「富永さんのナレーション」グランメゾン・パリ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
富永さんのナレーション
TVシリーズは全話視聴
冒頭、東京に来る前に大失敗した状態の尾花がいておったまげる。…東京で培った経験が0になってる。そんな感想からのスタート。
で…また改心して三ツ星とる流れなんだろうなと冒頭5分で察しがついて、案の定そうなった。
どうにも、必勝パターンでもあるかのような構成にげんなり。
とはいえ、感動ポイントがないわけではない。本番フランスにおける外国人フランス料理長の置かれてる立場はなかなかにパンチが効いてた。食材を卸すにも優先順位があって、格式が存在する。「東京で外国人が営む寿司屋に最上級のマグロを卸すと思うか?」なるほど…かなりなハードルがそこには存在するのだと思う。ゼロからではなくマイナスからのスタート。
それらの状況を跳ね除けて星を勝ち取る。
それらを下地にして展開されるフルコースは感動的だった。
冨永さんのナレーションから始まる。
「あの夜、起きた奇跡を忘れない」とかなんとか。
一品一品に込められた想いが丁寧に紐解かれてく。上手い見せ方だなぁと思う。
料理を食べながら、驚き、微笑み、噛み締めてと様々な表情を浮かべる客が、幸せな時間を共有してるのだなぁと思う。
シェフの願いは叶えられたのであろう。
このフルコースに絡む編集とアングルが完璧だった。ホントに料理を堪能してるみたい。緩やかな前菜から始まってメインに向けて加速していく疾走感というか勢いというか…次は?次は?って期待感が刺激され、それを目の当たりにした時の感動というか充足というか…デザート前の一呼吸では、俺も一呼吸ついたし、そっから別世界かと思う程のデザートの存在感。コースの締めであり、シーンの締めだった。
フードコーディネーターになんか献上出来る賞はないもんか?美術賞は適用されるのであろうか?
…四ツ星だって評価にズッコケたけど。
受賞式の沢村氏がめちゃくちゃいい顔してたなあ。
俳優陣はお見事だった。異なる言語をモノともせず使い分けてるように思えた。特に沢村氏の流暢な事と言ったら目を見張るものがある。
ポリコレ感も満載で、意図を汲みはするものの主人公の成長が一辺倒なのと、時折挟まれる白々しい台詞に興を削がれる。
「皆の想いを1つに」とか、文化祭か?あんなキラキラした目さえしなければ、もうちょい深みも増すだろうにと思う。
スーシェフがコロナによる味覚異常なんて設定があるんだから、最初の暴君モードとか無くてもいいのにと思う。東京での経験が全く活かされてない尾花に独創性が全くなくて…安直なスタートでなければ、もうちょい楽しかったかもなぁと残念だった。
もう好みだとは思うけど、照明なのか色味なのかが明るすぎて作品全体が薄っぺらくみえる…。総じてTVの方に適正がある作品なんだろうなと考える。