「【”一夜限りの恋のワルツ。あの日の事は、決して忘れない・・”9年振りに再会した男女の”抑制した”恋の物語。】」ビフォア・サンセット NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”一夜限りの恋のワルツ。あの日の事は、決して忘れない・・”9年振りに再会した男女の”抑制した”恋の物語。】
ー あの日から、9年。ジェシー(イーサン・ホーク)は、あの日の出来事を本にして、作家になっている。そして、パリの書店でサイン会をしている。
そこに現れた、セリーヌ(ジュリー・デルビー)。
驚きつつも、飛行機の出発まで、セリーヌと過ごすジェシー。
セリーヌもそれを断らない。
だが、9年の間に二人には、夫々の生活が出来ていた。ー
◆感想
・9年振りに会った、ジェシーとセリーヌの会話は、あの一日と変わらない。
だが、二人には家庭と、恋人が出来ている。
ー セリーヌは、半年後にウィーンで再会するという約束を果たせなかった事を詫びる。愛する祖母が亡くなったしまったから・・。
けれど、ジェシーは笑いながら、ウィーンに来ていた事を口にする。
間違いなく、当時は深い落胆に包まれた筈なのに・・。
9年という歳月が、その哀しみを表面上、消し去っている。ー
・飛行機の時間が迫るジェシーだが、セリーヌを誘い、カフェに行きお互いの9年間を語り合う。二人の関係性、会話は、9年という月日を感じさせない。
ー セリーヌが96-98年、NY大に在籍していた事。それを彼女は”貴方に会えるかもしれないと思った”と微笑みながら語る。
その事実に驚きながらも、ジェシーも又、家庭を持ち、4歳の息子が居る事を語る。
そして、妻を愛しつつも、上手く行っていない事も、サラリと喋る。
ジェシーも、写真家の恋人の話や、今まで付き合ってきた男の話をサラリと語る。
二人が、お互いに様々な人生経験を重ねてきた事を、語り合うシーン。
9年という歳月が、二人を成熟した人間にしたことを表している。ー
・けれど、去りがたき想いを持つジェシーは、セリーヌの家を訪れる。
セリーヌも又、ジェシーとの忘れ難き一日を、今でも大切にしている事を語る。
そして、ギターで奏でた次作の”一夜限りの恋のワルツ”
もう一曲聴かせて・・、と願うジェシーの願いをセリーヌは断り、ジェシーはCDラックから、”ニーナ・シモン”の”Just in Time"を選び掛ける・・。
ー セリーヌのジェシーに対する想いは、”一夜限りの恋のワルツ”の全てに込められており、それに対する答えが、”Just in Time"という事なのであろう。ー
<二人の男女の忘れ難き一日の、9年後を描いた作品。
リチャード・リンクレイターの、作品制作スタンスの優しさが素晴しい。
そして、イーサン・ホークとジュリー・デルビーが演じた、相手に未練がありつつも、相手の生活を尊重し、一線を越えない姿も素晴らしき風合を感じさせる作品である。>