リッチランドのレビュー・感想・評価
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『オッペンハイマー』が描き切れなかったものが描かれている
原爆開発のために作った町の今を追うドキュメンタリーという、日本にとっては他人事ではない作品だ。この町の繁栄は、核兵器開発によるもので、人々はそれを誇りに思っている。高校の校章はキノコ雲だし、町にはいたるところに原爆にちなんだショップ名を冠した店がある。しかし、人は放射能汚染を恐れてもいる。事実、多くの人が健康被害にあっている。そして、映画は土地を奪われた先住民にもスポットを当てる。先祖から受け継いだ土地を奪われたあげくに、ほとんど永遠に清浄化できないほどに放射能汚染されてしまった。
ノーランの『オッペンハイマー』が描くことをしなかった側面が数多く取り上げられている。広島の被曝サバイバー3世のアーティスト川野さんのアートが映画のラストに出てくるが、非常に力強いイメージを映像に与えていた。多方面に思慮深く作られており、日本人にとって観る価値ある内容だ。アメリカというもう一方の原爆当事者の表と裏を見られるという点で、非常に貴重な作品だと思う。快不快を超えて、きちんと他者を知るために、この作品は広く見られるべきだ。
きのこ雲の校章
もさることながら、「光るまで攻撃しろ」は、なかなかに刺激的なスローガンでした。
「ついていく人を間違えた」の言葉も印象的でした。家族のために働いて59歳で亡くなったお父さんが最後の頃に言った言葉だそうです。
他にも、先住民が当たり前に英語を使ってインタビューに答えていることも、アメリカだから当たり前(?)なのかもしれませんが、考えさせられるシーンでした。そして、そのお孫さんが「ドラゴンボールZ」のTシャツを着ていたことも。
川野さんの話もよかったのだけど、せっかくならば長崎の被曝三世の話を聞いてみたかった。
最初眠かったけど(私はドキュメンタリーは苦手なようです)、見てよかったです。
コンセプトは良いのだけどキレイに作ろうとしすぎた感があるなぁ
こんな町や学校やアメフトチームがあったなんて知らなかったし、有益な映画だと思うのだけど、ちょっと芸術作品に寄せた作り方をしている気がしていて、僕は割と醒めた感じになりました。もっと生々しく作ってほしかったなぁ。
キノコ雲はマッシュルーム・クラウド
私は朝起きると映画.comのMyページをチェックする。寝ている間に共感・コメントを頂いているかも知れないからだ。
併せてフォロー中も確認する。共感の中から未読のレビューをチェックして共感出来るものには共感する。新着もチェック。
フォロワー同士のコメント交換に気になる作品があったのでチェックしたら、なんとまだ至近の映画館で上映中、明後日まで。
台風接近中、行くなら今日しかない。
2024.8.29(木)
「リッチランド」をシネマ・チュプキ・田端で。
初めて来たシネマ・チュプキ・田端は、ビルの1階に入っている5人4列キャパ20の映画館である。ネット予約は出来るがカード決済なし、現地清算、座席当日先着指定。全作品(邦画も)日本語字幕付き音声ガイド付き。座席に音声ガイド用イヤホンジャック有り、イヤホン無料貸出。
「リッチランド」は「オッペンハイマー」と同じ年に作られたがアプローチが違う。
マンハッタン計画でのプルトニウムを製造するためにアメリカ政府はワシントン州南部の先住民族の土地を取り上げ、核燃料生産拠点ハンフォード・サイトで働く人々とその家族ために街を作りリッチランドと名付けた(「オッペンハイマー」のロス・アラモスを思い出す)。
長崎に落とされた「ファットマン」のプルトニウムはここで精製されたものだ。終戦後は冷戦時の核兵器の原料生産を行い、現在は国立歴史公園に指定され多くの観光客が訪れ写真を撮っている(「関心領域」のアウシュビッツ博物館を思い出す)。
施設では膨大な量の核廃棄物の処理と除染が行なわれている事が説明されている。
放射能汚染で死んだと思われる子供たちだけの墓地もある。防護服も無く作業に従事してガンでなくなった住人もいる。
除染作業は今も続いており、放射線が消えるのは10万年後である(「100,000年後の安全」を思い出す)。
思えば「100,000年後の安全(2010)」は放射性廃棄物処理に関する素晴らしいドキュメンタリーだった。
リッチランド高校の校章は、Rの文字にキノコ雲である。このキノコ雲は街中のいたる所に掲げられている。従軍した老人は「原爆が戦争を終わらせた」といい、日本からキノコ雲のマークを変えろと言われれば「戦争を始めたお前らが言う事か」。
