「【ブラック・ホーク・ダウンの時代】」ブラックホーク・ダウン ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【ブラック・ホーク・ダウンの時代】
「なぜ、アメリカは他国の戦争を戦うのか」
エンディングの場面で、若い米兵が自問自答するように発する言葉だ。
このモガディシュの戦闘が行われたのは、ソ連崩壊により米ソ冷戦が終わり、アメリカが世界の警察或いは、民主主義の番人のような役割を、ある意味、期待されていた頃だ。
クリントン大統領は、国連の遅々として進まない内戦の調停、奪われっぱなしの援助食料、統治能力に欠ける国連軍に業を煮やして、世界最高の屈強なデルタフォースやレンジャー部隊を投入して、アイディード将軍の確保を目指したのだ。
しかし、映画「アウト・ポスト」でも描かれたように、政治家や軍の上層部の見通しは甘かった。
「アウト・ポスト」で描かれたのはアフガンの山岳地帯での孤立無援の戦いだったが、ここでは、市街戦だ。
多くの市民兵の反撃も予想してなかったのだ。
こうした政治家のエゴや、見通しの甘さでも悲劇は生まれるのだ。
ソマリアは独立後ずっと内戦状態で、2013年に国際通貨基金が、ソマリア連邦政府を承認したことによって、援助の道が開けたように思われたが、複数のグループが政府を宣言する状況で、政情は不安定なままだ。
最近では、ヴィム・ヴェンダースの「世界の涯ての鼓動」でソマリアの爆弾テロを阻止しようとする諜報員が描かれていたが、日本では自衛隊が警備の一部を担うソマリア海賊対策が知られているかもしれない。
ソマリア沖は豊かな漁場で、昔は日本向けの魚の輸出が盛んだったが、90年代の内戦で、輸出設備などが傷つき、また、ソマリア政府が、アメリカにソマリア沖での放射線物質の投棄を認めてから、漁民の生活は奪われ、アデン湾を中心に航行する船に対して略奪行為を行うようになったのだ。
「ブラック・ホーク・ダウン」の時代から、この国に安定は未だ訪れていない。
ワンコさん
コメントへの返信有難うございます。
そうですね。事実として遺さねばならないという監督の熱意と情熱を強く感じる忘れる事のない作品になりました。
多くの人に、特に若い人達に観て感じて貰いたい作品でした。
ワンコさん
重しのように胸にズシンときた作品でした。これからまた起きようとしている事かも知れないと思うと(今既に起きているとも言えますね)、辛いです。人類って哀しい生き物ですね。