オアシスのレビュー・感想・評価
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風、冴ゆる
ポスターが公開され、青く澄んだポスターに思わずビジュアルが爆発しとる!と興奮しました。
思っていた以上に青春映画していました。
ヤクザという枠組みに悩みながら過去との葛藤、幼馴染との絆だったりを凝縮しておりとても好きな作品でした。
ある事件をきっかけに行く道が分かれた幼馴染のヒロトと金森、母親が殺されたショックで記憶が一部飛んでしまった紅花が巡り巡って再会して、ヤクザの抗争に巻き込まれていく…といった感じの作品で、思っていたよりかはヤクザ色は少なかったですが、ノワールに求めるものがしっかりと地盤に敷いてあったと思います。
じっくりとヒロトと街を映しながら進む様子が渋カッコよくて、タバコが映える映えると思っていたところに不穏な空気が流れながら進む感じはノワールもののツボを抑えているなぁとワクワクしました。
長回しカットが好きな作品と嫌いな作品と自分の中では分かれるんですが、今作は好き寄りの長回しでカット一つ一つに痺れました。
3人だけの秘密基地でのわちゃわちゃする様子、ヒロトが最初はムスッとしていたのにだんだん金森と紅花を見ていて表情から笑みが溢れていくところは胸がキュッとなりました。
カップ麺を3人で食べる時にカタめがうまいんだよと金森が言うと2人もカタめで食べちゃう演出も好きでしたし、「SUPER HAPPY FOREVER」が口に出して幸せを噛み締める作品だったのに対して、こちらは表情にも言葉にも出さないけど幸せが伝わってくるってのも最高でした。
そこからヒロトの親父に2人を差し出しながらも、どうしたらいいか分からないけど頭を下げて2人を取り戻そうとする姿はグッときましたし、そこからの親父とのタイマンは男と男の勝負って感じで血生臭いのも良かったです。
そこに突如としてイキイキとしながらやってきた木村とアンナが幹部たちを相手にヒャッハー!する様子は見応えありましたし、なんならもっと観たかったなぁくらいには派手で面白かったです。
ちょっとご都合的なところはありつつも、血みどろのまま青空の下にやってきて軽口を叩き合う3人がとても愛おしいですし、スパッとエンドロールに行く清さもこの手の作品では感じられない爽やかさがあってゾワゾワが終わった後も持続していました。
R指定らしいグロさはしっかりありました。
下っ端が敵対グループに襲いかかって捕まってからの首元かっ裂くシーンだったり、終盤の突然の生首テッテレーだったりはエグさ全開でした。
アクションシーンはスピーディーかつぐるぐる駆け回るカメラワークも相まって楽しさ爆増でした。
90分尺だと綺麗にまとまりすぎていた気もして、もうちょっと長くても良かったんじゃないかなとは思いました。
儚い日本製ノワールだからこそ得れる栄養素が詰まっていました。監督の次回作にも期待大です。
鑑賞日 11/19
鑑賞時間 16:10〜17:50
座席 A-5
Wonderwall
個人的ヤベー奴が似合う若手No.1、清水尋也。
初主演でバイオレンス作品とあったので期待したが、思ったより人間でした。(失礼
冒頭から特に説明なくグイグイ話を進めるが、組織や人の関係などはなんとなく分かる。
しかし、正直メイン3人に関してはもう少しちゃんと描いてほしかった。
ヒロトがヤクザになった流れは分かったが、金森が何故半グレに入ったのかが分からない。
ヒロトと金森の繋がりが周知の事実である理由も不明。
何より紅花が2人にとってどういう存在で、3人がどういう関係だったか知らないので感情移入しづらい。
ヤクザと半グレって時点でどちらも応援できないのに。
物語が大きく動く事件において、ヒロトだけ何もしてないのに逃げざるを得なくて可哀相。
まぁ後輩の暴走に巻き込まれた金森も災難だが。
それらを踏まえても、何一つ悪いことしてないのに不幸に見舞われ続ける紅花が不憫すぎた。
目立つ旧車を目の前に停めて阿呆か、と思ったら案の定見つかる。
隠れ家に「昔よく来た」場所を選び、平気で電気を点け、爆音で音楽をかけ、無防備に外で寛ぐ。
こいつら緊張感ねぇなぁとは思うが、ようやく“あの日”以前に戻れた瞬間だったのだろう。
(まぁ、その日々が描かれてないのだが…)
『グッドバイ、バッドマガジンズ』の杏花が金髪鼻ピでアクションまで披露してて驚いた。
しかし生首はサスガにふざけすぎでは。
これから3人で寄り添って生きていくのだろうというラストは悪くないが、いまいちスッキリはしない。
男2人女1人なんて絶対なんかありそうだし。
金森は顔立ちも服装も墨のデザインも、その他全部がチャラいチンピラっぽかったが、あれで正解なのか?
