本心

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劇場公開日:

本心

解説

「月」「舟を編む」の石井裕也監督が池松壮亮を主演に迎え、平野啓一郎の同名小説を原作にデジタル化社会の功罪を鋭く描写したヒューマンミステリー。

工場で働く石川朔也は、同居する母・秋子から「大切な話をしたい」という電話を受けて帰宅を急ぐが、豪雨で氾濫する川べりに立つ母を助けようと川に飛び込んで昏睡状態に陥ってしまう。1年後に目を覚ました彼は、母が“自由死”を選択して他界したことを知る。勤務先の工場はロボット化の影響で閉鎖しており、朔也は激変した世界に戸惑いながらも、カメラを搭載したゴーグルを装着して遠く離れた依頼主の指示通りに動く「リアル・アバター」の仕事に就く。ある日、仮想空間上に任意の“人間”をつくる技術「VF(バーチャル・フィギュア)」の存在を知った朔也は、母の本心を知るため、開発者の野崎に母を作ってほしいと依頼。その一方で、母の親友だったという三好が台風被害で避難所生活を送っていると知り、母のVFも交えて一緒に暮らすことになるが……。

田中裕子が朔也の母役で生身とVFの2役に挑み、三吉彩花、妻夫木聡、綾野剛、田中泯、水上恒司、仲野太賀と実力派キャストが共演。

2024年製作/122分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:2024年11月8日

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映画レビュー

4.0今、まさに迎えようとしている近未来へのアンチテーゼかもしれない。

2024年11月11日
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鑑賞方法:映画館

興奮

難しい

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ななやお

3.5他人の本心がわかる時なんてくるんだろうか

2024年11月10日
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鑑賞方法:映画館

好きな役者陣総出演すぎるのと、題材が興味深かったこともあり、期待値が上がってしまったためか、見終わった後にもやっと感が残ってしまった。 ひとつひとつのシーンは印象的だし、役者陣の演技も申し分ない。田中裕子さんの人間の時の演技と、AIの時の演技差なんてゾワっとするぐらい。 でもなんだか内容が盛りだくさんすぎて、繋げるとツギハギしているように感じてしまった。 原作が未読なのでなんとも言えないけれど、映画としてまとめるのはすごく難しい作品だったんだろうなと思う。原作を読んで補填したいと思ってしまった。 母親が自由死を選択した理由(本心)を知りたいというテーマ以外にも、リアルアバターだったり、貧富の差だったり、三好との関係だったり…大きな要素が何個もあるので、見ている側はどこに主軸を置いたらいいのか混乱してしまった。 ただ一貫して「本心」というテーマは根底にあって、様々な人間を描くことで、結局その人の本心なんて他人が理解できるものでもないし、それが本心だと確信を持てる証拠なんてどこにも無いんだと思い知らされた。 そもそも他人の本心を知りたいと思うこと自体が烏滸がましいのかもしれない。 将来あんな未来になってしまうんだろうか。 どんなにテクノロジーが進歩しても、それを扱う人間によって良くも悪くもなる。私たち自身も変わっていかないといけないと思った。

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AZU

4.5「AIで人の心を再現できるか」という平野啓一郎の問いを、石井裕也監督&主演・池松壮亮が的確かつタイムリーに映像化

2024年11月30日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

平野啓一郎の熱心な読者ではないのだが、映画化された近著「ある男」「本心」、そして今年10月に刊行された短編集「富士山」に収録された「息吹」に共通して感じるのは、古くから行われてきた人間の実存をめぐる探究に、21世紀の知見と現実を交えて自身の小説で取り組んでいるのではないかということ。これの前に書いた「動物界」のレビューで実存というワードを使ったことから思いついた程度だが、もう少し具体的に書くなら、比較的最近の科学・技術の成果や、個人のアイデンティティーと生存に関わる社会通念・倫理観・法律(と違法・脱法行為)をストーリーに取り入れたのが、先に挙げた平野の小説群ではないかと。 「ある男」は闇ブローカーを通じて戸籍を他人と交換し、別の人間として後半生を生きた男をめぐる話。「息吹」では主人公の中年男性が、偶然の出来事がきっかけで受けた検査で悪性ポリープを早期発見できた人生と、がん発見が遅すぎて死に向かう人生の両方をリアルな実感とともに行き来する話(「シュレーディンガーの猫」の状態や「量子もつれ」の現象を想起させる)。 そしてこの「本心」では、バーチャル・フィギュア(VF)と「リアル・アバター」という2つの架空のハイテクサービスが登場する。ベースになっているのは、ユーザーが仮想空間でアバターを操る仮想現実(VR)、ヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル)を装着したユーザーに現実世界とバーチャルな3Dオブジェクトを重ねて見せる複合現実(MR)、そしてChatGPTなど生成AIの登場によりここ数年で世間でも一気に認知されるようになった人工知能(AI)。“自由死”と呼ばれる尊厳死が合法化された近未来、自由死を望んだ亡き母・秋子(田中裕子)の本心を知ろうとして、朔也(池松壮亮)は母のVFを作ってもらい、ゴーグルを装着して居住空間でVFの母と会話する。朔也が新たに得た仕事のリアル・アバターとは、カメラを搭載したゴーグルを装着して遠隔の依頼主の指示通りに買物や旅行などを行うもの。 池松は本作の主人公のように、まじめで誠実で、繊細でどちらかといえば内向的、理不尽な仕打ちやいわれなき中傷を受けても耐えようとするキャラクターがよく似合う(「宮本から君へ」や「ぼくのお日さま」など)。リアル・アバターの仕事中、悪意ある依頼主に振り回されて心身が疲弊していくさまは、ケン・ローチ監督が宅配ドライバーの過酷な労働現場を描いた「家族を想うとき」を思い出した。 田中裕子も実に素晴らしく、彼女以外のキャスティングは考えられないと確信したほど。北の離島で失踪した夫を30年待ち続ける妻を演じた「千夜、一夜」のレビューで、「田中裕子が近年体現してきたキャラクターたちは、彼女の存在感も相まって、女性は、母親はこうあってほしいというような、理想の女性像、母親像を観客が投影しやすくなっているのかもしれない」と書いたが、本作もまさにそう。 初出が新聞連載だった「本心」の掲載時期は2019年9月から2020年7月で、平野は連載中の心境に新型コロナのパンデミックが影響を及ぼしたと語っている。フィジカル(身体的、物理的)な距離と“心の距離”、映像越しのリモートなコミュニケーションなどは、コロナの時期を経験した後で、よりリアルに迫ってくる要素。石井裕也監督の映画としては、「茜色に焼かれる」「愛にイナズマ」と合わせて“コロナ三部作”と総称したい重要な作品群だ。

