ツイスターズ : 特集
【そんな人いる?】「竜巻に“飲み込まれた”ことがある」日本人が「富士山よりデカい超巨大竜巻モンスター VS 人類」のド迫力映画を観たら“自分が体験した竜巻より3000倍すごかった”と腰を抜かした話
人間が超巨大竜巻(富士山よりデカく、新幹線よりも速い)を破壊しようと死闘を演じる映画
映画館がたちまち暴風域となり、眼の前いっぱいに広がる竜巻の強烈な風が、僕の魂ごとはるか上空へと吹き飛ばしてしまうほどの
むちゃくちゃ面白かった。素晴らしかった。……のだが、ふつふつと知的好奇心が湧き上がってきた。
「竜巻に実際に遭遇したことがないので、
リアルさを確かめたい。だから竜巻に遭遇した人に話を聞きたい。しかし、調べたがアメリカにはかなりいるものの、ほぼ竜巻が発生しない日本ではうまくみつからなかった。
配給のワーナー・ブラザース映画に上記の好奇心を相談したところ、すぐに「竜巻に遭遇した日本人、いますよ。しかも飲み込まれたこともあるっぽいです。取材します?」と返答があった。あ、いるんだ、日本に。
2024年7月某日。
【取材対象者の紹介】
●まず本題を単刀直入に聞く そして気になる「ツイスターズ」の感想は?
――映画「ツイスターズ」鑑賞直後にお時間をいただきました、よろしくお願いします。率直に映画はいかがでしたか?
翠勇弥(以下略):
この映画はそこが非常にうまく表現されていて、風がビュンビュン吹いている感じもして
――ありがとうございます。それでは単刀直入にお伺いします、翠さんが竜巻に飲み込まれたことがある、というのは本当でしょうか?
それは少し語弊がありますね(笑)。“竜巻そのもの”に飲み込まれると、死んでしまいます。ですが
スーパーセルという、直径40キロの円盤のような巨大積乱雲があって。円盤の中心部が竜巻発生エリアなんですが、これに遭遇したとき、
ギリギリ竜巻の発生エリアの外に出られましたが、
――なるほど。一般人目線で言うと、それはもうほぼ「竜巻に飲み込まれた」だと思います……。映画「ツイスターズ」の竜巻は、ご自身の経験と比較していかがでしたか?
実際は竜巻に近づいたらアウトなので、(現実ではでき得ない)
(実際の竜巻をかなり遠くから見るよりも)
●奨学金を注ぎ込んで、竜巻を追いかけに行き「人生で一番怖かった」話…映画のように竜巻に遭遇したら、果たしてどうなる?
――ちなみに、翠さんはどんな状況で竜巻に飲み込まれたのでしょうか?
日本だと竜巻ってほぼ起きないので、
――アメリカへ竜巻を追いかけに……? 旅行中にアクシデントで、とかではなく、竜巻のためにアメリカへ?
竜巻のためにアメリカへ何度も行っていまして。私、今28歳ですが、最初は20歳のときに、バイトして貯めたお金を注ぎ込み、
――奨学金を叩き込んだ? 学費用の?
はい。
――つまり借金を背負って、竜巻に飲み込まれに行った……? 竜巻本体に最接近したときは、どれくらい近くまで行きましたか?
竜巻本体には10キロですね。定義上、竜巻として判定されるのは上空から伸びた先端が地面に到達したときで、途中の状態は
――恐ろしい。竜巻に飲み込まれるというと、掃除機のように吸い込まれ、上空に巻き上げられるみたいなイメージがありますが、翠さんのときはどうだったのでしょうか?
それが意外と、
ただ「ツイスターズ」はそこも非常にうまくて。私が実際の竜巻で感じたような、
――「ツイスターズ」の劇中で、竜巻本体が様々なものを飲みこんでいくシーンが何度も出てきますが、もしも本体に飲み込まれたらどうなるのでしょうか?
――死ぬんだ。
もちろん生き残ったケースは極稀にありますが、まず生きて帰ってこられないです。私がここにいるということは、そういうことです。
――すごい世界。
●身の危険を感じながら、身銭を切りながら、なぜ竜巻を追いかけるのか? その答えがジンときた
――ところで、翠さんはなぜ竜巻を追いかけているのでしょうか?
