本日公休

劇場公開日:

本日公休

解説

作家やミュージックビデオ監督としても活躍する台湾の俊英フー・ティエンユー監督が、自身の母親をモデルに執筆した脚本をもとに、実家の理髪店で撮影を敢行して完成させたヒューマンドラマ。

台中にある昔ながらの理髪店。店主アールイは40年にわたってこの店に立ち続け、常連客を相手にハサミの音を響かせている。彼女がひとりで育て上げた3人の子どもたちは既に独立しており、頼りになるのは近所で自動車修理店を営む次女の元夫チュアンだけ。ある日、離れた町から通い続けてくれる常連客の“先生”が病に倒れたことを知ったアールイは、店に「本日公休」の札を掲げ、古びた愛車に乗り込んで先生のもとへ向かう。

「客途秋恨」で知られる名優ルー・シャオフェンが24年ぶりにスクリーン復帰して主人公アールイを演じ、2023年・第25回台北電影奨で主演女優賞、第18回大阪アジアン映画祭で薬師真珠賞(俳優賞)を受賞。チュアン役で「返校 言葉が消えた日」のフー・モンボーが共演し、「藍色夏恋」のチェン・ボーリン、「僕と幽霊が家族になった件」のリン・ボーホンが特別出演。

2023年製作/106分/G/台湾
原題または英題:本日公休 Day Off
配給:ザジフィルムズ、オリオフィルムズ
劇場公開日:2024年9月20日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9

(C)2023 Bole Film Co., Ltd. ASOBI Production Co., Ltd. All Rights Reserved

映画レビュー

3.5理髪店という陽だまりの空間にて

2024年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

このヒロインは生涯のうち一体どれほどの常連客たちの後ろ姿をじっと見つめてきたことだろう。それぞれの背中や襟足には人生が香る。そこにチョキチョキと心地よくも絶え間ない音が鼓動の如く響く。自身の母親をモデルに描いた本作の監督にとって、この日常がいかに大切な原風景であるかが温もりをもって伝わってくる。まさにその実家の理髪店でロケを敢行したというのも納得。いささか年季の入った店の窓から注ぎ込む穏やかな日差し、色あせた床、さりげない備品の数々は、ノスタルジーという言葉を超えた懐かしさと、自分も常連客になったかのような居心地の良さをもたらしてやまない。全編を通じて何かしら大事件が起きるわけではないが、変わらぬ風景、ずっとそのままでいて欲しい空気感を、丁寧に紡ぎゆくこの語り口が味わい深い。いわゆる「反復とずれ」の描写で、絶え間なく続いてきた日々にふと気づきと変化がもたらされる様子も静かに胸を締め付ける。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
牛津厚信

4.0昭和ノスタルジーを喚起する理髪店のおばちゃんと家族の情景

2024年9月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

幸せ

今年は台湾映画の当たり年かも(日本公開年ベースではあるが)。5月の日台合作「青春18×2 君へと続く道」、6月の「オールド・フォックス 11歳の選択」、7月の「流麻溝十五号」、そしてこの「本日公休」。タイプや時代背景は異なれどそれぞれに魅力があり、台湾の歴史や昨今の社会事情、人々の価値観や人柄などを映画を通じてうかがい知れるのもいい。

本作で初めて知ったフー・ティエンユー監督は、1973年9月13日台中生まれ。母親が理容師で、主人公アールイのモデルになったほか、撮影に使ったのも実家の理髪店だという。2015年製作のオムニバス映画「恋する都市 5つの物語」では第4話「日本・小樽編」の監督・脚本を務めたそうで、こちらもいつか観てみたい。

何よりもまずアールイのキャラクターがいい。女手ひとつで育てた娘2人と息子1人はすでに家を出て、店舗の奥の住居でひとり暮らしながら理髪店を営んでいる。常連の名前と髪型の好みはもちろん、接客時の会話から相手の家族の事情まで把握していて、しばらく来店していない客には電話をかけて家族の話題をとっかかりにしつつ、家族の行事の前に散髪にいらっしゃいと巧みな営業トーク。頭の形を見ると似合う髪型がわかる、頭の後ろ側にも“もう1つの顔”がある、といった台詞には、自分の仕事に誇りを持った職人ならでは言葉だなあと思うと同時に、プロからはそんな風に見えるのかと少しどきっとした。

3人の子らはあまり実家に帰らずやや親不孝なのだが、近所で自動車修理店を営む次女の別れた夫チュアンが優しくて善い男で、元義母を何かと気にかけている。チュアンのキャラクターもまたいい味を出していて、互いを思いやるアールイとチュアンの会話に温かい気持ちになったり、切なくなったり。

スマートフォンが使われているので比較的最近の時代設定だけれど、昔ながらの人と人とのつながり、得意客を大切にする心、家族の距離感などそこかしこに、日本の昭和の頃に通じるノスタルジーを感じる。台北などは東京と一緒でもちろん大都会だが、台中の下町あたりではまだ人情味あふれる個人商店などが残っているんだろうなと思わされる。

個人旅行で台中か台南で民泊を利用したが、家主のおばちゃんが本当に人懐っこくて親切だったのが良い思い出。アールイが友達と干潟のような場所ではしゃいでいる数秒のシーンがあるが、あれはおそらく台湾のウユニ塩湖と名高い「高美湿地」だと思う。台中の中心地から半日くらいで他の観光地とあわせて巡るバスツアーがあって、天気の良い夕方に訪れるのがおすすめです。

コメントする (0件)
共感した! 13件)
高森 郁哉

3.5落ち着く映画

2025年1月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

台湾映画は多分初めてで、監督(女性なんですね)もキャストも全く知りませんでした。上田映劇に久々に行きたくなって、この日しかなかったんですが、この次の上映がのんさんの新作でしたが、どうもキライな俳優が1人いるなーなどと考えて「本日公休」を鑑賞しました。

とても面白かったです。良かった。

なんと言っても、嫌な奴、悪い奴、イジメとかハラスメントとか、そうした案件が一切でてきません。わたし、それだけで満足してしまいます。しかも、ゆっくりとした演出でクライマックスを無理に作ろうとしない。それで、時々クスッと笑えて面白い。いいじゃないですか。

お母さんの落着き、あれは何でしょう。見習いたいです。後はやはり次女の元旦那。いい俳優さんでした(有名な方なのかな?)。あの不器用さ。素晴らしい。

日本映画に置き換えられるなと、景色も似ているし、文化的にも共通点があるし。
勝手にキャスト考えてみました。お母さん=田中裕子さん、長女=広瀬アリスさん、次女=山本美月さん、元旦那=瀬戸康史さん、長男=若葉竜也さん まぁ勝手な想像です

わたしも前に住んでいた町では、25年くらい、町の同じ床屋さんに通いました。ご主人が1人で切ってました。毎回、いろいろな話ました。引退閉店が決まり最後の訪問、ご主人が涙ぐみながら強く握手をしてきたことを、久々に思い出しました。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ウルスアベイユ

5.0いつでも、いつもどおり

2024年12月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

散髪やさんの日常を淡々とえがいた作品。そこに溢れるたゆまなき愛情の数々。人としてかかわり合いの中で生まれたつながりは、愛おしい。感涙の秀作。いつでも、いつもどおり。素晴らしい!

コメントする (0件)
共感した! 0件)
DnaH