「これからのヤクザ映画は仁義じゃなくて友情を描くの?」「知らねえよ」
幼馴染のヒロト(清水尋也)と金森(高杉真宙)は、青年になって対立するヤクザ組織に属することになる。そこに同じく幼馴染で当時の記憶を失ってしまった紅花(伊藤万理華)が登場。かつて仲良しだった3人が、組同士の抗争に巻き込まれるというお話でした。
第一印象は、最近では珍しく、とにかく登場人物たちがタバコを吸いまくる作品だということ。チラシにもタバコを吸っているヒロトと金森が写っているし、実際劇中でもこの2人をはじめ、殆どの登場人物が要所要所でタバコを吸うシーンが出て来ました。嫌煙家の私としては、その煙たいことと言ったら(笑)
タバコの煙たさはさておき、金森と紅花がヒロトの組の組長のドラ息子たちを殺してしまったことから、3人はかつての秘密基地らしき家に雲隠れ。そこで過ごした宝物のような一昼夜こそが、題名にもなっている”オアシス”でした。そんな夢のような楽しいひと時が終わり、ヒロトは父とも兄とも慕う組長と兄貴分に金森と紅花を差し出すことに。ここで万事休すと思いきや、金森の組の反撃もあり、最終的に3人は奇跡の脱出に成功。意外や意外ハッピーエンドになって驚きました。
若いヤクザの葛藤を描いた作品と言えば、今年4月に観た「辰巳」の記憶が新しいですが、あちらは主人公が死んでしまい、その点にリアリティがありました。一方本作も、終盤まではヤクザの仁義に従った行動や、殺るか殺られるかというギリギリの抗争を繰り広げる展開で、当方が抱く典型的なヤクザ映画という感じでしたが、最後の最後で勧善懲悪物よろしく金森の組の連中が助けに来るなど、ちょっとご都合主義的な部分もあり、若干鼻白むところもありました。ただ母親が目の前でヤクザに殺されたことがきっかけで記憶を失ってしまった紅花に、さらに不幸が襲い掛かるのではやり切れないので、まあ良い終わり方だったかなと思う部分も半分ありました。
あと印象に残ったのは、ヒロトのセリフ。金森に何を聞かれても「知らねえよ」と答え、親分に「何か欲しいものは?」と聞かれても「分かりません」と答えるヒロト。そんな彼が欲しかったのは、金森と紅花を交えた3人の友情・愛情だったと分かる訳ですが、極端な少子化が進み、「みんな友達」という思想が教育現場に深く浸透している感のある現代においては、ヤクザ映画も仁義より友情が優先されることになっていくのかなと思いながら劇場を後にしました。勿論肩で風を切る気分になることはありませんでした。
そんな訳で、本作の評価は★3.6とします。
昭和っぽい青春映画が好きならOKだけど、抗争シーンは意外と淡白でしたよ
2024.11.20 アップリンク京都
2024年の日本映画(93分、R15+)
幼馴染3人がアウトローの世界で生き抜く様子を描いた青春映画
監督&脚本は岩屋拓郎
物語の舞台は、愛知県名古屋近辺(ロケ地は名古屋市&一宮市)
地元の暴力団・菅原組の構成員としてモグリの売人を始末している富井ヒロト(清水尋也、学生時代:深澤幸也)は、地元の半グレ集団と複雑な関係にあった
木村(松浦慎一郎)が率いるその集団には、幼馴染の金森マサト(高杉真宙、学生時代:永原諒人)がいて、それでも組の命令を忠実に守って摘発を繰り返していた
ある日のこと、学生時代の事件が原因で疎遠になっていた幼馴染の紅花(伊藤万理華、学生時代:美音)を見つけたヒロトは、彼女を追って居場所を突き止めた
彼女はレストランで働きながら一人暮らしをしていて、時折街のコインランドリーに来ていた
ヒロトは彼女に声を掛けるものの、紅花は一切ヒロトのことを覚えてはいない
それは、事件が原因で、それによって紅花の記憶は封印されていたのである
映画は、組長(小木茂光)の息子タケル(青柳翔)が紅花を見つけ、母親(新井郁)の借金があると言って、組が面倒を見ているクラブで働かせるところから動き出す
それを知ったヒロトは激昂するものの、タケルに手を出したことで、組から厳重注意を受けてしまう
そんな折、半グレ集団の若者・三井(林裕太)が暴走し、タケルを刺すという事件が勃発する
三井の不始末のために金森はタケルに呼び出され、「俺の下で働くなら」という条件を出される
だが、金森はそれを拒み、三井はあっさりと殺されてしまった
そこに連絡を受けたヒロトと、たまたま一緒にいた紅花がやってきてしまう
タケルは紅花を連れてどこかへ行くものの、そこで紅花はタケルを刺し殺してしまった
ヒロトと金森はその場の構成員を殺して逃げるものの、兄貴分の若杉(窪塚俊介)からの連絡を無視することができず、金森と紅花を差し出せば、ヒロトは許されると条件を提示されてしまうのである
映画は、記憶を失くした紅花がこの地に帰ってきたことによって因縁が再発し、取り返しのつかない事件が起こる様子が描かれている
