「誰がどぶ掃除をするのか?」ブラックホーク・ダウン あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
誰がどぶ掃除をするのか?
戦争の凄惨の現実を映像化した最もリアルな作品のひとつだろう
放置すれば30万人の人びとが殺されている大量殺戮が進行している
二つの道があると米軍兵士が言う
ひとつの道はこうだ
見過ごせばいい、遠い他の国のことだ
勝手に殺し合えば良い
CNNを見ながら大変だなあと言うだけだ
もうひとつは、
誰かがこのソマリアの内戦に介入しそれを止めること
米軍の車輌には大きくUNと書かれている
つまり国連の平和維持軍として米軍はこれを止めに来ているのだ
しかし、それなのになぜ米軍はこの現地の民兵達の強烈な憎悪を浴びここまで攻撃されなければならないのか?
本作のテーマは映画の最後で、生き残った二人の米軍兵士が話す内容だ
故郷に帰ると皆が聞く
なぜ戦うんだ?
戦争中毒なのか?
友人にこう聞かれた
なぜ他国の戦争を戦いに行く?
英雄気取りなのか?
一人目の兵士はこう答えると言う
俺たちは仲間の為にたたかうんだ 、と
二人目の兵士の答えはこうだ
違う、英雄になろうなんて誰も望んでいない
結果としてそうなる、と
エンドロールで戦死した兵士の手紙が読まれる
故郷で帰りを待っ妻と幼い子供達への手紙だ
そう、兵士たちは我々文明世界の平和な暮らしを維持するために戦っているのだ
家族の平和な暮らし、平和な社会の暮らしを維持する為に戦うのだ
文明世界を野蛮な世界に戻さない為に戦っているのだ
誰かがどぶ掃除しなければならないのだ
さもなければ悪臭を放ちボウフラが湧き、蚊もハエも大量発生するのだ
どぶ掃除の為にどぶに飛び込めば、当然汚れる
汚泥を頭から被る事だってある
ケガする事だってあるだろう
だが誰かがどぶ掃除をしないとならないのだ
文句を言っても他の誰かがしてくれるわけもないのだ
この戦闘の悲惨さから米軍はソマリアから撤退し
その結果、第三世界での活動に腰がひけることになった
そして8年後911が起こる
どぶ掃除を怠ったつけは大きい
米国はそこからテロ戦争という大掃除に取りかかるはめになったわけだ
私達が平和に暮らす文明社会は、簡単に壊れる
文明を維持するためにには戦う気構えが必要なのだ
悪貨は良貨を駆逐し、水は低きに流れ
一滴の汚水は飲み水を腐らす
他国の内戦に介入することを大国のエゴだと非難するのは簡単だ
そして次にそのきれいごとをいう同じ口で今度は大量殺戮の紛争を止めろ、政府は何をしているのかと非難する
そのしわ寄せは兵士の戦う現場に行く
それがブラックホークダウンを引き起こすのだ
21世紀の日本でも、ブラックホークダウンは起こりそうだ
日本の隣には悪臭を放つどぶどころか、有毒な煙をあげて燃える大小二つのゴミの山がそびえているのだ
平和憲法という縛りは自衛隊のブラックホークダウンを引き起こしかねない
そうなる前に手を打たないとならない
誰が?
それができるのは私達国民の考えひとつなのだ