劇場公開日 2024年11月15日

「ルシアス対アカシウス、対マクリヌス」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 ミカエルさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ルシアス対アカシウス、対マクリヌス

2024年11月24日
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鑑賞方法:映画館

興奮

前作を手がけたドリームワークス・ピクチャーズが経営難のため権利をパラマウント・ピクチャーズに売却したことによって、続編の企画は長らく頓挫していた。しかし、2018年にパラマウントのもとで企画が動き出し、主人公をマキシマスから、ルッシラの息子ルシアスに変更し、新たな物語が描かれることになったらしい。
本作は、エディプスコンプレックス(男児が母親を独占したいがために父親を憎む心理)の語源となったギリシア悲劇「オイディプス王」に沿ったストーリーになっている。主人公が皇位継承者ながら幼少期に追放され、自らのルーツによって国に戻ってきて父親を殺し、母親に会う展開が一致している。
違うのは、ルシアスが怒りに任せて義父アカシウスを殺さず、実父マキシマスの意志を受け継いだところである。父親に反発しながらも最後は父の存在を受け入れたコンセプトは、アンチ・エディプスコンプレックスといってもよいかもしれない。
対局を成すのは、手配士のマクリヌスだ。自身が奴隷であったことが最後に判明する。ルッシラの父アウレリウスに所有されていたらしい。皇帝になろうと企てていたが、実際は奴隷だった頃の恨みで行動していて、ローマを滅亡に導こうとしていた気さえする。マクリヌスは復讐の連鎖を断ち切ることができなかった。
一方で、ルシアスはアカシウスを殺さなかったことで負の連鎖を断ち切った。そして、最後にマクリヌスを倒したことで、復讐を捨てたものが復讐し続けるものに勝利した。
特筆すべきは、アカシウスを単純な悪役ではなく、むしろマキシマスにもっとも似た人物として描いているところだ。自身が侵略したヌミディアでは敵兵の死体を前に痛ましい表情を浮かべ、双子皇帝から次の侵略を命じられると、2人の虚飾のために命を捨てている若者に同情を寄せ、クーデータを計画する。
この映画は、ルシアス、アカシウス、マクリヌスをキーパーソンにして、戦争を描き、エンターテイメントの枠組みでそのメカニズムを暴いている。

ミカエル