「圧倒的画力で殴ってくる、が……」劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来 鴨猫さんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒的画力で殴ってくる、が……
原作読破済みかつ根っからの鬼滅の刃好きですが敢えてフラットに評価します。
作画 ★★★★★
ストーリー ★★★★★
テンポ ★★☆☆☆
音 ★★★★★
演出 ★★★☆☆
芝居 ★★★★★
まず、原作の段階でこのアークは素晴らしいものになると確信しているので涙脆い自分はバスタオル持参で視聴。
しかし、確かに泣きましたし原作は何度読んでも同じところで泣くのですが、無限列車編と比べると感動が薄れてしまった気がします。
理由は以下のように分析。
①一つの映画作品としての完成度が低い
無限列車編はいきなり初見で見たとしても「鬼退治をしてるのね」「妹は鬼なのか」「鬼は人を食べるのね」「黄色い子はねずこが好きなのね」「猪は野生児なのね」「煉獄さんという人が主人公たちより偉くて強いのね」などギリギリ把握出来る内容でした。
そして主人公たちも視聴者と同じく「煉獄さん」という存在をよく知らなかったから、シンクロニシティが起きたのです。
ほぼ映画で明かされ、映画をもって退場し煉獄という男の生き様のカッコよさに感情移入できました。しかし今作は「全て知っている前提」で話が進みます。きっと置いてけぼりを食らう人がいることでしょう。
三部作のうちの1本目ということで、仕方ないのですが無限列車編のように起と結がある感じではなく、あくまでアニメの続きという印象が拭えないのでモヤモヤしたまま持ち越す事が多くあります。
②過剰演出によるテンポの悪さ
作画は素晴らしいですし、原作の段階で素晴らしいストーリーであるのですが、「(アニメ制作側の)自分たちが原作にもっと良い味付けをしてやる」を感じすぎて胸焼け気味です。
無限列車編のときもそれは感じたのですが、一部に留まりました(前作猗窩座戦の途中で伊之助が「倒したのか!」とかいう不自然な引き伸ばしとかがそれにあたります)。
しかし今作は随所に「見よ、この戦闘シーン!この背景!この演出!!原作を補完してやったぜ!」と言わんばかりに、足し算が多くそれで返って原作の良さを潰してしまった箇所が多かったです。
例えば善逸の漆の型。素晴らしい画を見て欲しいのは分かりますがスピード感は伝わってこなかったです。鼓屋敷で見た最初の霹靂一閃のほうがよっぽど感動しました。気付けば羽織が破けるほどの速さで動いたというのがあとから分かる方がスピード感があると思うのですが、技を発動してる最中にそれを表現してしまっているため雷の呼吸の速さを消してしまった気がします。
また、恋雪の「おかえりなさい、あなた」周りの改変もくどいです。原作にはない親父さんや慶蔵さんの台詞が追加され、おかえりなさいよりも先に「ただいま」を言ってしまい余韻がなくなってしまいました。泣かせてやろうという意図が見え見えでクサい演出だったのでちょっと恥ずかしくなってしまいました。
背景に関しても原作では真っ黒になっている箇所もそれはもう丁寧に圧倒的画力で表現されていますが、意識の置き場所に迷ってしまい話が入ってこなかった箇所もありました。
無限城の背景なんて圧巻ですが最初だけで充分です。
このあたりは原作者である吾峠呼世晴先生がいかに引き算が上手いかというのを痛感しました。
原作のテンポの良さはあくまで漫画としてのテンポの良さであり、動いて喋る映画だと不要な箇所も出てきますが、原作にそのまま足し算をしてしまっているがために冗長になってしまいかえって安っぽくなってしまう箇所が無限列車編よりも多かったなぁというのが私の印象です。
③情報過多
とにかく情報が多く、次から次に新しい情報が入ってくるので見ていて疲れます。
前述の通り、起きる出来事やセリフ量や動く背景が多すぎるのでどこに意識をければ良いのかが分かりにくくなっています。
無限列車編のときは夢の中と列車の中と外と主に3つの場面がありますが、今作ほど背景に意識が散らされることも無く主に人物の表情や台詞に集中できました。
しかし今作は作画に力を入れすぎていて、抜け感がないので脳の処理が追いつかない事もしばしばありました。勿論、こんな素晴らしい作画で作ってくださり本当にありがたいですしとてもクオリティが高いのですが、それが作品の良さと直結しているかと問われると即答できないのも正直なところです。
と、ここまで辛口となってしまいましたが
映画ならではの素晴らしい音や芝居については文句の付け所がなく、むしろ音や声がつくことによって没入させられた箇所もあったので決して4点以下の作品にはならないです。
あくまで無限列車編と比べると、という感じです。
≫uzさん
コメントありがとうございます。
まず作画が素晴らしく熱量も凄いというのはヒシヒシ伝わってきておりまして、映像化してくれた事に感謝しているのは前提なのですが
刀鍛冶編あたりから原作とのキャラデザの乖離が見られアニメーターが手癖で描いている印象でして悪意を満ちた言い方をすると傲慢に感じてしまうところがあるのです。
1期や無限列車編あたりは原作に寄せていたのでそんなふうに感じませんでしたが、原作あってのアニメなので自分たちの色というのを出しすぎるのも違うかなというのが個人的な感覚です。
自分たちの色を出すのであれば原作と同じ事をして足し算するのではなく、動いて、音声もつけられる強みの方向で発揮して頂きたかったのが本音です。
仰ってるような傲慢さまでは思いませんでしたが、コンテンツが大きくなり過ぎた故の制作陣の“力み”は感じました。
気合いが空回ってるといいますか。
一つ一つのシーンとしては良くても、ひと繋ぎの作品としてはバランスに欠いた印象ですよね。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。