その質問を待っていました! 申し遅れました、
【取材対象者の紹介(改)】
――ストームチェイサーなんですね! 具体的にはどんな職業なのでしょうか?
一言でいえば、
もう一つが
――身の危険を感じながら、身銭を切りながら、それでも竜巻を追っているように見受けられますが、そこまでする理由はなんですか?
正直あまり理解されないかもしれないですが、私の場合は、
実際にあんな化け物を見たらどう感じるのだろう? 匂いは? 温度は? 音は? 怖い? それとも? それを実際に自分の目で、鼻で、肌で、心で感じたかったんですね。
実際に見てみると
●劇中の好きな竜巻は「双子竜巻」 描かれた「竜巻を破壊する」シーンに「テンション上がってきます」
――映画では多くの竜巻が出てきました。炎と融合する火柱竜巻、闇夜に忍び寄る竜巻、2つ同時に発生する双子竜巻など……ストームチェイサー的に、好きな竜巻はどれですか?
――竜巻としての表現力が高い、素晴らしい言葉です。竜巻やCGやVFXも、リアルに感じられましたか?
本当にリアルでした……! 竜巻自体もそうですが、
――映画「ツイスターズ」では、主人公のケイトやタイラーたちが巨大竜巻を破壊しようと試行錯誤しますが、実際に「竜巻を破壊した」事例はあるのでしょうか?
いや~、僕の知る限り、聞いたことがないですね。竜巻ってすさまじいエネルギーで、ひとつのスーパーセルだけでも衛星軌道上から見える大きさなんですよ。
――そんな超巨大な怪物に、非力な人間たちがどのような策で破壊に向かうのか?何が起きるのか?が大きな見どころですね。主人公たちの破壊計画をみて、ストームチェイサー的には驚きがありましたか?
驚き、めちゃくちゃありました! そうくるか、確かに理にかなっている! でもうまくいくのかな?
●「竜巻の中心に突っ込む」シーンにさすがに驚がく…ストームチェイサーあるあるなど、細かすぎて好きなシーンも大量に!
――また、本作はストームチェイサーの変態っぷり(褒め言葉です)がよくわかる映画でもあると思います。竜巻を追いかけ「フォー!!!!!!」となっているチェイサーが何人も出てきて、ハイテンションが観客に伝わり楽しくなりますよね。
あれはリアルなところで、正直、あの気持ちは否定しきれません。怖い、危ないと思いつつ、追いかけていると
――そこもリアルなんですね。劇中で、ストームチェイサーのタイラーがカスタムトラックに乗り「竜巻の中心に行く」というシーンがあります。まるで「コンビニ寄るけど」くらい当たり前のように竜巻に突っ込む姿を見てひどく驚きましたが、ああいうのも実際にあるんですよね?
あれは
――あれは異常行動なんだ。
頭おかしいですよあのシーン(笑)。カスタムされてはいますが、見た感じ普通のトラックで竜巻に突っ込んでいったので
ただ、そこにひとつ驚きがありました。
――「ツイスターズ」の劇中で、そのほか細かすぎるけど好きなポイントはありましたか?
個人的にすごく好きだったのが、
その場面では、チェイサーたちが雹の大きさに「ゴルフボール、野球ボール、グレープフルーツサイズきた! イエーッ!」と大喜びします。これチェイサーあるあるで、
ちなみに雹の大きさを示す実際の指標ですと、グレープフルーツくらい大きくなると
――急にゴリラ?
急にゴリラです。くっそでかい、みたいなノリですね。「ツイスターズ」は細かいところまで本当にうまく描かれているので、非常に楽しかったですね~。
あ、ちょうど今、カンザスシティで嵐が起きていますね。
●超巨大竜巻に飲み込まれたら、どうすれば生き残れる? 映画のなかに大量のヒントが…!
