「不可思議な人間関係を描くミステリアスな作品」雨の中の慾情 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
不可思議な人間関係を描くミステリアスな作品
『ねじ式』等で知られる漫画家、つげ義春の原作をもとに作られた不可思議な人間関係を描くミステリアスな作品。
現実と幻想の区別が入り混じって描写されるため、「現実があって夢想する場面が挿入される」的な分かりやすい構造ではなく、どちらが現実なのかが見れば見るほど分からなくなってくる。
一つ恐らく確実にそうだろうと思えることは、作品自体が太平洋戦争後のPTSDに苦しむ戦地に赴いた主人公(あるいは原作者)のトラウマがベースになっているということ。
そして、そのことは原作者のつげ義春が一時期、水木しげるのアシスタントをしていた事実とも決して無関係ではなかろう。鬼太郎等の妖怪もので知られる水木しげるは生々しい南方での従軍記の漫画でも知られており、過酷な生と死が背中合わせの体験をしてきたことが現世とあの世の合間に生きる妖怪に惹かれた理由だとも言われている。
なお、タイトルからも想像できるように性的な場面も全編を通して散りばめられている。原作は未読なので、それがどれだけ原作に忠実なのか、どの程度が映画的演出なのかは分からない。ただ、場合によっては不必要に思えるものを含めた性描写は、死や絶望と直面した際の対極の表現として、生を希求する渇望の描写として描かれているのではないだろうか?
決して一筋縄ではいかない作品なので、観に行くのは精神的に少し余裕のあるときの方がいいかも知れない。
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