「アクションで真っ向勝負した時代劇が観たい!という願望に応えてくれる一作」十一人の賊軍 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
アクションで真っ向勝負した時代劇が観たい!という願望に応えてくれる一作
ちょっと火薬量を間違っているように思わなくもないけど、ここまで派手な爆発を見せ場で勝負を挑んだ日本映画も珍しく、劇場で観てよかった!と思える作品でした。
掛けた予算が全く異なるエミー賞総なめの『SHOGUN 将軍』と劇場公開のタイミングが重なってどうしても映像的な豪華さを比較されがちだけど、だからこそ(『侍タイムスリッパー』)を含め「時代劇」の見せ方には様々な方向性があることを劇場で体感できるという点で、なかなか稀有なタイミングと感じました。
白石和彌監督はかつて、韓国ノワールが映画界を席巻し、「もはやアクションで日本映画は太刀打ちできないのでは…」という認識が広まりつつあった時期に『孤狼の血』シリーズを作り上げるなど、劣勢に見える部分であえて正面突破を図るところがあり(しかも娯楽作品としての質も極めて高い)、本作の「賊軍」たちと重なり合うものがあります。
設定上籠城戦が主になるのかなぁ、それだとこの上映時間は長く感じるかもなぁ、という予感は、戦闘開始早々城門は破られるわ、味方は満身創痍になるわ、といきなり絶体絶命の状況を持ってくるあたり、ここでも文字通り、度肝を抜かれました(しかも凄惨な戦闘描写に躊躇がない)。観客側にも絶望感が漂う中、どう切り返していくのか……、その展開の妙こそが本作の魅力であって、阿部サダヲの底の見えない演技も含めて、ドラマ部分でも十分見ごたえのある作品となっていました!