劇場公開日 2024年9月6日

「第1作のテイストを受け継ぐ正編」エイリアン ロムルス ありのさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5第1作のテイストを受け継ぐ正編

2024年9月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

 「エイリアン」シリーズの1作目の直後の話ということだが、本作単体でも十分楽しめるように作られている。ただ、過去作のオマージュが色々と出てくるので、知っていればより一層楽しめるだろう。少なくとも1作目は観ておいて損はないように思う。その方が話の流れを呑み込みやすいと思う。

 すでに擦りに擦りまくられている本シリーズだが、今回は原点回帰。第1作のようなシンプルなSFホラーサバイバル劇となっている。

 孤児のレインがアンドロイドのアンディや同じ境遇の仲間たちと宇宙へ出るが、そこには凶暴なエイリアンが待ち受けていた…というストーリーである。基本的に頭を使わずに楽しめるエンタメ・ムービーとしてそつなく作られていると思った。

 特に個人的に面白いと思ったのはアンディの存在である。彼はレインの亡き父がスクラップ置き場から拾ってきた旧式のアンドロイドで、レインにとっては幼い頃から一緒に育った弟のような存在である。アンドロイドでありながら、どこか人間的な優しさを持っていて、これが姉弟愛のような趣をもたらしている。

 本シリーズはこれまでにもアンドロイドが物語のカギを握る存在として描かれてきており、今回はそこに少し変化を持たせた所が新味だ。

 ただ、プロット自体は第1作とほぼ同じなため、やはりどうしても既視感は拭えない。オマージュと言えば聞こえはいいが、要はオリジナリティに欠ける内容で、何なら第1作をキャラを変えて焼き直しただけという言い方ができなくもない。

 監督、脚本はフェデ・アルバレス。サム・ライミ監督に見いだされてリメイク版「死霊のはらわた」の監督に抜擢された俊英である。元々スリラー・タッチに定評がある監督だけに、今回も作品のクオリティは上々である。しかし、いかんせんタイトルが大きすぎる。製作には当然シリーズの生みの親であるリドリー・スコットが控えているのでオリジナリティを出すのは中々難しかったのかもしれない。
 また、若者たちが宇宙ステーションに乗り込んでエイリアンに返り討ちにあうというシチュエーションは、同監督作の「ドント・ブリーズ」も想起させられた。

 そんな中、唯一クライマックスの戦いには新鮮なアイディアが盛り込まれていて嘱目した。こういうアイディアをもっとたくさん観たかった。

 キャスト陣では、レインを演じたケイリー・スピニーの奮闘ぶりが印象に残る。シリーズの顔とも言うべきシガニー・ウィーバーに負けず劣らず、闘うヒロイン像を熱演している。
 また、懐かしのキャラも出てきて驚かされた。もう二度と観れないだろうと思っていたので、これは嬉しいサプライズだった。

ありの