劇場公開日 2024年7月26日

「【”危険は力を齎す。そして弾圧で人の輝きは消せない!”第二次世界大戦後、台湾で行われていた愚かしき思想統制「白色テロ」の中、政治犯として拘留されていた人々の過酷な闘いを描く作品。】」流麻溝十五号 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0【”危険は力を齎す。そして弾圧で人の輝きは消せない!”第二次世界大戦後、台湾で行われていた愚かしき思想統制「白色テロ」の中、政治犯として拘留されていた人々の過酷な闘いを描く作品。】

2024年7月28日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

■日本統治時代が終わり、1949年中国共産党との戦いに敗れた蒋介石が開いた台湾国民政府による、恐怖政治下で戒厳令が敷かれていた時代「白色テロ」。
 台湾南東岸に位置する緑島。
 この島には30年以上もの間、政治犯収容を目的とした教育施設と監獄が置かれていた。
 思想改造及び再教育を目的とした「新生訓導処」は1951年から1970年まで設置され、収監された人々は名前でなく番号で管理されていた。

◆感想

・映画タイトルの”流麻溝十五號”は、資料によると今作で描かれる女性達が収容されていた場所の住所だそうである。

■物語の展開は、やや粗いが身に覚えがない思想犯として捕らえられた、高校生の杏子、リーダー的存在の看護師でもある巌水、所長の愛人になりながらも、残された妹を助けるために過ごすダンサーの陳を軸に淡々と進む。

・資料の少ない「白色テロ」時代における台湾の方々の状況だが、申し訳ないが高校生の杏子、リーダー的存在の看護師でもある巌水、ダンサーの陳の姿が断片的に描かれているために、イマイチストーリーが分かりにくいのである。

・絵柄も全体的に暗く、(意図的かな?)その中でダンサーの陳が纏う真紅のドレスは印象的なのだが、そこからもう一歩先が踏み込めていない気がするのである。

■一番印象的だったのは、台湾の収容所に送り返される(という事は死が近い)、巌水が顔写真を撮られる時に、笑顔を作るワンショットである。
 そして、エンドロールで映される恐らく政治犯として処刑されたと思われる人々の写真が笑顔で映っていた事には、彼らの想いが残されていると感じたな。

<更にエンドクレジットでは、この一連の処分を認めた蒋介石のサインが入った書類が映され”一人の人間の人間の決断で・・。”と言うコメントは重かったな。
 現在の日台中の微妙な関係の中、この作品を公開まで漕ぎつけた周美玲監督やスタッフの頑張りには敬服するが、故にもう少し演出や、脚本を練って欲しかったな、と思った作品である。>

■白色テロを描いた作品としては名作「非情都市」や同じく名作「牯嶺街少年殺人事件」があるが、個人的にはホラーでもある「返校 言葉が消えた日」もお勧めである。

<2024年7月28日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU
トミーさんのコメント
2024年8月16日

共感ありがとうございます。
おさげダンサーと大隊長の関係、立場を利用しての関係だったんでしょうが、実は思想とは最も遠い所に居た二人だったんじゃないでしょうか。この辺もう少しぎゅーっとするような掘り下げあっても・・と思いました。

トミー
トミーさんのコメント
2024年8月16日

笑顔なのに、後ろ手? デカデカと名札が、グロテスクそのものでどきっとしました。

トミー