「違和感=賞をとるために、書く?」私にふさわしいホテル 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
違和感=賞をとるために、書く?
太宰治が芥川賞の受賞を強く望んでいたのは
有名な話しである。
懇願の手紙を選考委員の佐藤春夫に書いたそうだ。
最近の芥川賞受賞者が、如何にして芥川賞をモノにしたかを、
得々と対談で話しているのを読むと、情けない気持ちになる。
話題性
目新しさ
以前からその傾向はあったが、近年は《賞は獲りに行くもの》
傾向と対策を練って・・・
受賞作の一部をAIに書かせた・・・などと聞くと、
自己の文学性を否定しているように思える。
この「私にふさわしいホテル」も、
賞を獲るために書く、
有名な選考委員に酷評された事を恨みに思い、
悔しさを晴らす為のみ、
それが唯一のモチベーションに、
新人作家の中島加代子(相田大樹、白鳥氷、有森樹李)が、
バッシングをバネに鮫島賞を獲り、
有名作家を育てた【山の上ホテル】の真の常連作家になる・・・
そんな架空の話しである。
私を辟易させるのは、
作家・柚木麻子の真っ正直さ、裏の無さ、単純さ、幼児性、
臆面もなく、《鮫島賞》を獲りたい、手段を選ばない、
そこだけに集中して行く。
彼女が《賞を獲る為に》に切り捨てた多くのもの・・・
それこそが【真の文学】なのではないか?
のんは時に厚かましくコメディタッチの大げさな演技だが、
着物姿など実に瑞々しく美しい。
身につけた洋服で性格まで変わるカメレオン俳優ぶりは楽しく、
コロコロ変わる表情や悪態を吐く勇ましさ、
これはこれで楽しい映画だが、
文壇暴露ネタなんて、
文学はそんな“やわなもの“ではない。
猿回しの猿が回してるものは、
なに?
自分ではないのか?
大事な本質を見失っていると感じる映画だった。
コメディだからめくじらを立てるのは大人気ないのかもしれない。
ただ、
文章を書くことと、「文学作品」とは別の話しである。
共感有難うございます!コメント失礼いたします。残念ながら総じて主人公の作家としての志の程度が低い作品と思いました。例えば、女子高生の新人が創作活動を辞めたいと言った場面に彼女が遭遇した際、理由は問わず身を挺して止めてほしかったです。そうならないのは・・・。
共感ありがとうございました。琥珀糖さんは原作をお読みになったんですか。鋭い分析ですね。本作、楽しかったですが、登場人物それぞれの作家性が伺える場面が欲しかったです。