――劇中にはさらに、富士山より巨大で、新幹線よりも速い超巨大竜巻モンスターが登場します。そんな竜巻に飲み込まれたら……さきほどは「竜巻に飲み込まれたら死ぬ」とのことでしたが、遭遇した際に生き残る術は?
劇中にヒントが描かれているんですよ。「ツイスターズ」はリアルな知識も学べるので本当に良い映画です。
例えば、シェルターに隠れるのが一番いいんですが、シェルターが近くにない!となったとき、どうするか。「ツイスターズ」で竜巻が最接近した時、主人公たちが
――ありましたね。「そのまま吹き飛ばされるんじゃ?」と心配になりましたが……。
実は、あの状況では正解なんですよ。プールは窪んでいて、コンクリートで固められているので地盤もしっかりしていて、地面が風でまくられず飛ばされない。一方で車に隠れたら、車ごと“持っていかれ”ます。
その次に、できるだけ頭を下げていましたよね。あれも立ったら持っていかれるから姿勢を低くするんです。要は、
――なるほど。風に持っていかれないことが重要、と。それでもほぼ助からない理由はなんでしょうか?
竜巻で本当に怖いことって、風で持っていかれるより、実は
さらに、竜巻のなかでは小さい木の枝や石などが、無数の弾丸のように飛びかっています。コンクリートも穴があく威力になるので、それが人間に当たったら……。だから
――2017年に、アメリカ・テキサス州の75歳女性が竜巻に吹き飛ばされたものの、バスタブに入っていたから助かった、というニュースもありましたよね。
そうなんです、
最も重要なのは、
※スポッターとは?:嵐などの気象現象を観測し、周辺住民らの避難勧告のため、公式機関に報告することができる人たちのこと。
●竜巻を追いかけていて、得たこと、失ったこと
――翠さんが竜巻をチェイスしていて、得たことは何でしょうか?
1日600キロの距離を、死ぬかもわからない精神状態で移動して、2~3日野宿が続き、1日の食事もパン一個と缶詰のみ、みたいなことをやる体力が、40代、50代であるか? ちょっと自信が持てなかったんですよ。
だから若いときに、感性が鈍くなる前にできて、深い感動を得られて本当に良かったです。
――逆に、失ったことはなんですか?
(即答で)
――職か~。
2024年3月まで会社勤めをしていましたが、
ただ、これから先の話をすると、ストームチェイサー一本で食っていくのはなかなか厳しい。一回のアメリカ渡航(飛行機代、レンタカー代、燃料費、食費)でうん十万円かかりますし、インフレと円安もとてもつらい……。
ノマド的な生き方で、リモートワークで生計を立てながら竜巻を追いたいですし、そういう意味では職探し中です。あとはスポンサーですね。募集していますので、少しでも興味があればぜひこちらにご連絡ください!(メールアドレス:jadestormchase@gmail.com Xアカウント:@Jadestormchase)
――最後に、ストームチェイサー的に映画「ツイスターズ」はおすすめでしょうか?
はい、
――貴重なお話をありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました!
●記事のまとめ
・“竜巻に飲み込まれたことがある”日本人ストームチェイサー・翠勇弥さんから観た「ツイスターズ」は、「実際の3000倍すごかった(と言っても過言ではない)」
・現実にはできない“竜巻に近づく、吹き飛ばされる迫力”がとてつもなく味わえた。竜巻マニアが本気で作っていることが感じられ、嬉しくなったとも。
・双子竜巻が特にお気に入り。竜巻としての表現力が高い。
・Q:映画の巨大竜巻に飲み込まれたらどうなる? A:死ぬ
・Q:巨大竜巻に飲み込まれたら、どうやったら生き残れる? A:「ツイスターズ」の劇中に多くのヒント。迫力はもちろん、非常にリアルな映画。
・雹はものすごくデカくなると「ゴリラ」と呼ばれる。
・翠さんが竜巻を追いかけて得たものは「若いときにやりたいことはやったほうがいい」というかけがえのない教訓。
・逆に、失ったものは「職」。
・「ツイスターズ」は「誇張抜きでおすすめ」なので必見。翠さんの今後にも、ぜひご期待・ご注目を。
特集