「ロムルスにハリウッドの限界を見た。」エイリアン ロムルス ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
ロムルスにハリウッドの限界を見た。
リドリー・スコットがプロメテウスとコヴェナントでエイリアンを更なる新天地へ運ぼうとした反動だろうか?
まさかここまで守りに徹し、革新性に欠けた続編が生まれてしまうとは。。
本作の最初の印象は、既視感。
完全新作映画であるにも関わらず、どのシーンも過去のエイリアンシリーズのオマージュでしかない。
登場人物を一新しているにも関わらず、過去作品をトレースした展開が続き、さながら"エイリアンベストヒット"と言った印象。
もっと言うなら、エイリアン1+2÷2。
そこにプロメテウスを少々…といった感じか。
しかしどれも表層的なオマージュなので薄味なのが何とも。。
エイリアン1と2って根本のジャンルから別映画なんですよ。1はゴシックホラーで2は戦争映画。
ロムルスは両作から良いとこ取りしようとした結果、実に中途半端な作品になっています。
エイリアンうじゃうじゃ出すのも、戦争映画で軍隊モノの2だから成立してたのであって。
この展開を民間人が主人公のロムルスでやっちゃうと"ただの弱体化"にしかならない。
故に緊張感に欠けるという悪循環を引き起こしています。
何とも勿体無い。
だからどんな展開が来ても「エイリアンあるある」すぎて驚かない。
いやそれどころか、中盤あたりでは集中力も切れてしまうという。話が進めば進むほど残念感が増していく構成。
この感覚はスターウォーズにおける「フォースの覚醒」にも通ずるものがありました。
ファンが喜ぶ"であろう"物を出そうとするあまり、徹底的に表層的なオマージュを続ける。
それゆえ、キャラクターやテーマ、ストーリーですらオリジナリティに欠けてしまう。
まさにこれを地で行ってました。
とはいえ、全てがダメとは言いません。
主人公達が廃棄された宇宙船に乗るまでの経緯や、初代エイリアンの"その後"への言及など見どころも序盤はあります。
また、本作は「人工重力」のギミックを活かしたアクションを取り入れていたのが斬新でした。
無重力を活かしてのエイリアンとのチェイスは、エイリアン4の水中戦以来のフレッシュさを感じましたし。
息を殺してフェイスハガーの群れの中を進むシーンはまさにアルバレス監督の真骨頂と行ったところでしょうか。
その後の音が出るまでの展開は、やや脚本の粗も感じましたが目を瞑りましょう。
でもそれにしたってエイリアンもフェイスハガーも弱体化補正著しくてなんとも。
エンドロール間際の展開はもはやギャグ、私は失笑してしまいました。
誰も望まない展開。
どうしてああなった。
同じフェデ・アルバレスで言ったらドントブリーズの方がよっぽど怖くて面白くてユーモアもあったなと。
むしろ本作はエイリアンというブランドがアルバレス監督の足枷になっている気がしてなりません。
ウェルメイドな作品にする事に徹したあまり、根本的に面白くない作品になってしまうというジレンマ。
こういう企画じゃないと予算も降りないというジレンマ。
これは今のハリウッドが抱える"病気"と言っても過言ではないかと思います。
エイリアンブランドの限界と、ハリウッドが抱える構造的問題が改めて浮き彫りになった作品でした。
こんなの作るくらいならブロムカンプのエイリアン新作作ってくれよ‼️
リドリーのプロメテウスシリーズ完結させてくれよ‼️
クソ喰らえ‼️
そんな感じです。
期待値高かっただけに見事に裏切られました。
エイリアンって各作品ごとに時代も監督も作家性も個性が全面に推されてるのがシリーズの魅力だったのに。本作では真逆に保守に走りすぎてるのは、今のアメリカを象徴しているようにすら感じました。
プロップはじめ背景美術は素晴らしかったです。
興味のある方はぜひスクリーンでお楽しみください。
エイリアンを見た事がない人なら、エンタメとして十分楽しめると思います。
エイリアン入門としてはちょうど良いと思いますし、実写ベースの撮影やキャストは良かったと思ってます。
ただし、あの初代エイリアンの直接的な続編としてはかなり不満点も多いです。リブートとかなら納得できるんですけどね。