はフィクションです」と言った意味の文字が入り、エンディングでももう一度その文字が表示されます。2度もそんな断り書きが入るのは初めての経験でした。

 明らかに石丸氏自身の物語である事を押しながら、「フィクションです」としつこく断る事に僕は不純なものを感じます。何か突っ込まれた時に「いや、これはフィクションですから」という逃げ道を準備している様に見えるからです。だから、作品全体が「言い訳めいた長口舌」に響くのでした。

 その様な印象を持つのは、本作全体が石丸氏を「古い議会の因習に破れた青年政治家の理想」という構図で描かれていると感じたからです。なんと分かり易い薄っぺらさでしょう。ドキュメンタリーである『#つぶやき市長と議会のオキテ』の方が石丸氏自身の資質を含めた問題の複雑さを遥かにリアルに映し出していました。ドラマは想像を交えた描写という自由さを有しているにもかかわらずです。そやあ、突っ込みたくもなります。

 制作の Team Okuyama ってこんなにペラペラだったの?

La Strada