助産師たちの夜が明ける

劇場公開日:

助産師たちの夜が明ける

解説

初監督作「愛について、ある土曜日の面会室」で高く評価されたフランスのレア・フェネール監督が、若い助産師たちが出産に立ち会うなかで突きつけられる現実に驚きながらも成長していく姿を、ドキュメンタリーのようにリアルなタッチで描いたドラマ。

ルイーズとソフィアは5年間の研修を終え、念願の助産師として働き始める。貧困、移民、死産などさまざまな事情を抱える人々が産科病棟を訪れるなか、助産師たちはオーバーワークとストレスに押し潰されそうになりながらも、新しい命に出会う喜びを通して結束を強めていく。

俳優と助産師が共に参加するワークショップを行い、これをもとにフェネール監督と脚本家カトリーヌ・パイエが共同で脚本を執筆。撮影には6つの病院を使用し、実際の出産シーンを織り交ぜながら臨場感たっぷりに描き出す。出演はNetflix映画「危険な関係」のエロイーズ・ジャンジョー、「その手に触れるまで」のミリエム・アケディウ。2023年・第73回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で審査員特別賞を受賞。

2023年製作/100分/フランス
原題または英題:Sages-femmes
配給:パンドラ
劇場公開日:2024年8月16日

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映画レビュー

4.0人間の強さを伸びやかに描く

2024年8月17日
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鑑賞方法:映画館

「これはきっと見てほしい」と、煽りでも、お決まりの何かでもなく、心から思った。物語は、新人の助産師2人が挫折して、そこから回復するまでを伸びやかに描いている。2人は全く正反対の性格で、それぞれの形で挫折して苦しんでぐるぐる回って、でも前を向く。
物語としては王道なのかもしれないけど、「成長物語」とは少し違う気がしていて、これは「回復」だと思う。傷ついて、どうしていいのかわからなくて傷を深めながら、それでも元いた場所へ状態へ戻りたいと模索する。魔法のような何かは存在しなくて、人との関わりの中で少しずつ歩んでいく姿は人の強さを感じさせる。その人間の強さが出産という生命誕生と重ねられていて、とても美しい。
好きになってしまった。
これは是非(分娩シーンや血が苦手でなければ)見てほしい。

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消々

5.0小さなイエスの誕生ね(微笑)

2024年11月7日
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鑑賞方法:映画館

下関に昨年からできた“マイクロシアター”、『シネマポスト』で鑑賞。

すんごくいい映画に巡り会えた。

「感情はロッカーにしまっておいて!」
最初の30分、産科病棟・助産師さんの現場の慌ただしく忙しく、緊張感振り切れていて、30分が数日間の出来事のようにも思えた.

陣痛の辛さに耐えられない妊婦さんに「お産の痛みは、何度経験していても慣れないものなんです」.
→ 助産師さんの産科病棟も、一例として同じものはない毎日が、迫力があり(本当に)スクリーンから目が離せなかった.硬膜外麻酔のチューブ留置をソフィアが介助する場面、全てが本物で泣きそうになった.そこに,病棟内に鳴り響くアラーム.

「クリスマスにも家族といれない職業にカンパーイ!」
「初めての会陰切開だ!!(笑)」
クリスマスの夜勤のメンバーがシャンパンでささやかに乾杯している時でも,緊急分娩の連絡電話.
シャルロット(太った助産師さん ← 素敵!)が,(不機嫌になることもなく)微笑みながら「まあー、小さなイエスの誕生ね!」だって……

白とダークの画面転換が、効果的.

この映画,観てよかった.
関心をもつことが,少しでもできることがあったら味方になろうと思った.

それでも緊急分娩

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night runner

4.0少子化対策が日本よりも進んでいるフランスでもこうなのか。

2024年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

この映画は、新人が職場で壁にぶち当たりながら、成長していくお仕事ドラマです。
知識を学び、さあ頑張るぞ!と助産師として現場デビューする2人の女性がまぶしいです。

毎日毎日様々な出産現場に立ち会う助産師さんたちのタフさに感服します。
母親や胎児の状態、家族関係、スタッフの体制、タイミングなど、複雑な要素が絡み合い、観ていてドキドキする緊迫感です。
それでも、分娩室に赤ちゃんの泣き声がこだますると、観客の私ですら、「無事に生まれてよかった」と心からの安堵を覚えます。

