「人はいかに強い存在なのか、ということ」流麻溝十五号 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
人はいかに強い存在なのか、ということ
台湾の白色テロの時代、政治犯が収容されていた孤島を舞台。冒頭、上下逆の映像から始まる。拷問でつるされている人の目線だ。異様な絶海の孤島で隔離された若い女性たちの過酷な暮らしを見つめた作品だ。
台湾映画には白色テロ時代を描いた作品はいくつかある。『牯嶺街少年殺人事件』など名作がこぞって取り上げた時代でもある。本作は、日本統治時代の名残も感じさせる仕掛けが随所に施されている。主人公の一人の女性は、杏子と日本名で呼ばれることがある。その他、日本語を介する女性も登場するなど、台湾の辿ってきた複雑な歴史が使用される言語からも浮かび上がるようになっている。
収監されている女性には様々な立場がある。元看護士、学生、大陸本土からやってきて妹を守るために自ら名乗り出た人など。女性の看守は途中で彼女たちへの理解を示しもするが、過酷な日常は終わりが見えない。しかし、希望と人の善良さを見失わない映画でもある。大変力強い映画だった。こういう作品を作れるパワーがある台湾映画界は素晴らしいと思う。
コメントする