「紛争介入の難しさが浮き彫りに・・」ブラックホーク・ダウン odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
紛争介入の難しさが浮き彫りに・・
90年代のアフリカ・ソマリアの紛争、民族大虐殺に抗議した米国を中心とする国連平和維持軍が派遣されたがモハメッド・F・アイディード将軍配下の民兵組織は国連軍に宣戦布告して紛争は泥沼化。そんな折、アイディード将軍の側近二人を捕らえようと1993年10月3日に米国特殊部隊が行った奇襲作戦の全貌を描いている、これは映画と言うより再現ドラマでしょう。
戦闘の舞台はソマリアの首都モガディシュの家並みが入り組んだ黒海市場、民間人も多く住む地域だから米軍も大掛かりな戦闘は想定しづらかったのだろう。ところが火蓋が切られてみると米兵160名に対し民兵は2千人近く、次々に湧いて出るから多勢に無勢、大規模な市街戦に発展してしまった。司令部はヘリを使った急襲作戦で30分で片が付くと甘く見ていたが米軍の動きは敵の見張りに察知されていた。武装ゲリラ定番のRPG(携帯ロケット砲)でヘリまで撃墜、救援部隊も燃やされた古タイヤのバリケードに阻まれ車両は蜂の巣の有様。
国連軍は装甲車を持っていたが米軍は国防長官レス・アスピンが平和維持軍にはそぐわないと装甲車両の使用を禁じていたので惨めな結果となった、本作戦の後、責任を感じて辞任、同様に作戦立案の甘さの責任をとって現地司令官のウィリアムF.ガリソン少将も退任しています。
この戦いの後、米兵の遺体が裸にされ、住民に引きずり回されるという悲惨な映像がソマリアから流されアメリカ国民の間で撤退論が高まりビル・クリントンは1994年、ソマリアからの撤兵を決定した。人道主義の発露としてもソマリアに助けに入った米国の若者が殺され、あるいは助けたかった筈のソマリアの民間人まで殺してしまう理不尽さは紛争解決の難しさを浮き彫りにしています。壮絶な15時間の死闘でした。