パリのちいさなオーケストラ

劇場公開日:

パリのちいさなオーケストラ

解説

パリの名門音楽院への編入を認められたアルジェリア系の少女が指揮者への夢に挑む姿を、世界的指揮者チェリビダッケに師事して自らオーケストラを立ち上げたザイア・ジウアニの実話を基に描いたヒューマンドラマ。

パリ近郊の音楽院でビオラを学ぶザイアは、パリ市内の名門音楽院に最終学年で編入を認められて指揮者を目指すように。しかし女性指揮者は世界でわずか6%しかいないという困難な道のりで、クラスには同じく指揮者志望のエリート、ランベールもいる。高級楽器を持つ名家の生徒たちに囲まれるなか、ランベールの仲間たちからは田舎者と見下され、指揮の練習の授業では指揮台に立っても真面目に演奏してもらえない。やがて彼女は特別授業に来た世界的指揮者セルジュ・チェリビダッケに気に入られて指導を受けることになり、道がわずかにひらき始める。

「涙の塩」のウーヤラ・アマムラが主人公ザイア、「預言者」のニエル・アレストリュプがチェリビダッケを演じたほか、主要キャスト以外の配役には現役の音楽家たちを起用。監督・脚本は「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」のマリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール。

2022年製作/114分/PG12/フランス
原題または英題:Divertimento
配給:アットエンタテインメント
劇場公開日:2024年9月20日

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(C) Easy Tiger / Estello Films / France 2 Cinema

映画レビュー

4.0指揮という役割の興味深さを丁寧に伝えようとする姿勢に好感。社会派メッセージの配分もいい

2024年9月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

知的

そもそもプロになるのが簡単ではない指揮者、そのうち女性は世界で6%にすぎず、しかも1990年代のパリでアルジェリア系フランス人の少女がそれを目指すというのだから、二重三重の壁があったことは想像に難くない。今年8月のパリ五輪閉会式でもディヴェルティメント交響楽団を引き連れて演奏するなど現在も活躍中の指揮者ザイア・ジウアニの半生を描く本作は、予想されるように度重なる偏見と差別に屈することなく、自らの才能と努力と強い意志によって夢を実現させるストーリー。当然、昨今の多様性尊重に共鳴する社会派のメッセージも込められているが、そうした主張を出し過ぎることなく、指揮という役割の興味深いポイントを初心者にもわかりやすく伝えることをはじめ、音楽の楽しさをきちんと味わえる映画になっていることが好ましい。 世界的指揮者セルジュ・チェリビダッケに見出され、彼に師事するあたりから道が開けていく。2人が出会った特別授業での問答も示唆に富み(「なぜ指揮者は必要なのか」への回答など)、チェリビダッケがザイアを指導する言葉の中にはクラシックマニア以外にも指揮の難しさや面白さをうかがい知ることのできるポイントがいくつもある。 脚本も担ったマリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール監督は、ザイアが耳にする生活音(母親が調理の時に立てる音や、電車内でのレールのノイズなど)を音楽にシンクロさせることで、彼女のリズム感覚を観客に共有させてくれる。ザイアがクラシックに出会ったのがテレビで放送された「ボレロ」で、この曲がラストでフラッシュモブ風の演出で再び演奏される。同曲の作曲家ラヴェルはフランスを代表する音楽家の一人だし、映画で定番のブックエンド構造にもなっているのだけれど、2年前に日本公開された「クレッシェンド 音楽の架け橋」でも似たようなラストの「ボレロ」演奏があったばかりで、既視感のあるエンディングが少しもったいないと感じた。

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高森 郁哉

3.5エスプリが利いた嫌がらせ

2024年12月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

指揮棒をフランスパンに置き換えた嫌がらせに笑ってしまった(どちらもフランス語ではbaguette)。

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わんわん!

5.0ボレロ

2024年12月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

いまだに男尊女卑の蔓延る指揮者の世界。果敢に立ち向かい、自らオーケストラを立ち上げた姿に感銘。ライブ感溢れる情熱的な快作。

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DnaH

「パリ郊外」の意味

2024年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 パリ郊外の貧しい土地に暮らし x アルジェリア系移民であり x 女性であるという幾つものハンデを背負いながら男の世界である指揮者をパリで目指す実在の女性を描いた物語です。  彼女が苦しい立場に立たされると、地域の人々、同じ境遇の女性達、音楽仲間が背中を押してくれるというのはお決まりの展開ではあるのですが、やっぱりジーンと来てしまうのは音楽が持つ推進力のせいなのでしょう。  ただ、僕も近年のフランス映画数作を通じてパリ郊外という設定が移民の街の記号となっている事を知り、本作で何度も出て来る「スタン」という地名の意味も理解できましたが、それが分かっていないと彼女が今どこに居るのか分からなくなってしまうのではないかしら。

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La Strada