今年362本目(合計1,454本目/今月(2024年10月度)13本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
日本から見るとはるかかなたにあるフランスが舞台の、助産師の多忙「すぎる」毎日を描いたドキュメンタリータッチな映画です。ドキュメンタリー「タッチ」ではありますが、その本質においてドキュメンタリーと解しても良いのでは…とさえ思えます。
なお、助産師を扱う映画としてはこの映画のように産科病棟を扱うタイプと、「病院か、助産所か」を扱う2パターンに分かれますが、この映画は前者(つまり、タイトル上も「助産師」となっているが、意味的に「看護師」とも読み替えうる。フランスの医療行政上可能かどうかはさておき)のお話です。
新人研修を終えある産科で働くことを決めた2人の女性を主軸に、忙し「すぎる」ある病院を描いた作品です。その忙し「すぎる」事情から、病院以外のシーンは大半、夜も23時か26時かいっている、地下鉄ですらやってなさそうな真夜中ばかりで、「夜が明ける」というタイトルにもぴったりですね。
結局のところ、映画内で不満不平が続出する理由の一つとして「病院の今のキャパシティでは誰がどうやっても無理だし人手が足りないのに患者が多い」と話す病院長だったか助産師長だったかの発言が全てを物語っているような気がします。かつ、フランスはドイツほどではないですが移民大国なので映画内で示されるように「医療記録がない」患者(=フランス国内で適法な受診歴がない)も普通に登場します。こういったことは日本では普通起こり得ないので(一時的旅行者のケガに対応するような事案は除く)、ここは国の違いでも生じているのだろうと思います。
これらの圧倒的「人不足」を何とかあの手この手でしのいでいく彼女たち(なお、男性の助産師の方も出てきます)の我慢も限界に達し、彼女が取った行動とは…といった趣旨の映画です。私はその「彼女たちがとった行動」については賛同できるしむしろそうあるべきであると思うので(詳細ネタバレ回避)、この点は「妥当な着地点を見せつつ問題提起をして終わった」点において、フランス映画でありがちな「エンディングをぼかして個人で結末をよく考えてね」という余韻を残すタイプの映画と違っていてよかったです。
映画ではもっぱら産科病棟(産婦人科)が描かれますが、結局のところ医療機関の忙しさはどこであっても程度の差は違っても同じであり、日本でもどこでも「一番多い」のであろう看護師(に相当する、各国の職業)においてもこの映画のかかる趣旨は妥当するものと思います。その中で助産師を主テーマにしたのは一つの考え方(そのうえで看護師や歯科医師などまで出すと映画がブレてしまう)でしょうが、結局のところ「医療職であれば結局のところ同じ問題である」点は想定のつくところであり、この点についても常識論でわかる範囲であろうことからきっぱりとカットして助産師だけを扱っていたのは良かったです。
また、映画内で「こんな勤務では子供の顔も見られない」というような激務ぶりは結局のところその趣旨は看護師他にもかかる趣旨が妥当します。実際、それ(子育てとの両立)を不安視してやめていくのも日本でもどこでも問題になっていることはご存じの通りです。映画内ではそれを「助産師」だけに限定して、一方で容易に類推できる看護師ほか「似た職業」についてもそれとなくヒントを出したうえで「ある行動」にラスト、彼女たち(一部男性もいます。上述通り)が出る行動とは…といった趣旨です。
採点上特に気になった点までないのでフルスコアです。
日本においても程度の差はあっても、助産師でも看護師でもおよそ医療機関というのはこういうものであり、ここをどうやって解消して、一時期は女児の「なりたい職業」の上位であり続けた「かんごふさん」(当時の言い方。今では「看護師」)が未来もそう安定してあり続けられるかは、日本ではこれからかな、といったところだろうと思います。