アメリカ人にも多くの核廃棄物による被爆者(死者も出ている)がいて、現在も除染作業が行なわれている。それなのに核廃絶など議論もされない。
色々な事実が抱合されていて興味深いのだが、如何せんドキュメンタリー映画としての完成度が低い。広島被爆三世の川野さんが現地の集会に登場しても尻切れでまとまりがない。ラストに彼女の作った実物大のファットマンのモニュメントをリッチランドに飾ったのも狙いが不明(説明不足)だ。
映画としての出来、不出来はともかくも、観てその内容は把握して欲しい、と言ったらおかしいか。
原爆を作って落とした側も、原爆を落とされた側も、そしてそれ以外の国も、原爆(核兵器)に対して次のステップ(核兵器廃絶)へ踏み出そうとしていない(むしろ使用をチラつかせている国がある)現状が一番絶望的か。
問いつづける
今から80年近く昔、原爆開発のマンハッタン計画の一端として放射性核物質製造基地としてワシントン州の砂漠に建設された街リッチランドでは長崎に投下された原爆のプルトニウムを製造し、戦後も核化合物製造の道を歩んで来ました。
街の人々は原爆開発に寄与出来た事を誇りに思い、地元の高校の校章は何とキノコ雲であり、フットボールチームの愛称は「Bombers (ボンバーズ:爆撃機)」、ボーリング場は「Atomic Bowl」、通りには「Nuclear(核)street」の名が付けられています。まず、そんな街があり、その名がRichland (豊穣の土地)であると言う事に驚きます。
一方で、核物質製造の過程で生じた廃棄物を無秩序に地中に埋設廃棄して来た為に、広い土地が汚染され立ち入り禁止になっています。また、その土地そのものが元々アメリカ先住民の土地だったのに米軍が勝手に接収してしまったという暗黒史もあります。
そして、街の人々の考えも錯綜しているのです。古くから核施設で働いて来たお年寄りは、原爆が終戦を早めたと確信しており、
「日本から街の名称やシンボルを変更するよう申し入れがあったが、『戦争を始めたお前たちが言う事か』と言ってやった」
と語ります。それはアメリカ人の偽らざる思いなのでしょう。
また、キノコ雲の校章は変えるべきだと言う若い人も、「では、日本への原爆投下は正しかったと思うか」と問われると言葉を濁してしまいます。これもまた偽らざる思いなのでしょう。
それはまた、「核兵器廃絶」を唱える日本の人々が「では、アメリカの核の傘から逃れるのですか」と問われると妙に言葉を濁す事に通じるものだと思います。広島選出の議員である事を表看板にしながら、原爆記念日の挨拶では毎年変わらぬ抽象的な空言を繰り返すだけの首相の顔が思い浮かびました。
そこに暮らす人々の奥底にある感情を淡々と引き出している。とても好印象の映画。
最終日にやっと行けた。一緒に行ったお二人もとてもいいと評価。両面性のある住民の意見や歴史について丁寧なインタビューと音楽、詩、アートで、普通に人々の言葉を繋いでいく。押し付けがましくもなく、その奥底にある感情を淡々と引き出している。女性のアイリーン・ルスティック監督・製作・編集。
★長崎に落とされた「ファットマン」のプルトニウムはハンフォード・サイトで精製されたもので、そこで働く人・家族のために作られた町がリッチランド。
リッチランド高校の壁に描かれている大文字の「R」から噴き出すキノコ雲、高校のフットボールチーム「リッチランド·ボマーズ」や、町中にあるatomicの名前を使ったいろんな看板、Tシャツなどは、このまちを誇りに思っていることを象徴している。
だが、リッチランド高校の学生たちが自由にキノコ雲や町の歴史について語りあるシーンは、若い自分たちが何か変えられるのではと思う反面、何も変わらないと思うなどのやり取りがあり、とても印象的だった。
★リッチランドはもともと先住民の土地だった。その先住民の嘆き悲しむ声。除染作業に従事する人々。快適な町だが、川の魚は食べないと語る人。放射能汚染被害者への僅かな補償、そもそもそれは問わないという取り決め。当初の劣悪な仕事環境。「亡くなる直前、『信じる相手を間違えた』と父は言っていた」と父親の被害を語る女性。多くの幼児が眠る墓所。音楽も合唱曲やギターデュエットなどでその思いを表現。
★ポスターとなっているインスタレーションは、広島の被爆3世であるアーティスト·川野ゆきよが、リッチランドを訪れ、祖母の着物をほどいた布を、自らの髪で縫い上げ、長崎に落とされた「ファットマン」の造形を実物大の大きさで形作ったもの。
マンハッタン計画
『オッペンハイマー』で、マンハッタン計画を知った方も多いんじゃないでしょうか?