けれど、日常的に出産に立ち会えば、死産など、難しい場面もあります。
たとえ経験値が低くても、その場で可能な最良の選択をしなければなりません。
やりがいは大きいが、そのプレッシャーに耐え続けるのは、しんどく、また給与面、設備面、スタッフの人員面でも、全く十分ではありません。
医療現場へのサポートを手厚くしないと、まさしく命が失われていきます。

私は、人生を通して、一度も医療従事者になりたいと思ったことがありません。
仕事として、人の生死にかかわる判断に携わるプレッシャーに耐えられないと思うからです。
だからこそ、あえてそこにチャレンジしている人たちに、心からエールを送りたい。
医療に回す予算がないのなら、議員定数か議員給与を半分にしてでも、医療現場に予算をつけて欲しいです。

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のりたまちび

5.0医療現場を変えていかなければ、と思える良作。おすすめ。

2024年10月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年362本目(合計1,454本目/今月(2024年10月度)13本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。

 日本から見るとはるかかなたにあるフランスが舞台の、助産師の多忙「すぎる」毎日を描いたドキュメンタリータッチな映画です。ドキュメンタリー「タッチ」ではありますが、その本質においてドキュメンタリーと解しても良いのでは…とさえ思えます。

 なお、助産師を扱う映画としてはこの映画のように産科病棟を扱うタイプと、「病院か、助産所か」を扱う2パターンに分かれますが、この映画は前者(つまり、タイトル上も「助産師」となっているが、意味的に「看護師」とも読み替えうる。フランスの医療行政上可能かどうかはさておき)のお話です。

 新人研修を終えある産科で働くことを決めた2人の女性を主軸に、忙し「すぎる」ある病院を描いた作品です。その忙し「すぎる」事情から、病院以外のシーンは大半、夜も23時か26時かいっている、地下鉄ですらやってなさそうな真夜中ばかりで、「夜が明ける」というタイトルにもぴったりですね。

 結局のところ、映画内で不満不平が続出する理由の一つとして「病院の今のキャパシティでは誰がどうやっても無理だし人手が足りないのに患者が多い」と話す病院長だったか助産師長だったかの発言が全てを物語っているような気がします。かつ、フランスはドイツほどではないですが移民大国なので映画内で示されるように「医療記録がない」患者(=フランス国内で適法な受診歴がない)も普通に登場します。こういったことは日本では普通起こり得ないので(一時的旅行者のケガに対応するような事案は除く)、ここは国の違いでも生じているのだろうと思います。

 これらの圧倒的「人不足」を何とかあの手この手でしのいでいく彼女たち(なお、男性の助産師の方も出てきます)の我慢も限界に達し、彼女が取った行動とは…といった趣旨の映画です。私はその「彼女たちがとった行動」については賛同できるしむしろそうあるべきであると思うので(詳細ネタバレ回避)、この点は「妥当な着地点を見せつつ問題提起をして終わった」点において、フランス映画でありがちな「エンディングをぼかして個人で結末をよく考えてね」という余韻を残すタイプの映画と違っていてよかったです。

 映画ではもっぱら産科病棟(産婦人科)が描かれますが、結局のところ医療機関の忙しさはどこであっても程度の差は違っても同じであり、日本でもどこでも「一番多い」のであろう看護師(に相当する、各国の職業)においてもこの映画のかかる趣旨は妥当するものと思います。その中で助産師を主テーマにしたのは一つの考え方(そのうえで看護師や歯科医師などまで出すと映画がブレてしまう)でしょうが、結局のところ「医療職であれば結局のところ同じ問題である」点は想定のつくところであり、この点についても常識論でわかる範囲であろうことからきっぱりとカットして助産師だけを扱っていたのは良かったです。

 また、映画内で「こんな勤務では子供の顔も見られない」というような激務ぶりは結局のところその趣旨は看護師他にもかかる趣旨が妥当します。実際、それ(子育てとの両立)を不安視してやめていくのも日本でもどこでも問題になっていることはご存じの通りです。映画内ではそれを「助産師」だけに限定して、一方で容易に類推できる看護師ほか「似た職業」についてもそれとなくヒントを出したうえで「ある行動」にラスト、彼女たち(一部男性もいます。上述通り)が出る行動とは…といった趣旨です。

 採点上特に気になった点までないのでフルスコアです。

 日本においても程度の差はあっても、助産師でも看護師でもおよそ医療機関というのはこういうものであり、ここをどうやって解消して、一時期は女児の「なりたい職業」の上位であり続けた「かんごふさん」(当時の言い方。今では「看護師」)が未来もそう安定してあり続けられるかは、日本ではこれからかな、といったところだろうと思います。

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yukispica