配信開始日 2024年6月5日

「フランスという国の私的イメージ」セーヌ川の水面の下に シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5フランスという国の私的イメージ

2024年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

まずは本作の感想と言うより、本作をネタに個人的なフランスという国のイメージを書いて行こうと思っています。
フランスと聞いて日本人の大半が持つ印象と言えば、“芸術の国”“哲学の国”“お洒落(ファション)の国”“個人主義の国”“人道主義の国”と言ったイメージが強いのですが、これは日本だけなのか、世界中の国々が持っているイメージなのか分りませんが、フランスに行った事のない私が70年近く日本の中だけで知り得たフランスの国のイメージも大体そんなところです。
私の場合は映画が好きなので、その大半は映画を見て感じたイメージなのですが、上記に更に付け加えるとフランスは映画発祥の国でもあり、映画から得られた情報はそれ程間違ってもいないと思います。

昔、日本国内で“洋画”と呼ばれた映画はアメリカ映画・フランス映画・イタリア映画・イギリス映画と、ほぼその四ヵ国で占められていて、9割以上はその四ヵ国映画を“洋画”と呼んでいました。
1980年後半から90年代に入って、ミニシアターブームが起きてからその概念が崩れましたが、一般大衆にとっての“外国映画”ニアリイコールその四ヵ国映画という印象は私以上の世代にはまだ根強く残っています。
そしてお国柄というのがあり、その四ヵ国の映画にはそれぞれの国の特徴や違いが(言語だけではなく)ハッキリと表出し、映画を見ているだけでそれぞれの国民性までもがある程度理解出来ていました。
戦後はアメリカ映画が商業的に世界を席巻していましたが、だからと言ってヨーロッパの各国々の映画がそれに追随することもなく、今でもその国らしい特徴を出し続けるという現象自体が素晴らしくも好ましい状態だと思えます。
しかし近年のヨーロッパ映画はEUにより合作映画が増え、昔の様な独自固有な特徴は薄くなりつつありますが、それでも製作国の中にフランスの名前があると、その特徴は顕著に現れています。

で、やっと本作の話ですが、所謂“サメ映画”です。
超商業主義の超パターン映画であり、(勿論、フランス映画にも商業主義映画も下らない作品も膨大にあるのだろうという事は分かっていますが)イメージだけで言うと“フランス映画”から最も遠い存在の種類の映画ではあるのです。
なので、評判は凄く良いしフランス映画としてこの手の作品をどのように料理しているのか興味が湧き鑑賞しました。
そして本作の感想ですが、冒頭5分で一気に惹きこまれてしまいました。
何故なら、そこで(恥ずかしながら)私の全く知らない現在進行形の社会問題を突き付けられたからです。
冒頭、太平洋に浮かぶゴミの大陸と称される場所から物語が始まり、私はその存在を全く知らなかったので近未来のSFなのかと勘違いした位で、後でネットで調べ現実に存在していることを知ったのです。

それ以降の展開は、定番の“サメ映画”であり、定番の“スプラッター映画”である訳ですが、それを徹底していることにフランス映画を感じていました。
登場人物設定として、善人もいるし悪人もいる中で、善悪の区別も躊躇もなく徹底してサメが人間というよりも都市そのものを(言い換えれば、人類や文化までも)壊滅させる物語なのです。
人間の私が言うのもヘンですが冒頭のゴミの大陸を見せられただけでも、地球上に人類ほど利己的で破壊的な生物はいないというのは紛れもない真実であり、自然保護的観点からするとこれでもまだ生ぬるいという事をここまで主張したフランスという国に敬意を表します。

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シューテツ