そのマンハッタン計画を進めるため、つまり原爆を作るため働く人達と家族が住むため作られた町ハンフォード・サイト。
この町にある高校は、誇らしげにキノコ雲を校章に掲げています。
原爆や放射能とは切っても切れない町。
放射能は、この町も蝕んでいて…
もっと原爆に対し肯定的だと思ってたら、思ったより懐疑的な人が多かった。
とは言っても、原爆に対し懐疑的な人の声を多く拾っただけかも。
良ドキュメンタリーです。
配信してほしい。
今日、8月9日は長崎の原爆投下の日
長崎に生まれ育った者としては、義務感に駆られて鑑賞。
予告編で学校の校章にキノコ雲を使っているアメリカの都市があると知って、何でそんな悪趣味な事をするのかと許せませんでした。
学生達がキノコ雲の校章を変える事の是非について語っていたが、
「 校章を変える事に反対する人もいるかもしれないね?」
って、呑気に語っているとこが何かズレていると思う。
ラストシーンでは、ポスターにもある通りファットマンの模型を現地に展示するのだが、
「 何でそんな被爆者の神経を逆撫でするような事をするんだ?」
と思い、模型の製作者を調べてみたら、広島原爆の被曝3世のアーティストだった。
悪いけど、このアート、Chim↑Pomeが広島の上空に「 ピカッ」 の文字を浮かべたのと同じにしか思えない。
原爆製造の影響で、赤ちゃんが死亡したり川の魚が食えなくなったりと何故この汚染された土地に住み続けているのかが理解できない。何とも後味の悪い映画でした。
日本人からすると信じられない!
原爆の雲を自分の街の高校のシンボルマークにするなんて!
その街に住む男性が(原爆を投下したことが、長引く戦争を終わらせた)と話していた。そんなアメリカ政府のプロパガンダを信じているアメリカ人がまだまだ多いことに少し驚いた。
しかし最近は、ネットの普及により原爆が引き起こした被害がどれほど悲惨なものだったかを知る欧米人も増えてきていることも解り心が救われた。
絶望的な気持ちになるドキュメンタリー
8/6,9前に観ておきたいと思い、また、宮崎キネマ館さんの支配人からオススメいただき鑑賞しました。
率直に申し上げて、絶望的な気持ちになりました。
原爆・平和については、いろんな人のいろんな立場、考え方によって、意見が異なるし、
それは正義が異なっているとも言え、
人間がこの先、本当に平和的な世界をつくり出せるのか?は甚だ疑問になりましたし、
少なくとも私が生きている内に、そんな世界を見ることはないだろうという
絶望感でいっぱいになりました。
いろんな正義がある以上、世界は平和にならないのかもしれませんが、
平和にしていくことを諦めたら、そこで終わりだと思うので、
人間が学ぶ生き物であることを信じて、自分ができることをやっていきたいなと思った次第です。
私は恵まれている
何故なら「この世は弱肉強食なんだからしょうがない」
と情がない無責任な事を真剣に事実だと勘違いしているからだ。
そしてまた、溜息をつきながらブラック企業の中間管理職というクソみたいな日常に戻っていく、
幼い子供を眺めた後で…
押し付ける感じがしないのがよかった 髪の毛を使って作られたアート作...
押し付ける感じがしないのがよかった
髪の毛を使って作られたアート作品のファットマン、
揺れてるのを見てるとなんだか泣けてきた
美しい街の持つ語りがたい歴史
長崎に落とされた原爆の原料プルトニウムの生産拠点ハートフォードで働く人たちのために作られた街リッチランドを取材したドキュメンタリーだが、色々なことが学べる。地元高校の校章がキノコ雲、誇りにしつつも戸惑いもあり、被曝でガンで早世した人も多い。計画的に作られた緑多い美しい街と、先住民の土地を奪って汚染した過去の対照が印象的。見るべき映画。
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