「コロッセオに導かれし運命 ローマの夢は一日にしてならず」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
コロッセオに導かれし運命 ローマの夢は一日にしてならず
ローマの都市の中心にそびえたつ巨大な建造物コロッセオ。そこには神が宿るのだという。
時の皇帝たちは市民をコントロールするためにこのコロッセオで度々決闘を催し自らを神のお告げを聞くものとして権威付けを行ってきた。
闘技場では日々奴隷や捕虜の兵士たちがその命を懸けて戦い、その姿に観衆は酔いしれた。
多くの血が流されたコロッセオには神だけでなく、そこで命を失ったグラディエーターたちの魂が宿り、それが新たなる剣闘士を呼び寄せるのかもしれない。
奴隷の身分に身を落としたかつての戦争の英雄マキシマス。彼が剣闘士となり復讐を遂げ、亡き賢帝アウレリウスの夢は実現されたかに思えた。しかし、マキシマスが冥界に下った数十年を経た今でもローマ市民は皇帝の圧政下にあった。
そのローマで今も繰り返される剣闘士たちの戦いにマキシマスの忘れ形見であるルシアスが導かれたのは運命だったのだろう。
ローマの帝位継承者だったルシウスはその身を守るため身分を隠しローマを離れて暮らしていたが執拗な近衛兵の追跡から逃れるために長く消息が知れなかった。そして今、ローマ帝国の侵略に立ち向かう国の将軍として成長した彼の姿がそこにあった。
強大なローマ軍を前に勇猛果敢に戦ったが、圧倒的な武力を誇る相手に敗れ去り捕虜としてコロッセオで公開処刑を待つ身となる。
しかし、彼の生まれ持った英雄の血が死をはねのけた。英雄マキシマスの血が彼を死から遠ざけたのだ。
亡き妻のために怒りを糧として鬼神のように勝利を重ねる彼の姿に観衆は熱狂する。愚民化政策の一環として行われてきたはずの競技大会が皮肉にも皇帝たちの立場を次第に追い詰めてゆく。そして戦争の英雄アカシウスを処刑したことから市民の不満は爆発し、元奴隷から有力者の地位にまで上り詰めたマクリヌスの陰謀により皇帝はその地位を明け渡す。
マクリヌスこそがアウレリウスの元奴隷のグラディエーターだった。彼は復讐のためにローマを支配することが真の目的だったのだ。ルシウスはそのための駒でしかなかった。
復讐のためにローマに立ち向かったグラディエータールシウスと同じく復讐のためにローマを手に入れようとした元グラディエーターマクリヌスとの最終決戦がコロッセオの外の凱旋門で行われる。そしてルシウスは母の仇であるマクリヌスの陰謀を打ち砕き、亡き父の成しえなかった共和制ローマを取り戻すのだった。
陰謀渦巻くローマを舞台に主人公ルシウスがその過酷な運命に翻弄されながらも己の宿命を受け入れ勝利を勝ち取る大河ロマンに胸を熱くする。
前作に負けず劣らずの大迫力の合戦シーンからコロッセオでの模擬海戦シーンまで当時のローマ市民を熱狂させたごとく我々観客を熱くしてくれた。当時コロッセオで実際にこんな模擬海戦が行われていたなんて今更ながらローマの技術力には驚かされる。
前作以上にスケールアップされており、一作目の価値を相対的に引き上げた見事な続編だと言えるだろう。御年87歳のリドリー・スコット監督はまさに衰えを知らないどころかいまだ進化を続けている。
主人公を演じたポール・メスカルは肉体造りからその大役を見事に全うしたし、娯楽作品として必須の悪役の双子皇帝を演じた二人もカリギュラを演じたマルコム・マクダウェルを彷彿とさせる狂気に満ちていてとても良かった。わきを固めた人格者の将軍役のペドロ・パスカル、野望に燃える復讐者を演じたデンゼル・ワシントンと、ファンも大満足な役者陣に加え、前作から続投のコール・ニールセンと共に元老院議員グラックス役のデレク・ジャコビが健在なのも嬉しかった。
三作目の構想もあるという。今のこの監督の力を維持できるならぜひとも実現していただきたい。映画ファン必見の歴史超大作なのは間違いない。
ちなみにデンゼルは前作でマキシマスと最後まで一緒にいた黒人奴隷の彼なのかと思って見てたんだけどそうじゃなかった。ぜいたくを言わせてもらえば元グラディエーターとしてルシウスとの対決シーンをもっと長く見たかった気もする。
あと、ルシウスがマキシマスの隠し子という、続編のために設定を変えてしまったためにマキシマスが実子を作った時期とルキッラと関係した時期が被ることになり、マキシマスのイメージダウンにつながってしまった。続編製作のためとはいえとんだとばっちりだと冥界で嘆いていることだろう。前作でマキシマスはルシウスの年齢を聞いて息子と同い年だなあと能天気に語ってたからね。
本作では動物は一切傷つけていません。
コメントありがとうございます。
ご心配かけてすみません。
気長に一本化できる日を待ちます。
デンゼル・ワシントンの勇姿というか力強い演技に
見入りましたね。
ラストの戦いも年齢を忘れてました。
監督ともども老人パワーは侮れませんね、頼もしい!!