劇場公開日 2005年2月5日

ビフォア・サンセット : 映画評論・批評

2005年1月17日更新

2005年2月5日より恵比寿ガーデンシネマにてロードショー

映画の中の時間と現実の時間が重なり合う

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「あれから3年」というのは「オーシャンズ12」のコピーだが、こちらは「あれから9年」。旅先で偶然出会って一瞬の恋に落ちたふたりの再会の物語である。実際に9年前に作られた「恋人までの距離(ディスタンス)」の続編で、もちろん主演のジュリー・デルピー、イーサン・ホークの2人も同じ。

登場人物はほぼ2人のみ。彼らの会話だけで物語は進む。2人が再会してから作家である男が乗る飛行機の出発時間までの、そのわずかな時間がほぼリアルタイムで進行し、気がつくと見る側も彼らのすぐそばにあるカメラと同じ位置で彼らを見つめてしまっている。その親密さと、夢のようなこの設定のありえなさ。現実とフィクションと言えばいいか。あるいは、すぐ傍にいるあなたと、9年間私の知らない暮らしをしてきたあなた。その2つの「距離」。

もちろん、それが無効になる地点に向けて、この映画は語られる。彼らの今と9年が重なり合いながら、リアルな時間の流れを覆う。何度か映し出される9年前のJ・デルピーの姿にドキドキするのは、映画を見ている私なのか、主人公の男なのか分からなくなる。映画を見ている「今」と映画の中の「今」が過去と未来へと向けて広がり出し、フィクションと現実とが交じり合い、この人生そのものへと変る。そんな一瞬を「ビフォア・サンセット」と呼んでみたい。

樋口泰人

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