行き場を失くした彼らが思い出の場所に戻るのだが、おそらくはヒロトか金森の家のなのだと思う
そこには彼らの青春時代がそのまま残っていて、ビデオに収められた映像などもあった
ひとときの安らぎを得ることができ、これがタイトルのオアシスに繋がっているのだが、そんな時間も長くは続かず、彼らは覚悟を決めることになったのである
映画は、あまり物語性がなく、偶発的に事件が起きて、その収拾のために決戦があるという感じになっていた
だが、決戦になってしまう動機がイマイチわからず、組長の護衛的な人たちは何をしていたのかよくわからない
タケルもあっさりと紅花に殺されてしまうのだが、「襲われたので殺された」では無理があるように思う
おそらくは、記憶が戻ったからこの街に戻ってきていて、それで機会を窺っていたという方が自然で、タケルと二人きりになった時に殺す準備をしていたのではないだろうか
また、ヒロトの言う「お前が俺のことを好きだったんだよ」は記憶がないのを良いことに言った告白のようなものだが、この時点で紅花の方は記憶を取り戻していると思う
なので、直前の「私のことを好きだった?」と言うセリフは、彼の本心を聞き出すためのブラフで、ヒロトと紅花の間に恋愛感情があったことを金森は知っていた、と言うことなんだろうと思った
いずれにせよ、テンポがかなり緩めの作品で、路上を歩いていて売人を見つけてお仕置きの件でも、アクションに入るまでの長回しは好みが分かれるように思えた
半グレ集団が強すぎるのかヤクザが弱すぎるのかはわからないが、木村とアンナ(杏花)の二人にやられてしまう構成員とか、観賞用の首まで持ってかれるのは無茶だと思う
物語の世界観が好きな人には良いと思うけど、清水尋也の雰囲気と演技力で保っているところがあるので、それがフィットすればOKなのだろう
パンフレットは寄稿にインタビューなどが満載なので、気に入った人は購入しても損はしないのではないだろうか
取り戻す友情と記憶。
ある事件を機に別々の道を歩く事になった幼なじみの富井ヒロトと金森の話。
暴力団菅原組・構成員となった富井と、菅原組もうかつに手を出せない半グレ集団に属す金森、菅原組組長の息子を刺した半グレの若者から事は起こる…。
上映時間約100分と分かって観てるけど何かスローテンポすぎない?が頭にありつつ、ヤクザと半グレの殺り合いには血生臭さも感じつつも、何か世界観、雰囲気はアオハル!?
母の事を機に記憶が飛んでる紅花と、あの場で捕まった富井と逃げた金森の関係の修復、富井と金森と一緒にいた紅花の記憶、友情を取り戻すって感じで、アウトローな男達の作品かなと思ったら意外と友情よりな作品だったかなって感じで楽しめた。
【裏社会で、過去の哀しき出来事の傷を抱えながら、未来が見えない絶望の中、微かな幸福を味わう幼馴染の男女三人の切ない姿を描いたバイオレンス青春物語。】
<2024年11月17日 敢えて、追記します。
今週、私が観賞した全ての映画の評点を鑑みて、2.5から3.0に変更させて頂きます。言い訳になりますが、地元が舞台だったのでキビシクなってしまいました。特に喫煙後に煙草を路上に投げ捨てるシーンが多用されていた事に、反応してしまいました。申し訳ございません。
尚、昨日投稿した下記、拙レビューの内容は、一切変えておりません。>
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◼️名古屋の敵対する、二つのヤクザ組織の構成員の富井(清水尋也)と、金森(高杉真宙)。ある抗争から、幼馴染の二人は同じく幼馴染で記憶障害のある紅花(伊藤万理華)は、一時的に一緒に"オアシス"に逃げる。
◆感想<Caution!内容に触れています!>
・前半の舞台は、私が良く行く名古屋のミニシアター付近で、”あらま!”と思いながら観賞。
・だが、演出やストーリー展開がなあ。今時、ヤクザ感を出す為に、タバコを吹かすシーンを多用する演出は、古くないかな。
ストーリー展開も、ヤクザの抗争の中、昔の友情を思い出すと言う感じなんだけど、ウームって感じ何だよなあ。
・フライヤーには、"やるせなさと熱さが迸る"って記載されているんだけど、そこは清水尋也さんと高杉真宙さんが過去の確執を持ちながら、乗り越えて行く姿を上手く演じていたかな。
・富井と、ヤクザの親分のバカ息子の殺害に関わった金森と紅花が隠れ家で、一時的に隠れた家での一時の幸福のシーンは、ナカナカだったよ。
・そして、三人が絶対絶命のピンチを乗り越え、車に一緒に乗る姿も微かな希望を感じさせるのである。
<今作品の岩屋監督は、愛知県出身だし、今作品が初監督だそうなので、キビシイ事を書いたけれども、頑張って新作を製作して欲しいな。じゃーね。>
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