「何を見せたいかもう少し整理してほしい」本心 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
何を見せたいかもう少し整理してほしい
原作読んでいませんが、映画に関しては何を見せたいのかわかりにくい。
自由死を選んだことになっている母が、自殺だったのか事故だったのか知りたいのと、聞けなかった「大事な話」は何だったのかを知りたいがために、大金をはたいて母のVFを作った朔也の気持ちはわかるが、でどうだったのか、よくわからない。
言いたいことは、「お前を愛している」だった?
朔也の母は、猫を探して川に飲まれた事故だったということでしょうか。
猫のVF作ればそれがはっきりしたかも
三好彩花が何か重要な鍵を握っているのかと思ったらただ顔と境遇が朔也の運命を変えた女の子と似ているだけだった。
新しい概念に関しては興味深く想像も膨らむが、登場人物に関してあまり関心がわいてこない。急激に変化した社会に戸惑って右往左往している人たちを目で追っているだけだったような。
超近未来SFホラーなのかと思ったが、ホラーではなかったようです。
AIが社会の担い手となって短期間で急速に貧富の格差が拡大しており、AIを味方につけた野崎やイフィーのような人たちは桁外れの富としてその恩恵を受ける反面、AIに職を奪われた人々は貧しさに喘ぐしかない。社会的勝者は底辺の人々を気まぐれで踏みにじりやりたい放題。暗くて絶望的で、一世紀くらい前の時代に逆行したよう。
朔也の弟分の岸谷のどうしようもないやりきれなさがリアルな感じ。
二人の絡みに、岸谷が朔也に悪さしないかひやひやしたが、脅しても凄んでも岸谷は朔也を決して貶めないので、彼が朔也に甘えているのだとわかる。依存していて、可哀想な気もしてくる。
野崎やイフィーも、いつまでそこに君臨していられるかわからない。
AIは、時代の流れを急速に変えていくものだと思う。
「自由死」は「安楽死」を言い換えただけのようで、政府にありがちと思った。国民から大反対を食らった「売上税」を「消費税」と改名して通したみたいな、「安楽死法案」で長い事物議を醸したが、「自由死」と言って別物のようにして法案を通したんだろうなと思えて妙にリアリティありました。
リアルアバターは、生まれて間もなく急速に普及した職業らしく、今のところ何でもありだが、近々にリアルアバターを使った犯罪行為が社会問題になり「公序良俗に反する依頼は受けない、あったら通報する」くらいの業者の自主規制はできるだろうし、アバターへの依頼の中身も、依頼者からのアバターへの命令回数で工数計算になり、前払いの規定回数以上の命令をしたら中止か追加料金が払われるまで命令遂行中断、かつ待っている間の時給発生とか、実行不可能な命令は判明した時点でAIが強制的に中止、料金没収とか、細かい規定ができそう。ログを保存すればできるし、労働者保護というより、オーナーが損しないように。実施は翌年くらいですかね。高級ホテルとかレストランとかで、リアルアバターお断り、も出てきそう。
学習機能を持つAIが、人と接することで学習を繰り返し、「心」のようなものを獲得するというのは説得力がある。でも、人が数十年かけて獲得してきたものにはやはり及ばないだろうし、人は気まぐれで矛盾しているのが普通なので、いくらAIが学習してもその人に成り代わることはできないでしょう。VF使うならそれを理解したうえで、が正しい使い方なのは承知でも、いつの間にかそのVFが本人そのもので、思ったことが「本心」と思い込んでしまいそう。
そもそも「本心」の範囲はどこまでなのか
人であれば、ここは本音を言ったが、ここではそうではないことは無数に、普通にある。
それは必ずしも悪いことではない。
例えば、相手への思いやりからくる「優しい嘘」や、墓場まで持っていく類の話は、その部分で本心をさらけ出したら台無しになる。朔也の母も、思いやりから明らさまにしなかった事実があり、隠していた事自体が母の人となりの一端でもあるのだ。
この映画の生きている人間は他人に本心を見せていない部分がほとんどだが、ところどころ出すことがある。イフィーの告白は本心だろう。
彩花は多分、朔也の自分に対する本心を見抜いていただろう。
ラストで手を差し伸べたのは彼女ですよね。
言わなくても、裏腹な態度を取られても、奥底にある本心がわかる。
AIにはできない芸当だ。
人同士でしか持ち得ない、信頼と呼ぶものだと思う。
同感です!
ちょっと散漫な感じになってしまいました。
たまたまなのか作者がファンなのか三好さんもねぇ…
三吉さんのイメージがあるので余計な感情が混じってしまいました(笑)
コメントありがとうございます。
AIにも自由死にも触れないレビューでした。財産叩いたのに熱が冷めていくところに虚より実をとる人のサガを見ました。やさしい母なんだけど田中裕子が近藤正臣に見えたのはオイラだけ?
ゆきさ~ん!
ですよね、ですよね!!
何か最初からただの良い人のわけない、歪みがいつ顕わになるのかと構えてしまう佇まいでした。
自分の思いを遂げるのにわざわざ弱い立場のものを甚振るやり方をする、自分の優越性を噛み締めているようです。
身体的ハンディキャップから来ているんだろうと私も思いました。
連日すみませんm(__)m
かばこさんがuzさんにコメントされたイフィーのあの場面での解釈が!!私もそう感じました!身体的ハンディキャップから来ているんだろうな、の、歪んだ人間性を上手く表現していたと思いました。絶対に朔の忠誠心を試していたし、三好さんの気持ちも切ろうとしていた!こいつイヤな奴だな〜って思いましたもん。
あの役を太賀が演るんだから、ただの良い人なわけがないw
こんばんは。
コメントありがとうございます。
わかりやすい解説に加え、とても濃い〜内容のレビュー、拝読できて、作品の解釈が深まりました。
《新しい概念に関しては興味深く想像が膨らむが、登場人物にあまり関心が湧いてこない
正に!ほんとその通りでした。
ここまで大きく様々なテーマを取り込み、この尺に収めた監督の手腕は流石。とも思いますが、予告でもかなりのインパクトを残した「自由死」を選択した理由が、余りにも曖昧で消化不良でした。
石井監督にこのキャスト。あの予告にババン!!タイトル「本心」!!と来たらやはり傑作を期待してました。
かばこさんのお付けになったタイトルに共感です。