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高森 郁哉

4.0愛は偽造できる?

2024年12月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

池松壮亮が波に乗ってる2024年。「ぼくのお日さま」「ベイビーわるきゅーれ」を個人的年間ベストに入れてるのなら、本作も逃す手はないでしょうと思っていたのに、よく行く映画館との兼ね合いが上手くいかず、気づけばどこの映画館も公開終了のお知らせが。もうなんで?!たまぁにあるんだよね、こうもギリギリになってしまうことが。ということで、毎度御用達の駆け込み寺(ちょっと遠くの映画館)に滑り込みで鑑賞。あっぶねぇ、逃すところだったよ。 評判はそれほど良くないのでさほど期待せずに見に行ったんだけど、これが意外に良くて。平野啓一郎原作の「ある男」は過大評価され過ぎでは?と少し思ったもののまあ好きだったし、何より石井裕也が当たり外れはあれど自分は結構好きだから、わりと上手いことハマれたなと。 設定が2025年の8月と近未来という言葉の威力からすると近すぎる未来ではあるんだけど、このなんともフワッとした捉えようのない、みんなが探り探りで生きている感じがとてもリアルですべてにすごく納得してしまった。 これは現実なの?それともVRゴーグル(この言い回しが正しいのか分からないけど)から見える世界なの?と惑わせる演出が秀逸でとても面白い。おかげで最初から最後まで考察が広がる。VR世界、そしてAIの技術は目まぐるしいほど進化を遂げており、最近では生成AIと言う新たな刺客が猛威を振るっている。 それじゃあ、人間はどうなのか?人は日々進化し、退化している。みたいな言葉があるように、例え文明が発展したとしても、人間も次なるステージに行くとは言えない。むしろ、衰退してしまうのが想像にかたい。進化は人をダメにしてしまう。むかしはいまよりも不便でも、むかしのほうがいまより豊かだとも思う。 人というのはまあ鈍感なもので、少しの変化を感じることが出来ず、気づいた頃にはもう遅かったなんてことが山ほどある。それは技術的な側面だけじゃなくて、上記のような心情の変化という内面的な側面においても。一緒に暮らしていても分からない。人は全てをわかった気になってしまう。この映画ではこれをすごく丁寧に描いていて。親子間における小さな蟠りだったり、片思いの恋心だったりと、人間の煩わしさが皮肉のようにしっかり表面化されている。AIと人間。この対比がすっごくわかりやすくなっていて、直にこの映画の意図するメッセージを受け取ることが出来た。 我らが池松壮亮は、今年公開の2作品とは違い、かなり平凡で至ってどこにでもいそうな主人公。見ている自分たちと等身大でいてくれる時の池松壮亮は、奇天烈な人物を演じる時以上に大好きだし、そうそうコレコレと首を縦に振ってしまうお馴染みの顔。 こんな平凡な役でも、やっぱり上手いなぁと唸ってしまう。細かな涙の震えと小さな感情の動き。普通がいちばん難しいんだよ。石井組の常連だから、もうお互いことをバッチリ理解し合ってる。そんなことが見て取れる安定感と抜群の存在感だった。 まぁただ、この手の映画の在り方としては悪くないんだけど、それを加味しても観客に投げかけすぎたなぁと感じてしまうし、「ある男」に引き続き平野啓一郎がちょっと自分に酔ってるような、世界を斜め上から見すぎるようなところはどうしても気に食わなかった。 監督なりに、原作者なりにこの物語に対する解答は持っているのかもしれないけど、それでもふわふわし過ぎていて掴みどころのない、大物俳優の演技があってもちょっとインパクトに欠けた映画になっている。全体的には好きだからそこまで不満は無いけど、このテーマを扱うなら地盤はもっとしっかりしたものであって欲しかったな。 実写邦画となると途端にレビューが長くなってしまいますね自分。とやかく書いたけど、やっぱり池松壮亮と石井裕也には今後ともたくさん映画を作って頂きたい。日本映画界を支える、大事な2人だと思うんで。過去作見て楽しみに待っときます😊

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